実家への挨拶は、想定しうる最悪の展開を迎えていた。

両親の心証は最悪。
夫氏の心証も最悪。

しかし、筆者にとって何より残念だったのは、夫氏の回答だった。



筆者父「君、責任はとれるのかい?」

夫氏「責任…ですか。」

筆者「お父さんたら、“責任”だなんてねぇ。あはは。。。」

夫氏「…はい、そのつもりです。ちゃんと考えてます。」



受け身の回答。
言わされた感。
それ以上の決意表明はなかった。



筆者父「突然プレッシャーをかけるようで申し訳なかった。ただ、我々も心配なんですよ。貴方の気持ちを聞いておきたかった。」

筆者母「ひとまず、その言葉が聞けて安心しました。旅行は二人で決めて構いません。」



夫氏にとって、あれがあの時の精一杯だったのだろう。
難を逃れるために絞り出した言葉。



筆者母「そろそろ行きましょうか。」

気まずい空気から逃れるべく、席を立った。
夫氏からは余裕が消え、ただただ萎縮するダメ彼氏になっていた。



その後、近くに住む兄のマンションまで車で送り届けてもらい、両親と別れた。
兄一家にも夫氏を紹介する予定だったが、姪が発熱したため、ラウンジで兄だけに面会することにした。

ラウンジで兄を待つ間、夫氏は隣で深く溜め息をついた。
どうやら先の一幕が相当こたえたようだ。



兄と甥登場。
簡単に自己紹介を済ませる。

筆者「この人、お父さんに『責任取れるのか』と迫られて、落ち込んでるから、よろしく!」

筆者兄「そんなこと言ったのか笑。それは大変だったね。」



筆者は夫氏と兄を残し、甥とキッズルームへ。
兄はコミュ強理系男子。
うまくやってくれるに違いない。

ガラス越しのため話は聞こえないが、ラウンジの二人は和やかに会話しているように見える。

やんちゃな甥がキッズルームに飽きたところで、解散した。

筆者兄「まぁあまり気負わず頑張ってね。またゆっくり遊びに来てね!」



兄と話したことで、いくらか夫氏の表情が和らいだように見えた。

兄は、「両親の言葉は強めかもしれないけど、あられを思ってのことだから、大目に見てやってほしい」と、ナイスフォローを繰り出したようだ。

夫氏も親心を理解すると同時に、自身の不足を悔いているだろう。



挨拶まわりを終え、カフェで反省会。

筆者「お疲れさま。」

夫氏「ふー疲れたー!急にあんなこと言われるからびっくりしたよ。」

筆者「急じゃないよ。自分からちゃんと話してってお願いしてあったよね?」

夫氏「まぁ…」

筆者「あなたから話をしてれば、あんな風に詰問されることもなかったと思うよ。」

夫氏「でも、あんな風に言わなくてもねぇ。」



夫氏に、自分の言動を省みる素振りはなかった。
まるで他人事。

筆者は夫氏の実家を訪れたとき、義母の言葉で、夫氏の人生に関わることを自覚した。
しかし、夫氏にそんな自覚は芽生えなかったようだ。



筆者の中の何かが音を立てて崩れていくのを感じた。



反省会後、駅で夫氏と別れた。
筆者は実家に戻ることにした。



筆者の悟りは、確信へと変わっていた。

これ、終わったな。