不安を残しつつ幕を閉じた初回デートであったが、ほどなくして二回目のデートのお誘いをいただいた。

場所は、前回の会話の中で筆者が行ってみたいお店として挙げたところだった。
ともすれば聞き流してしまうような文脈。
覚えていてくれたことがうれしかった。



平日の夜。 
夫氏はスーツで現れた。

筆者「暑いのにスーツ大変ですねアセアセ

ネクタイこそしていないが、ピシッと決まったスーツに、磨かれた革靴。 
前回のラフなカジュアルスタイルとは全く異なる印象を受けた。
柔和な方だと思ったが、仕事はバリバリされているのかもしれない。



界隈では予約の取りづらい人気店。 
奥のテーブル席では某俳優らがお食事をされていた。

我々は、カウンターに並んで座る。
隣に座っていると、ワイシャツの襟の内側にのぞく柄が可愛らしい。



創作イタリアンとワインと共に、他愛のない会話を楽しんだ。

この時は、夫氏が前回に比べ、饒舌だった。
仕事の話や、数学の話を聞かせてくれたと思う。
知らない世界の話も心地が良かった。
筆者の仕事にも興味を示してくれた。



週の中日であったため、一軒目を終え、解散の流れに。
筆者はタクシーを拾うため、大通りに出る。
夫氏もタクシーまで見送ってくれるという。

歩みを進める筆者。
やや遅れて夫氏。

ん?なんか歩くの遅くない??

夫氏が立ち止まる。



夫氏「あの…またごはん行ってくれますか?」



次回につなげる言葉を言い出せずに、歩みが遅くなったようだ。

か、かわいい…

前回の眠気と戦う姿同様、これもまた筆者には微笑ましく感じられた。


筆者「もちろん!またご近所ごはん行きましょう音符



これまで連戦連敗の筆者。
しかし、この時ばかりは、予感した。

もしかすると、もしかするかもしれない…




*****
余談だが、夫氏は仕事着に関してはなかなかのおしゃれさん。
のちに、スーツは某テーラーでセミオーダー、靴はTOD’Sであったことが明らかになった。
シャツも決まったお店、決まったサイズで購入している。

一度テーラーにお供したが、ロロピアーナの生地なども扱われており、興味深かった。

スーツという画一的な装いだからこそ、サイズやディテール、生地にこだわる。
男性ならではのおしゃれ。

子供の頃、父のスーツオーダーにお供するのは退屈だったのに、不思議なものだ。


友人「数学の話をするのにおしゃれだなんて、あられにぴったりじゃん」


たしかに、その通りだったのかもしれない。