「友情」武者小路実篤 | 藍色の傘

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一日中、猫を膝に乗せて、本を読んで暮らしたい。

「友情」武者小路実篤




大正9年(1920年)、実篤34歳の作品。

駆け出しの脚本家・野島は23歳の大学生で、友達の妹の16歳の杉子に一目惚れしてしまう。
痩せっぽちで運動は不得手、不愛想で偏屈で社交的でもない野島だが、新進気鋭の小説家・大宮という親友がいる。
大宮はスポーツ万能で体格も良く上流階級の家柄で男気に溢れ、野島の相談を親身になってきいてくれる、野島の数少ない理解者である。
若く美しく純粋で聡明、溌剌として人気の的の杉子に野島は夢中だが、恋の行方は果たして…。

奇を衒わない、率直な表現と構成は実に清々しく、100年以上経った今も、我々に素直な感動を与えてくれる。




中学生の頃、学校の図書館で手に取りパラパラめくり、自分には必要ないと棚に戻した記憶がある。

あの頃は「友情」というタイトルがそもそも気恥しかった。
太宰治のような、難しい顔をした小説が高尚だと思っていた。

若いって、浅はかでバカでどうしようもないけど、勢いがあって力に満ちている。

作中の杉子も、野島も、中学生の頃の自分も、愛おしくなる。



武者小路実篤、実に良い。




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