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塩野七生/著 新潮社/刊 20051230発行2600円
 事実は小説よりも奇なり、といいましょうかなまじ人の頭のなかでこねくり回したものより現実の方が突拍子も無い事が平気で起きています。
 でも事実を連ねて面白いかと言うと、学校で歴史を勉強すればわかる通り、大方の人にとって無味無臭なものは受け入れがたいと思います。よほど良い教師に出会えるか、稀に肌に合う人も無くはありません。結局歴史は主観の産物でしか無いのでしょう。日本で歴史に関わる人々はどうも歴史に客観性があると勘違いしている人が多く、その為教室で歴史嫌いを生産し続けています。
 もともと小説家である作者は初めから客観など放棄し、歴史を語る姿勢を貫いている為とても面白い。滅茶苦茶面白いと言って過言ではありません。ヒロイックファンタジーや歴史風大河モノ、国家興亡と英雄の作り話が好きであれば必ずはまります。なぜならスターウオーズをはじめアメリカ製の映画小説の元ネタがローマの歴史であるからです。さらに現在USAの世界戦略がパスク・ローマを踏襲していると言い切ることすら出来ます。よく外交戦略無き日本とか世界目標が無いとかの本が出版されています。ですがUSAの文化のモトはヨーロッパであり、ヨーロッパはローマが分裂して出来た所です。文化の教養として日本人が源氏物語や枕草子を通過するように、彼らはキリスト教とラテンを通過するはずです。それらの対モデルを創出し国民に浸透させる事が出来ない以上世界戦略は現状では無理です。
 おっと、話がずれていく。
 いよいよ14巻でローマ帝国最後の皇帝テオドシウス死亡、以後その息子らにより東西ローマ帝国に分裂、ローマ帝国はその長き歴史に幕を下ろしたのでした。