夫氏は、筆者とは対照的に余裕を醸していた。
夫氏「お父さんとは理系マニアックな話題、お母さんとは音楽の話題。うん、大丈夫!」
筆者「タイミングみて、大事な話はあなたからしてね。わたしは静観してるから。」
午前中に待ち合わせ、夫氏と共に実家へと向かった。
到着すると、なんだか両親がぎこちない様子。
それもそのはず。
何せ、娘たちが彼氏を自宅に連れてきたのは、これが初めてなのである。
とりわけ父は、様子がおかしい。
手土産の授与を終え、リビングで父と夫氏の会談が始まった。
なにやら波長は合うように見える。
母はお茶出しなどしつつ、側から傍観する姿勢。
筆者も手伝う。
筆者「どう思う?」
筆者母「ずいぶん細身のジャケットね。腰が低いけど、悪い人ではなさそうね。」
筆者「お父さん、緊張してる?」
筆者母「さあ?なんか頑張ってるわね。お母さんは黙ってよーっと笑。」
筆者らが席についたあとも、基本的には父と夫氏が話していた。
仕事の話を中心に、他愛のない雑談。
筆者父「じゃあ、そろそろ時間だから、行こうか。」
実家では本題に移ることなく、ランチ会場へと移動することになった。
向かうは、家族で記念日に利用していた鉄板焼きレストラン。
個室ごとにシェフがついてくださる。
横並びの席、鉄板焼きパフォーマンス、窓から臨む庭園。
両親と対峙してのコース料理よりもこの方が気楽だろう、という母の計らいであった。
鉄板に向かって父、夫氏、筆者、母の順で座った。
結果、相変わらず夫氏と父、筆者と母が話す格好になった。
筆者「なんだかあの二人は気が合いそうね。」
筆者母「盛り上がってるわね。お母さんはゆっくりステーキがいただけるわ♪」
食事中も、夫氏と父は楽しげに話しているが、やはり雑談。
筆者はやきもきしてきた。
いつになったら必要な話をするつもりなのか。
鉄板焼きを終えると別室に移動し、デザートが提供される。
もう、残された時間はあとわずか。
しかし、話を切り出さない夫氏。
やきもきがイライラに変わり、筆者の口数は減った。
何食わぬ顔で楽しそうにしている夫氏に、余計に苛立つ。
全員、デザートも食べ終えた。
さぁ、どうする?夫氏。
筆者母「あの、◯◯さん。今日は何かお話があっていらしたんじゃないの?旅行に行くとか聞いてますけど。」
痺れを切らせ、話を切り出したのは、母であった。
さきほどまでニコニコしていた母からは、笑顔が消えていた。
夫氏「あ、はい。旅行行こうかなって思ってます。」
ん?
それだけ??
続きは???
筆者母「男性と海外旅行に行くって大きなことなんですよ。ましてや娘は、もう悠長にしていられる年齢じゃありません。どういうお考えなんですか?」
筆者父「君、責任はとれるのかい?」
急展開。
父よ、言葉選びにもう少し工夫がほしかった。
夫氏に目をやると、表情が凍っている。
筆者は悟った。
これ、終わったな。。。