前回では、Heisenbergの不確定性原理を破ることなく量子雑音を制御できると言いました。それは、スクイーズド状態と呼ばれる特殊な光の状態を作ることです。今日は、スクイーズド光の作り方を見てみましょう。

屈折率が光の強度に依存するような光学媒質があります。このような媒質を「非線形光学媒質」と呼びます。光の強度が高くなると、媒質の屈折率が大きくなるのです。線形な媒質なら屈折率は光の強度に関係なく一定です。

高強度な光を非線形光学媒質に入射すると、光の伝搬速度が(少し)遅くなります。なぜなら、光の伝搬速度が媒質の屈折率に逆比例するからです。媒質の屈折率が大きくなったら、光の速度が落ちます。

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図1(入力光、コヒーレント状態)
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図2(出力光、スクイーズド状態) 図1に示すのは、一般的なレーザ光の状態です。量子雑音が位相に関係なく均等に分布しているので、コヒーレント状態です。このレーザ光を非線形光学媒質に入射すると、量子雑音の分布が図2に示すようになります。媒質を出る光の雑音分布が「スクイーズ」されたように見えます。なぜこんなことが起こるのでしょうか? 量子雑音による光の強度揺らぎがポイントです。光の強度がちょっとでも高くなると、光が少し遅く伝搬するようになり、逆に光の強度がちょっと下がったときに、光が少し速く伝搬するようになります。これで、高強度な光の位相と弱い光の位相が少しずつ、ずれていきます。結果的に、非線形光学媒質の中に、光の雑音がだんだんとスクイーズされるのです。この現象を「自己位相変調」とも呼びます。