あれは1年前……
ワルシャワ・プラハの旅から帰ってきて、すでに2週間近く経ちました。
お休みしていた間に仕事が溜まっていて、先週はちょっと地獄を見ましたが、
どさくさに紛れて、帰国後すぐに万博にも行ったし……
そんな中、第19回ショパン国際コンクールが終演、結果を見届けて、ようやく一区切りついた気持ちになり、記事を書くに至りました。
思えば1年前のビアガーデン、弾き合い会後の飲み会で、ピア友Mさんの
「来年、ショパンコンクール、行かない?」
というお言葉から始まった長い1年。
コンテスタントさんたちの4年(本来は5年)、どころか、子どもの頃からずっとこの舞台に憧れていました、なんていう想いからすれば、ごく短い期間ではありますが、本当に実現するのかしら? と思いながら過ごした時間でした。
長期の夏休みは2018年以来取っていなかったので、本当に久しぶりの海外。
てっきりパスポートの有効期限が切れていると思って書類を揃えてパスポートセンターに行ったら、
「結いっこさん、あなた、有効なパスポートをお持ちですよ。もし紛失したのなら警察に届けないといけないので、ちゃんと探してください!」
って怒られたり。
「抽選」なるものがあると知ったのも、その飲み会の時でした。
ツアーは複数の旅行会社から発売されていますが、中には「ツアー詳細発表予定」とアナウンスがあったのに、結局ツアーが催行されないままとなったところも。
一体どのくらいの倍率なのか、今も分からないままですが、2次予選が一番人気、3次になるとお目当ての人が残っていない可能性がある、ファイナルはコンチェルトばかり何回も聴かないといけないから……など様々な情報が飛び交う中、一番倍率が低そうな1次予選(全セッション参加)にターゲットを絞りましたが……
抽選結果ははずれ。
その後、情報収集能力抜群のAさんが、別の旅行会社が出しているツアーがあるとの情報を仕入れてきてくださり、抽選に再挑戦。
結果が出るのは年明けでした。
今年は還暦(つまり厄年)の私。初詣に行く先々で
「ショパコンにいけますように! 今年はそれだけでいいです!」
とお参りしておりました。
その頃から、なんとなく絶対行ける気がする!と思っておりました![]()
結局、そこでもお目当てのツアーには外れたのですが、「むっちゃ行きたい!」アピールで旅行会社に質問の嵐を繰り広げてくださったMさんの熱意のおかげなのか、
「2回だけならご用意できます」、との連絡があり、実現に1歩近づいたのでした。
後から知ったことですが、
今回は本当に、関係者でもチケットが手に入らなかったりしたのだとか。
もちろん、とりあえず現地に行って当日券に並ぶという強者さんたちもいらっしゃって、1次予選は比較的「並べば入れた」という感じだったようです。
万博の列を思えば、ほんとに(言葉は悪いけれど)ちょろいもんです。
ちなみに、厄年は要注意です。舐めてはいけない……
昨年の給湯器が壊れる大事件に続き(半導体がなくて、待つこと数か月)、
今年は、車の買い換え、エアコン故障(23年、よく頑張りました)、ジャングル化した庭の手入れ、など、本当に「よく耐えた、私の財布」と言ってあげたい。
給湯器とエアコンはただの家電ではない、家の構造そのものだ、と思い知らされました。
エアコンなんて、6月の末に故障に気がつき、7月半ばまで死ぬ思いをしました。
神様としては「ショパコンだけでいいって言ったやん」でしょうね
ついにやってきた、Sala Koncertowa Filharmonii Narodowej
道の向かいには懐かしい写真の数々。もちろん、探しましたよ!
