日本もテーパリング?日銀の強気によぎる不安 | ジジイのブログ

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金融政策決定会合後の黒田東彦日銀総裁の記者会見は、市場の一部で期待されていた追加金融緩和の可能性を「限りなくゼロ」と考えざるを得ない内容だった。日銀ウオッチャーの間からは「日銀は日本がもう完全雇用状態に入ったと考えているようだ」(斎藤満・東海東京証券チーフエコノミスト)との声も出ている。となると日本でも早晩、量的緩和の段階的縮小(テーパリング)の観測が出てこよう。株式の投資家は新たな事態に備える必要があるかもしれない。記者会見する日銀の黒田総裁自宅の近くのマクドナルドに「アルバイト募集中」の掲示があり、「時給を引き上げました」と付記してあった。その近くのコンビニエンスストアではアルバイトが店番に来るわずかな時間だけ、店長が仮眠を取るような日々が続いているという。大企業の春闘では (基本給の引き上げ)の有無がもっぱらの話題だったが、パートやアルバイト、建設労働者の世界は、かつてないほどの賃上げ圧力にさらされているBNPパリバ証券の河野龍太郎・経済調査本部長は2日に開いたメディア向けセミナーで「来年には日本の失業率が3%を割り、完全雇用状態に入りそうだ」と話していた。完全雇用といっても、多様な事情で失業は発生するので、失業率はゼロにはならない。年代後半のバブル期までは日本の自然失業率2%程度と言われていた。就業形態が多様化した現在の自然失業率が3%になったというのは、十分に納得のいく話。日銀内部ではを自然失業率ととらえているという説もある。2月の日本の完全失業率 季節調整値)は3.6%だから、日銀の目には、ひょっとすると日本はもう完全雇用状態だと映っている。 消費税率の引き上げ分は別として、消費者物価指数(CPI)が上がる主因が円安による原材料価格の上昇ならば、円安が進行しなければ、物価上昇圧力は薄れるはずだ。しかし、賃上げを伴う物価上昇の場合は、相互作用が起きやすく、継続的な物価上昇に発展しやすいと言われる。8日の黒田総裁の記者会見での発言が強気に満ちていたのは、日本が完全雇用状態に入ったのならば、追加緩和をする理由などまったくないという判断が背景にあるように思われる
 エコノミストらは自然失業率という漠然とした用語の代わりに、インフレ非加速的失業率=ノン・アクセラレーティング・インフレーション・レート・オブ・アンエンプロイメント)と表現することがある。この言葉の持つ意味は、もし実際の失業率がNAIRUよりも下がるようならば、物価上昇が加速しかねないという意味だ。理屈上は中央銀行が金融引き締めに動くべきタイミングである。 日銀はまだ2%(生鮮食品を除く総合CPIの前年同月比、消費税率引き上げの影響を除いて計算)のインフレ目標を達成していないから、現在の金融緩和姿勢をすぐに弱めるわけにはいかないだろうが、2%を突破する可能性が見えてくれば、国債の買い入れ額を少しずつ減らしていくテーパリングが視野に入る可能性もある。
 日銀が追加緩和に慎重になるだけでなく、次のアクションがテーパリングだとすると、世界の株高シナリオの大前提が狂う恐れがある。これまでは債券の買い入れ額を減らし始めた米国の代わりに、日銀が大量に国債を買い入れ、市場に巨額の流動性を供給するとの期待もあった。
 もしイエレン米連邦準備理事会議長が3月米連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見で口を滑らせたように、米国が年春にも利上げに踏み切る可能性があるとすれば、それまでにFRBは資産圧縮を始める可能性がある。ところが、日銀はFRBの代わりを務めない。金融緩和に慣れ親しんだ世界の株式相場は、日米同時の「脱・金融緩和」にどう備えるかが課題になりそうだ。
 特に米国は、ニューヨーク・ダウ工業株種平均が「年平均値ベース」で年(4月7日)まで5年連続で上昇中。最近のモメンタム株(値動きに勢いがある銘柄)の乱高下が示す通り、ちょっとした悪材料に敏感になっている。確かに、過去にはグラフに見るように、年の安値から年の高値まで上昇相場が年間、続いたことがある。ほかにも8年連続高や7年連続高などもある。だから、まだ上昇相場の寿命を議論するのは早そうにも見えるが、本当に金融環境の変化を乗り越えられるかどうかは、楽観しないほうがいいかもしれない。
 米国株が試練の時を迎えれば、その派生商品といってもいい日本株にも売り圧力が高まりそう。ただ、日本株には救いがある。個別株の年以降の値動きを見ると、悪材料に敏感に反応して大量の売りが出そうなほど、高値警戒感が強い銘柄が多くはないことだ。
00年以降の高値を付けた銘柄数が最も多いのは、06年1月のことで銘柄を数えていた。この月には東京地検がライブドアに証券取引法(現・金融商品取引法)違反の疑いで強制捜査に入ったが、その直前まで新興株市場の上場株は上昇に次ぐ上昇を続けていた。実はこの銘柄を含め、高値の時期が03年5月から08年9月までだったのは2128銘柄もある。アベノミクス相場が始まった12年12月以降に高値を付けたのは728銘柄にすぎない。
 さらに、4月7日の終値が00年以降の高値と安値の間で、どの程度の水準にあるかを調べると、安値のほうに近い銘柄(戻り水準が50%未満の銘柄)が2495銘柄と全体の70.4%を数える。戻り水準が20%未満の銘柄だけを数えても1142>銘柄と全体の32.2%を占める。アベノミクスによって株式相場はかなり上昇したように感じるが、個別株の多くは安値圏に沈んだままなのだ。 それだけ日本には経営的に魅力がない上場企業が多かったといえば、それまでの話だが、こうした企業のなかには、賃上げを伴うインフレが継続的に起きるような経営環境になると、業績が好転するところもあるかもしれない。日銀が脱・金融緩和に動く時期が早まることによるマイナスと脱却によるプラスとを比べて、後者が優位ならば、安値圏に放置された銘柄に見直し買いが入る公算が大きい。
 ところで、4月はどんな銘柄が狙い目なのだろうか。グラフは毎年1回リバランス(銘柄入れ替え)をすると仮定し、投資を始めた月ごとのこれまでの投資成果を示している。例えば配当利回りが3%台の銘柄に等金額投資をして1年間保有し、年4月末、02年4月末と13年4月末まで毎年4月末が来るたびに売却して再び配当>利回りが3%台の銘柄を選び直し、等金額投資をするという作業を繰り返したとすると、当初の元本が14年4月7日現在、配当収入を除いて倍になったことがわかる 同じ内容の投資だが、スタート月やリバランス月を4月以外の月にすると、直近までのリターンは10月末スタートの場合で2.43倍と4月に次ぐ成果を残している。日本で多い3月期決算会社の場合、3月末に期末配当、9月末に4~9月期配当を受け取る権利が確定するので、4月や10月は次の配当権利確定まで何カ月もあり、配当利回りが株価材料になりにくい。こんな月にこそ、逆張りの発想で配当利回りが比較的高い銘柄に投資すると、結果的に高いリターンが得られるのだ。いずれにしても長期投資家の出番は株式相場が下落したときである。