背後は気味悪い喘ぎ声、
 悲鳴で満ちていた。
 そこは
 少年たちが絡み合い、
 犯しあう
 悪魔の饗宴なのだ。
 ホテルの廊下に、
 少し声が漏れ聞こえた。
 ゆづるたちは
 廊下を走った。
 怖い世界から逃げ出した。
 でも、
 たぶん冬馬と
 出会っていなかったら、
 ゆづるもあの場に
 残っていたのだ。
 冬馬によって、
 ゆづるは性の鎖から
 解き放たれた。
 ゆづると知り合った
 ばかりの少年は
 一緒にホテルの
 廊下を走り、
 エレベーターに乗って
 降りる間、沈黙した。
 二人とも
 おぞましい事態を思って
 鎮痛な表情だ。
 あの一番年下の
 少年の姿は
 ゆづるに自分の過去の
 醜さをみせつけ、
 心が砕けそうだった。
 あれは俺だ。
 最低だ。惨め過ぎる。
 あんなことを母さんは
 俺にさせてたんだ。
 涙がこみ上げた。
 愛なんかない。
 わかっていたが、
 再々確認した。
 母さんには俺への愛なんかないんだ…。
 愛してくれるのは、
 とーまだけ。
 ホテルを出るとまだ
 雨が降っている。
 外に出て、真夜中、
 傘を差して駅に向かった。 
 人気のない夜の街、
 ゆづるは歩きながら
 泣いていた。
 涙が頬を伝わった。



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