街がチョコレートに踊るバレンタイン、久々にチョコレートを贈った。
偶然、駅のコンコースで再会した方に。
普段は買わないチョコレートを買い、普段は通らない道で出くわした方に。
チョコレート屋さんに並びながら思い出していた、チョコホリックのその方に。
再会したのは、41人目、容姿端麗な建築家である。
建築家O氏とは、ブログで紹介した後も継続的にお会いしていた。
お相手候補としてではなく、友人として。
秋に同じ資格試験を控えていた夏、O氏に声をかけられた。
ほどよく無関心。
気を遣わずに、ただただ普通で居られる。
こんなに楽ちんな友人ができたのは久しぶりだ。
O氏も群れる習性はない。
最低限の人間関係しか必要とせず、愛想も悪い。
しかし、本当は繊細で、優しい。
当時仕事に悩んでいた筆者は、彼にたくさん助けられたと思う。
心を穏やかにしてくれた。
一方で、O氏も独立後初の仕事。
悩みや葛藤を抱えながら、頑張っていた。
建設的な助言はできずとも、悩みや葛藤を少し肩代わりすることはできる。
筆者は、O氏を応援したいと思った。
内覧会は、不運にも模擬試験の日。
「あられちゃんには見てほしい。来てくれるまで待ってるから。」
筆者は彼の仕事を見届けに行った。
友人として承認されたこともうれしかったし、内覧会を訪れた誰よりも、彼の頑張りを知っていることが、なんだかうれしかった。
この先も、隣でO氏を応援できたらいいかもしれない。
程よく無関心に、隣で。
ちなみに、O氏は収入も、住所も不安定。
サラリーマンには想像もできない生活をしている。
間違いなく、結婚相手としては不適合。
そんな思いを抱いた自分に、筆者は驚いていた。
資格試験を終えた後、一度だけデートをした。
ランチからの美術館。
そして、彼は筆者の元を離れていった。
「もう結婚はあきらめた。」
そんな言葉を残して。
やはり、筆者はただの監視役の友人だったのだ。
とんだ勘違いである。
おこがましい思いを抱いた自分を恥じた。
以降、連絡を取ることもほとんどなくなっていた2月13日。
雑踏の中で再会したのだった。
「邪魔だよ」と周囲の人に怒鳴られながら。
重なった偶然が可笑しくて、とっさに買ったばかりのチョコを差し出してしまった。
チョコレートが得意でなかった筆者にとって人生初の自分チョコ。
人生初の自分チョコを奪われるなんて、よほどチョコレートには縁がないのだろう。
チョコと結婚には縁のない自分を再確認する、バレンタインデーであった。
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