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押井守/著 エンターブレイン/刊 20060412初版1700円
 アニメーション監督押井守による架空戦記シリーズ第一弾。南北戦争で南軍が勝ってしまった後の世界、日本がベトナム戦争に介入してしまった話です。
 凡百の架空戦記は歴史のifを描くのがテーマなわけですが、今の我々から過去を見た場合強固に組まれた事実の集積が存在するので、歯車を一つ替えてもどうにもならない、というのが知識を増やせば増やすほどゆるがし難くなってきます。特に太平洋戦争は負けるべくして負けたとしかいいようがありません。どうひっくり返っても日本が勝つことはありえないし、もし勝てるとしたら明治維新以降の日本が別な道をたどらなければならないでしょう。
 押井守の場合、架空戦記のスタイルはとっていても、描きたいテーマは戦闘そのものとか戦争そのものではなく(濃いミリタリー・マニア色はあっても)、「紅い眼鏡」一連のケルベロス・シリーズのように過去の時代設定をもってきていても攻殻機動隊やパトレイバーのようなSFと断言して良いと思います。
 押井守自身本業の映画監督が忙しいのか、愛知万博の企画等いろいろなところで引っ張りだこなせいか、この本の半分はあとがきと解説になっています。押井守ファンならまだしも、普通に小説を読もうとすると期待はずれの公算大。