(2020/10/23 記・2020/11/03 公開)

 

2020/10/20(火)は微妙なジェット気流予想でした。前後の夜がダメで、その夜は

僅かに近畿地方は荒れた部分から顔を出している予想だったのでした。

あの散々な結果だった、2020/10/15(木)の顛末に懲りて、気流予想が万全でないと

出撃しないと決めたものの、雲一つない晴天を流すのも惜しいと感じました。

 

https://ameblo.jp/enigmind/entry-12631923554.html

 

 

最近、画像を引用させて貰っているWindy.comでその夜の予想画像を残すのを

忘れました。(Windy.comは過去日時の情報に遡れないのです。)

それでこれもKENさんに教わったサイトですが、earthというサイトで当夜の状態は

こんな感じでした。赤い部分に強い流れがあります。

Windyのように部分拡大が出来ないので、自分で無理繰り拡大したもので、

若干モヤモヤしていますが、近畿地方の直前で南に蛇行するジェット気流の

境目にあった感じです。

 

 

過去に遡れるので比較してみると、2020/10/15(木)の状態がこれです。

やはり前後の夜が悪天候で、この夜はジェット気流が近畿地方の北側を流れて

近畿地方には少しかすった感じでした。(この夜の予想図は過去記事にあります)

 

  

   

なのでこの日は2020/10/15(木)同様に、C8で満足の成果は上がらないだろう、と

考えたものの、むしろそれを前提として(満足の成果を追うベストは棚上げにしても

後悔はないだろうと)、懸案だったC8とETX-90を使って他は同一条件で撮影して

成果を比較することにしました。

 

ジェット気流による像の攪乱が酷い夜は、指をくわえて機会を流すのではなく、

小口径であるETX-90が気流の影響を受けにくいという意味で有用なのではないか、

という期待を確認しようと考えたのでした。特にこれから気流の荒れる冬場に

向かって玄関廊下側で火星を狙うなら、重要な情報です。

 

  

   

撮影はまずC8である程度の比較画像を撮っておき、ETX-90に接眼鏡ごとASI385MC

を持って行き、同じPCで記録する流れとしました。最後にC8に戻ってきて、そのうちに

黄金位相をC8で撮れる時間帯になる、と考えていました。

 

しかしC8で何本かの撮像を終えて、ファインダー調整も入念に終えていたETX-90に

換装した後、FireCaptureのモニタ画面に火星を導入できません。

ASI385MCだけ外してファインダーと接眼鏡で視野中央に火星を導入して、いつもは

再びASI385MCを装着する途中でちらちらとFireCapture画面に火星が見える

(写野の近くに火星がある)のが見える筈が全く見えません。

 

あれだけ容易に設営でき、予想外の成果を得た2020/09/23(水)での好印象は

吹っ飛んでしまいました。

 

https://ameblo.jp/enigmind/entry-12627207424.html

 

 

後で動画取得時刻を確認しましたら、C8での一旦終了からETX-90での1本めを

撮像開始するまで50分かかっていました。露出設定が暗すぎたとかETX-90の

ピント位置が(接眼鏡のズーム位置がかなり違うために)大きく外れての減光

とか、特に目立った理由もなく、不可解に最初の写野導入とその後の追尾には

骨が折れました。以前のQHY-5LIIのように入感が無くなったのか、とASI385MCを

外して室内灯に向けて感度があることを確認したりも必要でした。

 

追尾も20秒ほどで火星は写野の外に流れて行き、1軸自動追尾では赤緯軸の

粗い手動修正も含めて、写野に火星を留めるのは困難でした。

 

そうまでしての口径比較でしたが、土台の前提である「さほど良くない気流状態」

の予想が外れました。C8で撮影していた段階で「気流予想が悪いという割に

模様がFireCapture画面で結構見えている」と気づいていましたが、黄金位相に

近い濃淡が明確な模様のためか、と納得させていたくらいでした。

 

折角、2機種設営もしたのです。三脚の水平設置や北への極軸設置など2機種分の

初期設定は手間でした。なので途中で「やっぱり比較は中止。C8でベストを目指そう」

という方針転換はなかなか出来るものではないです。

 

その結果、ETX-90での撮影開始が遅れたために、ETX-90で何本かの撮像を

得た時点で、FireCaptureモニタ画面の火星の輝度が落ちてしまいました。

もう完全に火星はベランダのひさしの向こうにあったのでした。最後の何本かは

口径食というか光の回り込みを拾っていただけの撮像だったのでした。

 

折角の「最大接近の黄金位相」をETX-90でしか残せなかったのです。

それでもその夜のうちにTwitterで速報画像を出した時には、C8での画像が

良い仕上がりであることは勿論ながら、ETX-90の画像との差も大きくなく、

荒れた気流下での比較にも意義があった、という気持ちのほうが大きかった

のでした。(「火星最接近」などと書いてますが、過去の文面を流用したため

の失敗です。)

