ひだまり 8 (いろえんぴつ) | すけっちぶっくのまど

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風、香るいろえんぴつ画 〜
すけっちぶっくを開くと風が吹き抜ける〜

木々が色とりどりに染まった
秋の日


くまちゃん は おばぁちゃんの
編んでくれた帽子を
器用にかぶりなおしていた


庭先から

プップップー!  と車の音がした

お隣の けんちゃんのトラックだ


「おや、けん坊だね」

おばぁちゃんは 腰をあげ 縁側に顔を出した



お隣といっても

おばぁちゃんの家から

ひと山 離れている




けんちゃんは どんなに時がたっても

おばぁちゃんには

小さな やんちゃな子どもの頃のまま

ついつい、けん坊と呼んでしまう




「ばぁちゃん、なんじゃ? 

ほうき なんか背おって

えらい格好だなぁ」



けんちゃんは

何かと おばぁちゃんの顔を見に来る



おばぁちゃんは  顔をくしゃくしゃにしながら

自慢げに言う

「けん坊、ばぁちゃんも まだまだ

心の中は青い春よ」




「ばぁちゃん いつも楽しそうだなぁ」


「明日から雪が降って来るってよ

あったかく しとかんと

足もとも 気をつけろよ

ほうき背おったまんま 転ぶなよ」


けんちゃんは あれやこれやと

おばぁちゃんを気にかける



「ああ、、、

ばぁちゃんも けん坊に こんなに心配されるようになったか

ありがたや、ありがたや」


「ふふふ、、、でもなぁ

けん坊、ばぁちゃんにはいつも

くまちゃん がそばに いてくれるから

大丈夫、大丈夫、ご機嫌さぁ」





「ばぁちゃん  くまって??何よ

そのぬいぐるみの事か?

こりゃまた  ずいぶん おっきな  くまだなぁ」



「ぬいぐるみ?????」




振りむくと

さっきまで おばぁちゃんと楽しそうにしていた

くまちゃんは

どうした事か ピクリともしない

大きな大きなぬいぐるみに

変わっている



「おや、まぁ。」



柔らかな陽ざしの中

すっかり冬の冷たさになった風が

カサリと木の葉を落とす


おばぁちゃんは 

「そうだ、そうだ」と思い出した




「これは、ばぁちゃんから けん坊に

かぜひくなよ

いつも ありがとうね」




けんちゃんの手に伝わってきたのは

ひと編み ひと編み 編みつないだ

おばぁちゃんの

ぬくもり、、、



「ばぁちゃん、冬もいいもんだなぁ、、、」

少し髪の毛がさみしそうになった

けんちゃんは 嬉しそうに言った




「ばぁちゃん、、、あったかいけどよ

なんだ?

そのよ、これ、」




「ばぁちゃんの くまと

色ちがいの

おそろいか?」




おばぁちゃんは  目を細めた

「けん坊のオムツを替えてあげた頃を

思い出すよ」


「うん、うん、よく似合ってる

ふふふ」




「ばぁちゃん いつの事よ」

けんちゃんは はずかしそうに

眉毛をかいた




落ち葉が舞う中

けんちゃんは いつものように

プップップー!とトラックから

笑顔で手を振る




おばぁちゃんは 

小さな子どもを見送りるように

トラックが見えなくなるまで

手を振った




おばぁちゃんの心はね

いつも澄みわたる



さみしい事なんて何もない

だって

いつも誰かが おばあちゃんの心の中に

ひだまりのように

いるから







くまちゃん は そっと見ている

ちょっと おかしな

おばぁちゃんの ほうきを背おった背中を




真っ赤に染まった もみじが

また一枚 ヒラリ、ヒラリと

舞い落ちる




振り返った おばぁちゃんは 

ぬいぐるみになった くまちゃんを

しげしげと見つめ

ふふふふ

と 笑う







ビー玉のように まんまるな

くまちゃんの目が

くるんと

輝いた






























ひだまり 8 




















お読みくださり

ありがとうございます

季節が かなりズレてしまいました

お話もあと

一話


いつ描きあがるのでしょうか

長い目で見ていただければ

嬉しいです







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