筆者は、かねてから夫氏に海外旅行を提案されていた。
夫氏の勤め先には、一定の勤続年数で長期休暇が与えられる制度があり、当時はその年度に当たった。

夫氏「年末年始、どこか旅行行きたいね。」

筆者「そうだね。どこがいいかなー。」



筆者の職場は比較的自由に休みが取れる。
その年はまだ長期休暇も取っておらず、何もなければまた一人でハワイか、程度に考えていた。

二人であれば一人では行けないところにも行ける。
楽しいかもしれない。



しかし、両親は何と言うだろうか。

結婚前の娘が、男性と海外旅行。

30過ぎた娘が誰とどこに行こうが知ったこっちゃない、というご家庭もあるだろう。
しかし、残念ながら我が家はそうはいかない。



そして、筆者自身も幾ばくかの不安があった。

貴重な休暇を捧げ、数十万を使っても、それが成果に結びつく保証はない。
結婚という成果に。

“楽しい”という一過性の感情に支払う対価としては大きすぎる。

どうせならば、成果につなげたい。



筆者「冬休みに海外旅行に行こうって言われてるんだけど…。」

筆者母「まぁ!!もちろん結婚するならいいけど、大丈夫なの?」



これまでも結婚を匂わせる発言は多々あったものの、先方のご両親にもご挨拶はしたものの、プロポーズされたわけではない。

海外旅行に先駆け、何らかの確約がほしい。



筆者「あのね。旅行に行く前に、わたしの両親にも会ってほしいんだ。真面目にお付き合いしてるって表明してほしいの。」

夫氏「そうだね。どこのどいつかわからない奴と旅行に行くのはご両親も心配だよね。そもそも、うちの両親より先にあられちゃんのご両親に先にご挨拶すべきだったよ。」



結婚を前提とした真面目な付き合いであることを伝え、海外旅行の許しを乞う。
夫氏にはある種の覚悟が生まれ、両親も安心する。
という算段である。

そうして、筆者家の家庭訪問の運びとなった。



先日、読者さんから筆者の母親についてご質問いただいたこともあり、今一度筆者の両親をご紹介する。

父は国立理系大学院を修了し、外資系企業に勤務。
日米を行ったり来たりの生活で、学校行事に不在のこともしばしば。
いつのまにか米大学でMBAを取得していたり、大学で非常勤講師をしたりと、今思えばバイタリティあふれるサラリーマン。
のちに、関連企業の代表取締役に就任。
現在は、愛犬と孫と戯れ、家庭菜園を楽しむ隠居生活である。

一方の母。
私立理系四大を卒業後、大学職員として研究に従事するも、結婚を機に退職。
専業主婦として留守がちの父に代わって家を守り、三人の子どもを生み育てた。
子どもが中高生になった頃から、非正規雇用で企業の研究所に勤め、兼業主婦に。
それでも、お弁当作りや塾の送り迎え、父の靴磨きまで欠かさなかった。
いつ眠っていたのか、不思議な生活。
現在は、父と愛犬と孫の世話に追われる専業主婦である。



両親とも幼い頃から厳しかった。
とりわけ母は古風な考え方の持ち主で、礼儀作法やしきたりを重んじる。
婚活における筆者の価値観も母から受け継がれたものといえる。



果たして、夫氏は、両親の面接を無事通過することができるのか、海外旅行(予約済み)の承諾を得ることができるのか。

筆者の緊張感は、夫氏のご実家訪問のときよりも高まっていた。