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 隆慶一郎/著 新潮文庫 4-10-117419-9
 上巻を読まずいきなり下巻を読んでしまいました。上巻から読み直そうとも考えましたが、一話完結の連作であることと、途中から読んでも面白かったのでいっきに読んでしまいした。文体のリズムは人それぞれ好悪のある所ではありますが、私は司馬遼太郎と隆慶一郎の二氏の文章がとても好きです。文を書くと云うより、「語る」と云うのがふさわしいのではないかと思います。
 隆慶一郎と云えば「一夢庵風流記」と云うより「花の慶次」の印象があまりにも私の心の中に残っています。マンガは小説にかなり脚色されています。マンガの中で描かれていた「死人の覚悟」は、確かに隆慶一郎の全ての著作の根底に流れていますが、表層に描かれているのはこの「死ぬことと見つけたり」ではないでしょうか。
 この物語、作者の死によって全十八話中十五話で終了してしまいました。この十五話の最後などはわざとやったのではないかと疑いたくなるくらい風呂敷を広げて、さあこれから畳むけどもう御仕舞ネ、と尻を捲くったとしか思えないくらい鮮やかな逃げっぷりです。続きがもう読めないなんて、とても残念でなりません。