アベノミクスが長期的に維持できないと思えた理由はほかにもある。
白川前日銀総裁も激しい円高に見舞われても積極的に調整はしていなかった。
緩和をやらな過ぎたという意見もあるが、米欧と違い日本がサブプライムやギリシャ債務危機などの金融の混乱を殆ど受けていない事、東日本大震災の影響で日本各地の原発が停止したため燃料の輸入が急増、円高メリットもそれなりにあったためやらない理由もそれなりにはあった。
少なくとも建前としての中央銀行の独立性というものを当時はまだ信じていたし、新しい黒田総裁自身も「2年程度で2%の物価目標を達成するために何でもやる」というような就任会見での発言もあったため日銀はアベノミクスに積極的に協力するかもしれないがあくまで短期間行い、結果を判断するようなスタンスだと考えていたからだ。
何より金融の倫理的にそうでなければ問題がありすぎた。お金を作れる中央銀行が自国通貨建ての金融市場に大規模に関わること自体褒められた話ではない。
アベノミクスが始まる前から株式市場は反応をしていたがいざ始まってからもその勢いは強烈だった。
上値が1万付近で低迷していた日経平均はあっさりとそれをブレイクし、黒田総裁がいっていた2年目の終わりあたりでは日経平均は2万を狙える位置まで上がってきていた。
私を含め多くの買い方、買い持ちのトレーダーは毎日が小遣い日、給料日、ボーナス日といった感じでこの緩和相場を謳歌したし、逆に長い間の下落、低迷相場を味わってきていた疑念多きトレーダー達に限ってアベノミクス中の火柱で売り方に回りパフォーマンスを台無しにしたり退場に追い込まれるというまさに「FRB(中央銀行)に逆らうな」という格言通りのマーケットが発生した。
私自身このような楽なマーケットは体験したことがなかったし、大いに資産を増やさせてもらった身としてはアベノミクスを悪く言うことは出来なかったがその一方でこんなことは長く続かない、続いていいはずがないとも思っていたので一時的な下げ相場が来るたびに売り方に回ったトレーダー達が持っていたと思われる「アベノミクスはそろそろ終わるのでは?」という考えは常に頭の中にあった。
だがアベノミクスは続いた。
それも歴代最長となった安倍政権の後の菅政権においてもそれは継承され、黒田総裁が退任した後の岸田政権においても続く(続けざるを得ない)かもしれない。
長い期間行われたアベノミクスと中央銀行の大規模緩和は企業の業績や有効求人倍率の改善等ポジティブな影響を起こした一方でネガティブな影響はもちろんのこと日本をある意味で後戻りのできない状況にしてしまったのは事実である。
しかし私はアベノミクスが始まってよかったと思っている。安倍政権のうちに目標を完遂することはなかったが日本が持つ少子高齢化や社会保障費の問題を考えれば何もしないで緩やかな死を待つよりは余程いいことだと思えるのだ。