いらっしゃいました! 10年前のソンジンさん![]()
今年このステージに立つコンテスタントさんたちは、10年後どんなピアニストになっておられるのでしょう。
入り口を入るとこんな階段が。この右手のほうに当日券を売っている窓口があります。
チケットを持っている場合は、当日券売り場の列を突っ切って進みます。
ロビー。両側にクロークがあります。
写真が暗くなっちゃったけれど、ほんとにまぁまぁ暗め。
奥まで行くと左右に階段。最終結果はこの階段の下でしたね。
階段を上がると、インタビューコーナー
ショパントークの現場。ブルース・リウ氏のインタビューも観ることができました。
あの人の演奏がどうだった、とか……
ご存じの通り、絶賛推し活中の亀井さんが予備予選で敗退され、個人的には「熱烈推し」無しで行くことになったワルシャワ。
亀井さんがショパン向きだとは思っていませんでしたけれどね、でも、私のモチベーションもあるじゃないですか。
でも、「どうせそこまで行くのなら、延泊して憧れのプラハに行きたい!(地図見たら近いやん!)」との願いに、同行のお仲間さんたちが賛同してくださって、コンクールだけではない、充実の旅となりました。
1日目のevening session
この日の私たちのヒーローはFanze Yangくん
絶対いい子。また会いたい。サインももらいました。
コンクール期間中、SNSやブログなどで色々な方々の、審査員顔負けの評論・感想などなど、面白く読ませていただきました。
私も、現地に行ったからには、かっこよく批評などもしてみたいところですが、もうこの一言しかありません。
みんな、愛しい!![]()
愛しい、という表現が適切かどうかは分かりませんが、ほんとに全てのコンテスタントが何か訴えるものを持っていて、このステージに立つまでにどれくらい頑張ってきたのだろう、もちろん、思うようにいかなかった人もいるだろうけれど、それはそれとしても、伝わってくる熱量は「感激」の一言でした。
だって、ここに立てなかった人もいるんですよ!
若いピアニストは……なんて嘆きの言葉も聞こえてきますが、
巨匠の演奏を聴きに来たのじゃないんだから、コンクールでは、この若いピアニストが10年後、20年後どんな演奏をするピアニストになっているのだろう、という萌芽を感じたい。そもそも20歳そこそこの若者が今から巨匠みたいな演奏していたら、逆に20年後が心配だわ、と思っているのは私だけかしら。
その年齢にしかできない演奏、そして熱量があるんですよね。
そしてこの世界は、持てるものには機会がどんどん与えられるけれど、機会を得られないままの人がほとんど、という厳しい世界なんだから、若い人が自分をアピールするのは当然ですよね。
そんなふうに思っちゃう不埒な私でした。
(芸術の何たら、ショパンらしさとは何だか、を分かっていない素人の個人的見解ですのでご容赦を)
とはいっても、時差ぼけが吹き飛ばされた瞬間はある
1次予選の2日目evening session
予備知識無しで聴いていましたが、やはりすごかった![]()
CHANG-CHEN-CHENの3段活用みたいな3人のコンテスタントさんたち。
その中で、2位となったKevin Chenさんの幻想曲の最後のほう、ピアニッシモの旋律。
もうほんとに、天井から金粉が降っているのかと思いました。
トランジットでドバイを通ってきたので、あのキラッキラ
が目に残っていたのかと……
藤井聡太さんに似ていると言われていますが、プロフィール写真を見たら「イノッチやん!」と![]()
そこから、彼は「私たちのイノッチ」になりました。
Changさん、そしてKevinを聴いて、すごいなぁと満足した矢先、もう一人のChenさん登場。
先の2人に比べて地味ではあったけれど、なんて穏やかで癒やしとなる音を出されるのかと、3人セットにしてもう1回聴きたい!という感激の時間をくださいました。
見事に3人とも1次予選を通過されました。残念ながら前後のお二人は3次には残られませんでしたが、この3人の並び、偶然とはいえ絶妙でした。
それにしても、どのコンテスタントの方も、旋律のクリアなこと。
そのうえで、内声の旋律、左手の旋律がフレーズとしてちゃんと聞こえる。
わが身を顧みて、思わず反省いたしました。
現地あれこれ
それぞれのコンテスタントの皆様の熱演に対する感想や想いはありますが、個人的なことなので今は脇に置いておきましょう。
応援していた3人の日本人コンテスタントが3次予選まで進んで、もしかして日本人女性初の~と希望を感じさせてくださったこと、とても頼もしく嬉しかった![]()
桑原さんは2023年から密かに応援していたピアニストさん。エリザベートで女性が全く入賞されなかったので、ちょっと残念に思っていたので、今回の結果は嬉しい。
今回は会場あれこれについて。
椅子
日本人の足が短い?
座骨神経痛との戦い真っ最中の私。リハビリの先生からは「椅子には深く腰掛けてください」と言われていたので、深く腰掛けてみたら……
まず、座面の長さがそもそも長い。そして、椅子の高さも高い。
結果、「あし、ぶらんぶらん」って子どもみたいなことに![]()
Aさん「私、普通に届くよ~」![]()
お手洗い
数カ所お手洗いはあるようですが、各箇所の個室の数が2つ!
これって標準仕様なのか、思い起こせば、ワルシャワ空港でも2つずつなんですよ。
intermissionでは長蛇の列? と思ったら、思ったほどでもなく、とにかく並んだら行けるかなぁ~なのですけれど、ワルシャワの方々はあまりお手洗いに行かないのでしょうか。
ザ・シンフォニーホールのお手洗いで少ないとか言ってる日本人。
ごめんなさいでした。
逆にワルシャワの方が日本に来られたら、ホールの個室の数に驚かれるのでは?
