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近藤信義/著 メディアワークス/刊 20060325初版790円 電撃文庫 えびね/イラスト
 分厚いです。545pもあります。このあたりからサイコロ本と呼んで良いのではないでしょうか。790円だと一昔前の新書サイズの小説本の値段ではありませんか。
 さて、平和に暮らしていた辺境の地方領主とその異母弟が、隣国の類稀なる英雄の侵攻によって本国を滅ぼされ、平和時代なら発揮されなかったであろう兄の政治手腕と弟の軍事的才能そして回りに集う才能豊かな友人達の力により領国を独立させ、周辺国と同盟を結びすったもんだしつつその同盟も英雄の侵攻を受け、さてどうなるかが今回の第6巻。これにて第二部バストーニュ篇終了。これに兄弟に拾われた記憶を失った少女の秘密が絡んできて第三部へ上手く引っ張るラストとなりました。単なる国々の興亡だけでは萌え要素が少ないので、なんとも巧みにヒロインを配置したもんだと感心いたします。また単純なキャラクター小説にせず、隣国の英雄とその将軍達の描写にも力を入れ、さらに同盟国の内部事情を事細かに書き込みてしまい、これでは原稿用紙が何枚あろうともかききれないでしょうと思えるほど三国の主要人物を描きこんでいます。あとがきを読むと当初5部構成だったのを3部にまとめって、これでは巻数がいくらあっても足りないのでは。編集部はある意味英断したとも思えるし、素の物語も読んでみたい気もします。

 以下閑話休題。戦争は数だよ、とのたまったのはかのジオン公国総帥ギレン・ザビですが、衆寡敵せず、どんなに頑張っても精神論でいこうとも軍事的に数の優位が覆る事はほとんどありえません。もしありえるとしたら本当の偶然か、政治的勝利でしょう。軍事は政治の一局面にすぎないと言ったのは古代漢人か近代ヨーロッパ人か。ゲームではありませんが戦術的勝利と戦略的勝利は必ずしも一致するものではありません。どうも一騎打ちで闘うサムライのイメージがあるのか、寡兵で大軍を打ち破るのにロマンを感じてしまうのでしょうねぇ。