山手線、そこは時として、”人間観察旅列車”と化する。
音楽も聞かず、本も読まずに電車に乗っていると、色んな物が見えてくる。隣に座っていた、同僚と思われる女性二人組。おそらく上司と部下の関係だろう。上司と見える女性が切り出し始めた。
「私って、明るくて何にも悩みがないように見えるじゃない?でも全くそうじゃなくって、すごく繊細で傷つきやすいの。常に落ち込んでるし!」だって。
公衆の面前でこんな事を発言してる時点で、とても繊細とは思えない。終始、「そうなんですかぁ~」しか返さない部下の女性も、この話に全く興味が無いと思われる。
私が思うに、本当に繊細で傷つきやすい人は、それを周囲の人々に明示しないであろう。そもそも、自分が傷つきやすいという事に、傷ついているのだから。
察するに、身振り手振りでネガティブ人間をアピールしている彼女は、スーパーポジティブ思考の持主と思われる。そんなこんなの後、合コン帰りと思われる男性が電話をしながら乗り込んできた。
「つーかさぁ、早慶上智とかないんだけど!バカ女連れてくんなよ!」と、ヘラヘラ大声を上げている。
別に、私が”中大中退”だからという訳ではないが、「車内でこんな電話をしてる方がよっぽどバカだろ!」と心の中でツッコミを入れたりして。
その傍ら、”この車内にはもう私達二人しかいない状態”のカップル登場。
公然猥褻罪ギリギリの不快感を与えているのに、まるで自分達は、アンジー&ブラピだと思っているのだろうか。その姿は、身の毛もよだつ光景である。
そんな時、”あと、一駅!”と家路を急ぐ私の前に、妊婦さんが現れた。それは、私が席を立とうとした瞬間の出来事だった。
例の人達が、「どうぞ。」と立ち上がったのだ。「えっ!?これはもしかして”ダチョウ倶楽部状態”!?」と思ったが、誰が席を空けるかを譲り合うまでもなく、電話の彼は、そそくさとホームへと去り、妊婦さんがそこへ腰を下ろした。
私は駅を降り、見慣れた道を、てくてくと歩いた。夏の夜風を感じながら、30分の、”山手線人間観察旅列車”を思い出しながら。
■文月メイ(フミツキ・メイ) 1986年7月24日千葉県館山出身。中央大学英文学科中退。父親の影響で、ジャンルを問わず様々な音楽に触れて育つ。ルーツは、ビートルズをはじめとする60~70年代のロック、フォーク。特にボブディランやジョニーミッチェルなどを愛聴。15歳で作曲活動をはじめ音楽の道を志す。2013年3月、後のデビュー曲となる「ママ」を動画投稿サイト「YouTube」にアップ。有線放送見送りとなったこの曲がソーシャルメディアを中心に新人としては異例の注目度を集め150万再生を記録。同年10月2日、シングル「ママ」でメジャーデビュー。今年2月5日、ファーストアルバム「She is.」を発売。オフィシャルサイト http://www.universal-music.co.jp/fumitsuki-mei/ も要チェックだ。
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