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支倉凍砂/著 メディアワークス/刊 20060225初版590円 電撃文庫
 知人に薦められて読んでみました。第12回電撃小説大賞銀賞受賞作、お留守バンシーが大賞というのは確かに作品の完成度を考えると妥当な評価だと思いますが、将来性を考えるとこちらの方がお買い得のような気がします。
 近世ヨーロッパ的世界を舞台に行商人と狼の化身にして豊穣の神の少女とが織り出す、経済小説っぽくちょっとしたウンチクと儲け話を軸に、古い時代から新しい時代への変革期を巧く描き出したファンタジー。ドラマの盛り上げとしてクライマックスのアクションを持ってきたのはわかりますが、全部読み終わると果たして必要だったのかどうかと思います。でもライトノベルの宿命だったのでしょう。どの時代であれ戦争を含め社会が直面する問題は大抵経済のはずなんですが、地味なせいかライトノベルで経済を舞台にした話は少ないので今後題材として取り上げられて良いのではないのでしょうか。どうしても経済に主眼を置くと心踊り胸弾む展開って難しいんですよね。
 この本を薦めてくれた知人の慧眼に感服しつつ、電撃文庫編集部がこの作者を上手く育ててくれることを期待します。