―こじらせる男性2―

スペックは高いのにこじらせている男性の共通点、その2。

特殊性の高い趣味、思考を持ち、自身の世界を築いている。

彼らは、その世界に溶け込める、あるいは傍らで理解し尊重してくれる女性を求める。

その特殊性が高ければ高いほど、その市場は縮小する。




相手: 33歳 日系コンサルティングファーム 東工大大学院

方法: 婚活サイトpairs

場所: 銀座のダイニングバー

衣装: チェスターコート(BIANCA EPOCA)、ストライプワンピース(United Arrows)、ショートブーツ(MOSCHINO Cheap&Chic)、バッグ(Chloe)



久々の年上、日系コンサル勤務のS氏。

ずいぶん前に“いいね!”をいただきつつも、大学名不明のため見過ごしていた案件であった。

承認してみると、テンポよく話が進み、早速会ってみることに。

まずは会ってみようというスタンスの人なのだろう。




場所はS氏の勤務先に近い銀座。

遅刻する旨の連絡が入り、結局20分ほど待つことになった。

遅刻するあたりも、ペアーズ慣れかと想像する。


しかし、スーツをスマートに着こなしたいかにも仕事デキ夫さんS氏は、現れるなり「緊張感高い!」という。

11月に入会し、実際に会うのは初めてなのだそうだ。


意外。そして初めてが筆者で大丈夫ですか?


序盤は共通の知人や好みのワインの話に興じる。

コンサルタントよろしく歯切れのよい喋り方からは、聡明さが感じられる。


筆者はかねてより興味のあった、理系の頂点からコンサルという業種を選択した理由を尋ねてみた。




すると、S氏はやや特殊な思想の片鱗を見せ始める。


果たしていまここにあるグラスは客観的に存在するのか。

自身が主観的にグラスを認識しているだけではないのか。

理系の我々が扱う自然科学は、現象を客観的に説明しようとするものであり、“客観”という概念に基づいている。

“主観”と“客観”の別を証明できなければ、自然科学そのものの根底が揺るがされる。




ふむ、S氏は哲学マニアらしい。


以降、いろいろな哲学者の論を引用しながら、自論が展開された。

ひたすらしゃべり続ける。


時折、独壇場を詫びつつもしゃべり続けた。


しかし、意外にも苦痛ではない。

彼は知識をひけらかそうとしているのではない。

ただ、強すぎる知的好奇心と高い知能が彼をそうさせている。




クールでスマートな出で立ちは、チャラそうにすら見える。

そして、学生時代はストリートファッションに身を包んだBボーイ。

しかし、中身は「有限の時間の中で、幸せを最大化する」を人生の主題に掲げる哲学者。


端的に言えば、かなり変な奴である。

こじらせるのも納得。




S氏は、筆者同様、自身が”ニッチ市場”にあることを自覚している。

相手は同じ思考でなくとも構わない、異論があればツッコんでほしい、とのことだった。

同調するよりも高い思考能力を求められるようだ。


S氏が筆者を初めての面接対象に選んだのは、筆者の知的レベルを見込んでのこと。


しかしあいにく、筆者は哲学には疎い。

トウダイリケジョとは肩書ばかりのぼんやりとした筆者の脳ミソは、ワインによって処理能力低下。

S氏の期待には応えられなかったに違いない・・・