街がチョコレートに踊るバレンタイン、久々にチョコレートを贈った。

 

偶然、駅のコンコースで再会した方に。

普段は買わないチョコレートを買い、普段は通らない道で出くわした方に。

チョコレート屋さんに並びながら思い出していた、チョコホリックのその方に。

 

 

 

再会したのは、41人目、容姿端麗な建築家である。

 

建築家O氏とは、ブログで紹介した後も継続的にお会いしていた。

お相手候補としてではなく、友人として。

 

 

 

秋に同じ資格試験を控えていた夏、O氏に声をかけられた。

「一緒に勉強しよう。監視役がいた方がサボらないから。」
 
そうして、カフェ勉生活が始まった。
週2、3回、隣に並んで勉強する。
 
 
 
筆者の監視むなしく、O氏は眠っていたり、仕事をしていたり。
何のためにここに来ているのやら。
 
 
 
そもそも群れる習性のない筆者は不安だった。
他人とカフェ勉など、苦痛を伴うのではないかと。
 
しかし、O氏の隣は居心地のいいものだった。

ほどよく無関心。

気を遣わずに、ただただ普通で居られる。

 

こんなに楽ちんな友人ができたのは久しぶりだ。

 

 

 

O氏も群れる習性はない。

最低限の人間関係しか必要とせず、愛想も悪い。

しかし、本当は繊細で、優しい。

 

当時仕事に悩んでいた筆者は、彼にたくさん助けられたと思う。

心を穏やかにしてくれた。

 

 

 

一方で、O氏も独立後初の仕事。

悩みや葛藤を抱えながら、頑張っていた。

 

建設的な助言はできずとも、悩みや葛藤を少し肩代わりすることはできる。

筆者は、O氏を応援したいと思った。

 

 

 

内覧会は、不運にも模擬試験の日。

 

「あられちゃんには見てほしい。来てくれるまで待ってるから。」

 

筆者は彼の仕事を見届けに行った。

友人として承認されたこともうれしかったし、内覧会を訪れた誰よりも、彼の頑張りを知っていることが、なんだかうれしかった。

 

 

 

この先も、隣でO氏を応援できたらいいかもしれない。

程よく無関心に、隣で。

 

 

 

ちなみに、O氏は収入も、住所も不安定。

サラリーマンには想像もできない生活をしている。

間違いなく、結婚相手としては不適合。

 

そんな思いを抱いた自分に、筆者は驚いていた。

 

 

 

資格試験を終えた後、一度だけデートをした。

ランチからの美術館。

 

そして、彼は筆者の元を離れていった。

「もう結婚はあきらめた。」

そんな言葉を残して。

 

やはり、筆者はただの監視役の友人だったのだ。

とんだ勘違いである。

おこがましい思いを抱いた自分を恥じた。

 

 

 

以降、連絡を取ることもほとんどなくなっていた2月13日。

雑踏の中で再会したのだった。

「邪魔だよ」と周囲の人に怒鳴られながら。

 

重なった偶然が可笑しくて、とっさに買ったばかりのチョコを差し出してしまった。

チョコレートが得意でなかった筆者にとって人生初の自分チョコ。

 

人生初の自分チョコを奪われるなんて、よほどチョコレートには縁がないのだろう。

 

 

 

チョコと結婚には縁のない自分を再確認する、バレンタインデーであった。

 

 

 

 

↓41人目とのお話はこちら↓

41人目:容姿端麗な建築家 前編 ー美的感覚の地域差ー

41人目:容姿端麗な建築家 後編 ―結婚観の共有―

41人目:容姿端麗な建築家 ーおまけー