忘れられない 26歳女性の最期 | N'sひろみ 悲しみのケア日記

N'sひろみ 悲しみのケア日記

看護師歴20年、グリーフケア(大切な人・ペット・物などを失った深い悲しみ、悲嘆のケア)について学びました。「悲しみをどう受け止めるかによって人生の質が変わる」ことを痛感し、悲しみを抱えながらも、あなたらしく生きるためのヒント満載の講座を開講しています。

ご訪問ありがとうございます☺️


看護師歴20年、

悲しみのケアについて学んだ榎本が綴る、

悲しみのケア日記です。


今回は、忘れられない患者さんのお話です。


約23年前の出来事ですが、

当時の私の感覚と、

悲しみのケアについて学んだ私の感覚、

その2つの視点から綴って参ります。


私は高校生の時に、

祖母を自宅で看取った経験があるのですが、


それから看護師になって総合病院に就職し、

初めてお看取りをさせていただいたのは、

26歳の卵巣がんの女性でした。


その夜は、1年目のナースとの2人夜勤で、

2年目ナースの私は、

ずーっとドキドキしていました。


その方は、新婚さんで、妹様との二人姉妹で、

とっても美人で、几帳面で、素直な方で…


手術の後の抗がん剤治療の甲斐なく、

その日の21時過ぎに旅立たれました。


日中からご両親、ご主人様、

遅れて妹様が到着され、付き添われていました。


実は、数日前にご主人様から

こんな相談を受けていました。


「妻の卵子を冷凍保存しておきたいと思って

   いろいろ調べていて…。そんな人いますか⁇」


これは先生に相談せねばと思い、

婦人科の女医さんに伝えて

直接、ご主人様にお話していただきましたが


要約すると

・手術で卵巣を片方取ったので、片方しかない

・度重なる抗がん剤治療により、

   排卵されているのか分からない

・排卵があったとしても、   

   受精するかどうかは厳しいと思う

・採卵するだけの体力は残されていない


とのことでした。


ご主人様は、 

「彼女のDNAを残しておきたい」と話されていて…


夫婦が子どものことを考えるのは

ごく自然なことなのに、

「現実は残酷で、子どもが授かれないことは、

  未来への希望も失うことになる。 

  ご主人様にとって奥様を亡くすということは

  未来への希望も絶たれることになる」と

感じていました。


そして、最期の時。

静かに涙を流すご両親と、ご主人様、

そして泣きじゃくる妹様。


正直、この時は初めてのお看取りで、

何と声をお掛けしたら良いのか分からず

ただ落ち度がないようにと必死になりながら、

他の患者さんの対応も行い、

後輩ナースの困りごとに対応するといった

通り一遍のことしかできませんでしたが、 


悲しみのケアを学んでから、

この26歳の女性のご家族の姿とともに、

何度も思い出す言葉があります。


⭐️大切な方を亡くした後の悲しみ・喪失感への

    ケアは、「グリーフケア」と呼ばれています

    詳細についてこちらの記事に綴っています

   


「親の死は過去を失くし、

   配偶者の死は現在を失くし、

   子供の死は未来を失くす」


「親にとって子を亡くすことほど辛いことはない」


「逆縁(親が子を見送る)は、この世で1番辛いもの」


確かにそうだと思います。

そう学びました。


ただ…

あの日のご両親の涙、ご主人様の涙、妹様の涙


その全てから今一度考えてみても、

どんな立場であっても、

愛する家族とのお別れは比べようもないほど辛い


過去 現在 未来 その全てを一度に失くす感覚に

なるのではないだろうか


と、思うのです。


⭐️今後、大切な人・ペットとのお別れによる

    悲しみ、様々な喪失からくる悲嘆についての

    メールレターを配信予定です⇩


ご両親にとっては、
産まれた時から大切にしてきた我が子、

ご主人様にとっては、
世界一愛する女性、

妹様にとっては、
産まれた時から当たり前に側にいたお姉ちゃん

そんな唯一無二の存在が、
これからの人生をまだまだ謳歌できるであろう命が、
急な病気の発覚から様々な辛い治療を経て
旅立つなんてことは、
どれほどの苦行なのか、と思うのです。

あれから23年、
それぞれのご家族様がどのように生活されて
いらっしゃるかは存じ上げませんが、
皆さまの心に受けた傷を思うとき、
少しでも穏やかな時を過ごせていますようにと、
願ってやみません。

この先も、忘れることはありません。   
M様、その節は様々なことを教えていただき 
どうもありがどうございました。


⭐️大切な方とお別れされた時に
    おすすめしたい本はこちらです⇩

ご自身でご自身の悲しみを癒すための方法が
いくつか記されていて、
専門用語が少ないので読みやすかったです。

誰にも言えない悲しみを
ご自身で癒すことができます。

最後までお読みいただき 
ありがとうございました。