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高殿円/著 メディアファクトリー/刊 20060630初版 580円 MF文庫
 物語るさいにキャラクターであれ国であれ、その歴史を説明しなければならなくなる時があります。何がしかの物語る価値のある“事件”は、事が起こるまでに長い熟成される時間があるため、大抵親とかその親の時代からの因果を背景にする場合が多々あります。出生の秘密なんてものはまさにそれでしょう。
 そして時間をかけた人々の話とは大抵悲しいものが相場になります。幸せだけなら特筆すべきことではないのでしょう。ライトノベルと言えども、しっかりとした物語になればなるほど、人の悲しみが書き綴られていくことになります。
 銃姫の主人公セドリックも自身の出生の秘密とか、好きになった相手の立場とか、主人公の所属する組織の謎や世界創生の神話とか色々ありますが、それら主人公に直接関係する話とともに、主人公に関わる人々の話も語られるがゆえに、その世界観が多角的に補強されあって物語りとしての質を高めています。ゆえに特筆すべき悲しみもまた補強される度に増えていかざるえません。

 高殿円は生き生きと脇役に至るまで描いていると思います。あとがきによると主要キャラクター24人だそうです。それらの織成す物語が、活字ならではの巧さとあいまって、シリーズもいよいよ起承転結の転から結へ。いままで主人公と関わってきた脇役キャラクター達もぞくぞくと結集しはじめており、8巻がとても楽しみ。