 

https://twitter.com/SigKam_EnigMind/status/1318562274731315200

 

 

ところが時間をかけて後処理の試行錯誤を毎回同様進めて行くと、C8での成果は

圧倒的になり、その条件下で黄金位相を撮れなかったことは、とても残念なこと

だった、と今では後悔するばかりです。

 

時系列は逆になりますが、ETX-90での成果を先に掲載します。

大シュルチス、ヘラス盆地、サバ人の湾から子午線湾に至る曲線までが全部

揃った黄金位相です。C8で先行した撮影の時間帯には子午線湾がまだ倒立画像の

右端から出て来ていませんでした。

 

模様は90mm口径と思えないほど詳細が叩き出されては居ます。

しかし左下の輪郭線のダブリが美しくないです。後処理をいろいろ変えましたが

それが目立たなくなることはありませんでした。

 

19423コマ取得からの90%選別での仕上がりです。(DeNoiseAIはLow-Light処理)

 

  

追尾の暴れ馬状態にも徐々に慣れて接眼鏡のズームをやや大きくしても、どうにか

対応できるようになった頃の、輝度が落ちる直前の動画から後処理を何種類か変えて

みて、そのうちの3通りを掲載します。

 

20744コマ取得からの65%選別での仕上がりです。(DeNoiseAIはDeNoise処理)

 

  

同じデータでの90%選別の仕上がりです。(DeNoiseAIはDeNoise処理)

輪郭線のダブリが目立たないよう、階調を浅めにしても模様も一緒に淡くなって

しまいます。

 

 

同じデータでの90%選別の仕上がりです。(DeNoiseAIはLow-Light処理)  

Registax6のWavlet処理も浅めに処理すると今度は全体の詳細感が鈍ります。

 

  

撮影時にはピントスクリューに迷いはなく、一発で最適位置を探せました。

C8のようにもやもやと最適合焦位置を長時間迷う感じがありませんでした。

像のコントラストが高いのでしょうか。

90mm口径での火星像としては充分な詳細が出ているのでしょう。

 

しかし最接近に近い状態で、この詳細感がかろうじてある訳で、これから遠ざかって

行く火星を、玄関廊下側の西の空で通行の邪魔を厭わず追い求める価値の像質

なのか、については良く考える必要がありそうです。

 

次にC8での成果です。ETX-90での撮影時刻より早かったため、まだ子午線湾が

現れていない状態です。

 

13198コマ取得からの65%選別での仕上がりです。(以下は全部DeNoiseAiはDeNoise処理)

 

  

38444コマ取得からの65%選別での仕上がりです。

 

  

32528コマ取得からの90%選別での仕上がりです。

 

  

同じ動画データと同じ選別処理での若干の階調処理の違いで(差が分からないかも

しれませんが)こちらも掲載します。

 

 

美しいです。圧倒的な画質差があり、C8での軍配は明白です。

しかし当夜確認したかったのは「口径が大きいほど良い成果」という当たり前の

ことではなく、「気流が悪ければ大口径ほど影響を受けるので、そんな夜は

お気軽設営の小口径が有用か」ということだったのでした。

 

しかしその大前提である「さほど良くない気流予想」が外れてしまいました。

狙った小口径機での効果は確認できず、C8での黄金位相の撮影機会を

逸してしまいました。

 

最後の画像に地名を添えます。

 

  

先日は予想以上の良像に驚かされたETX-90でしたが、今回は残念な成果に

終わりました。その差が何にあるのかは分かりません。C8の成果を見れば

気流による悪影響は少なかったことは明白です。

 

ETX-90を載せたスカイパトロールII架台の追尾が安定せず、20秒くらいで写野を

火星が逃げて行く(ほぼ無追尾と変わりません)ので、その都度、先日初めて

存在を認識した「一時停止」を使って、写野への再導入しては録画を追加した

状態ではあったので、その流れ去りが速く、1コマの中でも被写体ブレが多い

コマが積み上がったのかもしれません。

ドイツ式赤道儀で自動追尾しているので、そのズレが生じる方向は、動画上、

火星の南極方向から北極方向に真っすぐ写野の長辺方向に流れて行くのでした。

確かに画像の歪は火星を倒立像に直して垂直方向に強く出ているようです。

 

追尾精度と像質が安定していた前回と架台の設置精度は変わりませんでしたし、

駆動のための充電池はフル充電してありました。追尾不良の原因は分かりません。

 

そのことが「これから遠ざかって行く火星を、玄関廊下側の西の空で追い求める

価値」の問いかけに大きく影を落とします。当夜の比較テストは期待通りの結果

を得られなかっただけでなく、今後の方針を大きく変える芽となったようです。

 

 

 

 

ご覧いただきありがとうございます。