空気の乾燥
配信を聴かれていた人は、曲間の咳がうるさすぎると思われたかもしれません。
でも本当に乾燥しているのです。
喘息持ちの私は、気温差もあったのかもしれませんが、帰国後、ものの見事に喘息が悪化し、今、若干大変なことに。
(推しではなく)神と仰ぐチョ・ソンジンさんのリサイタルが心配
プログラムは600グラム
韻を踏んだわけではありません![]()
先生にお土産に持ち帰ろうと、2冊購入した私。合計1.2kg![]()
帰りのトランクが重くなったのはこれのせいか!
(とチョコレート、とエミレーツのお土産の数々)
ショパコンを毎回配信で見続けている先生、プログラムを見て喜んでくださったのですけれど、ひとこと。
「あの、ごん!っていう音の正体はこれだったのですね」![]()
長丁場ですからね。睡魔に負ける瞬間はあるのですね。
そして……乾燥したホールに響く落下物の音。
ピアノのこと
私たちが会場で聴いたのが、コンクールの初日と2日目だったこともあるのでしょう。
sessionの初めはあまり気が付かなかったのですが、後半になるほど音が伸びてきました。コンクールの後半ではもっとピアノが鳴っていたに違いありません。
コンテスタントの技量の違いではないと思います。
こういうの(演奏順)って、本当に運、ですよね。
私の耳には、少なくともこの2日で言うと、もうスタインウェイ一択だな、と思えました。低音の音質と高音の音質がまるで違って、ほんとに分厚くて暖かい音。
シゲルさんは、乾燥のためなのか、高音部で時々妙な音がび~んと響いて気になりました。これも後半には収まっていたのかもしれませんが。
そして、YAMAHAは一度しか登場しなかったのですが、今回は悪くないなと思いました。ただ1回しか聴けなかったので、判断できません。
FAZIOLIは相変わらずFAZIOLIでした
前から思っていたけれど、嫌いじゃないけどショパンに向いているんかなぁ
と。でも今回、3次予選のEric Luさんを聴いて、FAZIOLIにもこんな悩ましい音が出せるんや、と驚きました。いや、さすがです。
全部は聴けていませんが、思ったこと。
どのメーカーのピアノを選んだかではない。そのピアノの一番いい音(少なくともそれに近い音)を引き出せたかどうかなんだな、と。
入賞した方々はやはりそれに長けていたのではないかと。
そういう意味では、桑原さん、Eric Luは本当に素晴らしかったと思いました。
あ、誰がいいとかは語らないつもりだったのに……
え? もしやKevinびいきだったのが伝わっている?
だって、畳みかけるように質問するお兄さんの英語が聞き取りにくくて困っているTianyaoちゃんに、通訳してあげる姿に、還暦おばちゃんは思わず萌えましたわ。それも、隣じゃなくてひとつ向こうに座っていて、僕が口出しして良いのかなという雰囲気で遠慮がちに……![]()
マイクのこと
配信のためのマイク、写真でもいくつか写っていますが、とにかくピアノの近くにものすごい数なんです。これで音を拾っているんです。
これを見ると、会場で聴くのと、配信で聴くのは違う、というのも仕方ないと思えます。しかも、私たち今回は、ピアノの右側、つまり手元は見えないけれど音はいいという側にいたのですが、この会場に限らず、ホールの作りによっては、座席の位置で音が全然違って聞こえますよね。
サントリーホールなんてその最たるもの。
いったい、審査員席にはどんな音が聴こえていたのでしょうか。
男女でも音が違うように感じました。配信では気にならないけれど、ホールで聴いていると、音圧といいますのか、耳に入ってくる音ではなく、体で感じる振動としての音が、やはり男性は塊のように伝わってくる。
音の大きさではありません。音の圧の話。
これはもうどうしようもないんでしょうね。ピアノのような大きな楽器ではやはり女性は少し不利に感じることがしばしば(特にコンチェルトでは)。
毎年楽しみにしている特級グランドコンチェルト。やはり女性は少しオケに負けちゃう印象があります。でも2023年の桑原さんのシューマンは素晴らしかった!
何はともあれ、すべてのコンテスタントのみなさん、予備予選から含めて、本当にたくさんの感動をありがとうございました!
ショパンの生家、ショパンの魂(心臓)が眠る教会、そして憧れのプラハの旅についてはまた別の記事で。
ぼくも行ってきたよ!(by コウ)





























