その少年は遠くを見ていた。
ただじっとまっすぐ。
私が初めて彼を見た時、その少年は海岸線に沈む夕日を見ているのだと思った。日が暮れかけていて、涼しい風が気分を前向きにしてくれる。ずっとこの静かな時間と自然の音に身を委ねたいとこころから思った。時間に追われる日々の中、私はこんな安らげる時間を必要としていた。ただボーっとする時間。その少年もただボーとしているのだと思った。私ははじめてきたこの小さな島で、初めて友達ができたような優しい気分になった。
ここから始まる小さな世界のお話し。
ゆったりとせつないお話し。それでも私はこのお話が好きだ。いつも自分を優しい気持ちにしてくれる。かかせない私の宝の体験だ。