その後、祖母は週に2、3回ほどデイサービスに通う生活になった。
本人にとっては見知らぬところに連れていかれるようなものだから認知症による理解の欠如があるにしても不安は感じていたと思う。
私も施設にいくときに心細そうにしている祖母を見るのは少し辛かったが、色々声をかけ笑顔で見送った。
得られたメリットは大きかった。私は心に余裕が出来てまた祖母に対して前向きに接することができるようになったし、家族に変な形の恨みを抱くこともなくなった。
具体的な部分では施設で入浴をさせてくれることが一番大きかった。
高齢者を夏や冬に毎日入浴させると本人も疲れてしまうし、そもそも1人きりにする時間もあるから事故も怖い。週に2,3回いけばそのたびに入浴をさせてくれるので自宅での入浴はしなくてもよくなったし、漏らしてしまったりするときもあるがその場合にはシャワーで流すだけで大抵済むので負担は激減した。
食事も同様だ。介護施設ではよっぽどのことがない限りしっかり食べさせてくれるし、どの程度を食べたかノートに書いてくれるので状態も把握しやすい。
こういったニーズは恐らく今後変わることはない、だが、介護業界の状態は良くない。
長年人手不足と低賃金が問題になっているし、介護事業者の倒産も2020年は過去最多の見込みだ。
うまくやっているところもあるのだろうが、全体で見ると明らかに儲かるどころか報われる、といったレベルの環境にさえなっていない。
よく保育や介護に関わる人達の待遇をよくしよう、という声が世間であがるがそれなら受益者が負担を増やしてもっと多く払えばいいのである。しかし、私にはそうしたい人がそれほど多くいるとは思えない。
多くの負担を間接的にを払っていて直接的に払っていないからピンときていないだけなのだ。実際この待遇をよくしようとするコストを知ったらとんでもない!と言い出すのではないかと思う(消費税を2%あげるだけでも騒がれるし)
それなら効率化はどうだ?とも考えるが、それも介護をやった身としては難しいのではないかと思う。
人はそれぞれ千差万別だから工業製品のように同じような取り扱いは難しいのはわかるし、そもそも人だから粗雑にも扱えない、責任もある。
介護用の装着ロボットで話題になったサイバーダインなども目覚ましい効果を上げているとはいえない。
運営自体の効率化はできるかもしれないが要介護者への対処の部分の効率化や負担軽減への道のりは恐らく非常に険しい。
労働環境が過酷で低賃金な業界に好んで入る人は殆どいない以上、介護業界がこのままの状態で続いていくと私は思っていない。
いつか市場原理が働き受益者の負担を増やすか、求める質を落とすか等の調整が入るだろう。最悪そもそも介護というサービスの受け皿が小さくなりサービスを受けれない人が多発する時代になるかもしれない。
そのときが親という名の爆弾(私の場合は祖母と叔父だったが、まだ両親も健在である)が爆発するときになるのではないかと恐れている。