「でもさ…

 カッコ悪くても俺…

 とうしゃんが

 大好きだよ。

 父さん母さんと

 一緒に

 暮らしたかった。」

 さなえが晃を

 抱きしめて涙ぐむ。

 晃もさなえに

 しがみついて、

 懐かしい香りと

 柔らかさを

 忘れないように

 確かめた。

 剛健は肩を落とす。
「悪かったな…。

 晃が家に帰りたいって

 泣くたびに父さん…

 何度も後悔したよ。
 あの時…

 ちゃんと前向いて

 運転してたら

 突進して来た車を
 避けていたかも

 しれないってな。

 もしかしたら

 今もあの小さな家で
 3人で楽しく

 暮らしてたかも

 しれないってな。」
 聞きいている

 さなえの頬に

 涙がいくつも

 伝わって落ちていく。

 でも剛健は顔を

 上げた。
「なあ晃、

 施設の人はみんな

 お前を助けてくれて

 優しいな。

 子供たちもみんな

 お前が大好きだ。
 でも今の施設の

 お前の部屋…

 二人部屋だから

 仕方ないけど

 ちょっと小さいな。」
「うん。」
「それに施設は

 そのうち出なきゃ

 いけない。

 卒園したらもう

 戻っても

 来れないんだろ?」
「…うん…。」
「だけどさ、

 父さん母さんは

 いつも晃の傍にいる。

 晃がいる所が

 俺たちの家だ。
 その辺の道でもそうだぞ。

 だからあの小さな部屋は

 今は俺たちの家だ。」
「……。」
 晃の顔はもう涙で

 ぐしゃぐしゃに

 なってしまった。
「夏の海の帰りに

 戻れなかったけど、

 やっと3人で帰れるぞ。

 ほら、施設に着いた。
 一緒に家に帰ろうなあ。」
 

 

 

 

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