筆者たちは、岩の上に寝転び、しばし星空を堪能することにした。



事前にダウンロードしていた星座アプリと星空を照らし合わせてみる。
みなみじゅうじ座は確認できたが、星が多すぎる。
何が何だか分からず断念。

序盤は声をあげていた流れ星も、多すぎる。
歓声が追いつかず断念。



結果、2人ともただ黙って星空を眺めることに。



この日は新月に近く、月はすでに沈んでいた。
空と陸の境目もわからないほどの暗闇。

寝転がっていると、星空に吸い込まれるような、身体が浮かんでいるような、不思議な気分に襲われた。



自分という存在の小ささを知る。
そして、今、夫氏と並んでこの星空を見上げていることの尊さを知る。
宇宙に2人しかいないような錯覚すら覚える。



ぼーっとしたまま、どれくらいの時間が経っただろう。
夫氏がくしゃみをした。



筆者「寒くなってきたね。」

夫氏「そろそろ戻ろうか。」

筆者「うん。満喫した!ありがとう!!」



2人で立ち上がり、伸びをする。



夫氏「サプライズはないって言ったよね。」

筆者「うん。」

夫氏「本当に何も用意してないんだけど…いい?」

筆者「うん。」





ー 中略 ー





プロポーズを受けた。

非現実的な体験に非現実的な体験が重なり、夢か現実か定かでなかったが、かろうじて現実のようだった。

翌朝は気持ちの良い晴天。

世界が違って見えた。
これまでの葛藤や逡巡が、雨とともに流れたのかもしれない。





夫氏のシナリオでは、旅行から2ヶ月後にプロポーズの予定だったという。

つまり、この前日にご婦人方に出会わなければ、けしかけられなければ、なかったはずの展開。

筆者としてもまた、旅行中にプロポーズがなければ同棲はスケジュール的に難しい、結婚は遠いだろうと考えていた。

筆者がこうして夫氏と結婚できたのは、ご婦人方の功績と言っても過言ではない。

一言お礼を伝えられなかったのが、悔やまれる。



一期一会。
その心の大切さを改めて知ることとなった、因縁の旅行であった。