―座席配置の重要性―

座る位置が与える心理的効果については広く知られている。

隣り合って座ることで親近感を得られる、というのが最大の効果であるが、

会話の“間”、沈黙といった点からも大きなメリットがあると考えられる。

隣り合って座った場合、会話が途切れたとしても、前を向けば気まずさは回避できる。

しかし、向かい合って座った場合、前を向くと相手を見据えなければならない。

沈黙は相手に威圧感を与える。

(かわいい人であれば、かわいく見つめることになるのかもしれないが…)

目線をそらすとあらぬ方向を向いていることになり、無関心とも受け取れる。

いずれにしろ、相手に好感を与える行為とはならない。



相手:30歳 通信会社勤務 京都大学大学院卒
方法:婚活サイトpairs
場所:みなとみらいでカジュアルフレンチ

衣装:1人目と同じワンピースを再利用、ムートンコート(heliopoleセレクト)、ぺったんこブーツ(Galerie vie)でカジュアル仕様


3人目は京大卒の会社員F氏。

先方の希望によりみなとみらいでランチとなり、筆者がお店を予約した。

ランチは前菜、メインのプリフィクス。

F氏はシャルキュトリのサラダと、三元豚のグリル。

筆者は季節野菜と小エビのパルフェ、ポトフをオーダーした。

F氏は葉物野菜を食べるのに苦戦していた。

フォークに刺さらない、口に納まらない。

なるほど、こういうときは葉物野菜は避けた方が無難か、ありがとうF氏。


婚活サイトの仕組みはご存じない方もいるかもしれない。
要約すると、双方が“いいね!”と思った暁に、メッセージのやり取りができるというものである。
メッセージのやり取りは人によってその密度、内容にばらつきがある。
F氏の場合、アポの事務連絡にとどまり、プライベートなやり取りはほぼ皆無であった。

したがって情報が乏しい。会話を展開しようにもネタがない。


筆者が話題を提供するも、「そうなんですね!」とF氏締めくくられるかたちで、一向に会話が成立しない。
沈黙。前を向けばF氏。
遠くの絵画を眺めてみる。隣のテーブルの会話に耳を傾けてみる。
あらぬ方向を向いている筆者に、F氏が怪訝な表情を浮かべるのがわかる。
だったら、あなたが話をしてよ!と心の中で叫ぶ。


ぽつりぽつりと空虚な話をしながら、1時間ほどで食事を終えた。

アルコールなしかつ対面配置の辛さを痛感した。

なお、F氏もアルコール耐性が低いそうだ。


せっかく横浜までお越しいただいたので、赤レンガまでお散歩してから帰宅した。
帰路の地下鉄は無言。隣り合って座っているため、苦痛は伴わない。


座席配置の重要性を痛感する回であった。