(2020/10/07 記・2020/10/24 公開)

 

小学6年生の時に迎えた1971年の「世紀の火星大接近」を、以前書いた60mm屈折

経緯台で堪能した後、「次の同規模の超大接近は、2003年、その次が2018年...」

と、遠い未来を想像もつかない、と当時は思ったのが、もう全て過去のことになり

ました。2003年には無理でも、2018年にはもしかしたら地上から火星を眺めている

のではないのかも、とは思ったものでした。

(1973年のオイルショック不況前の未来予想では、1985年火星人類到達、その後、

21世紀幕開けに宇宙移民なども語られたものでした。)

 

その2003年には望遠鏡の低価格化に後押しされて、大学時代あたりからずっと

ほぼ開店休業状態だった月・惑星撮影趣味を復活しました。

 

http://sigkam.web.fc2.com/hoops04/html/ginji.htm

 

 

その展開を予想もしなかったため、星見撮影には全く不向きの、大阪平野の

夜景を堪能する目的での東向きベランダ物件に終の棲家を定めたことで、

その後いろいろと不便が続きました。

 

2018年は自宅で迎えるどころか、理不尽で甲斐もなかった関東幽閉中で迎え、

これから好機に頑張ろうとした矢先、火星全球を覆う大黄雲で、C8クラスでは

全く模様を残すことができず、不完全燃焼のまま終わりました。

 

その2年2か月後のあくまで次善の機会、それが今年、2020年の準大接近です。

これから2年2か月ごとの接近は、最接近日でも徐々に小さくなり、次の2018年

クラスの超大接近は2035年です。

 

その時、もう76歳。架台と三脚で10kg以上。望遠鏡が10kg未満。そんな機材を

撮影の都度、設営する未来は、きっと幼少時の私が、2018年の自身を想像

できなかったのと同じく、今は想像もできません。

 

そういう意味で今年の火星は、人生最後に臨む好機と言えるのでした。

 

まあ今年の準大接近も終わった訳ではなくて、ピークを越えたところなので

これまでと同じだけ愉しめる、とも言えます。が、どんどん火星が小さく遠くなって

行くさまは、そういうことを含めて寂しさもあるでしょう。

 

そんな夜でしたが、気流は大荒れで感慨にふけるゆとりもありませんでした。

 

大口径オーナー氏がC8と同クラス口径で撮影した惑星像も、私が渾身込めて

仕上げた惑星像より遥かに詳細が写り、見映えがあるのは何故なのか、

問題点を見つけては、逐一解決して来ました。

しかし一応の満足を得た今でも、やはりどこか差異があると感じます。

どこか絵画調の仕上がりは2003年当時からの自身の特徴なので、そこは

無理繰り他に習おうとは考えなくなりましたが...。

 

そんな経緯もあってか、今回の撮影前に、C8の焦点内外像をチェックしました。

指で簡単に修正ネジを回せる「Bob's Knobs」こそが、頻繁に光軸がズレる根本

原因だと分かって元のボルトに戻した後、一度も光軸を確認していなかったのでした。

 

http://sigkam.web.fc2.com/hoops04/html/ginji_22.htm

 

 

2004年末からのことです。ほぼ16年です。

「光軸が狂っていない筈がない。簡単に光軸がズレるので有名なC8だし。」と

今までの苦労を否定するかのような逆向きの期待もありました。

 

が、全く問題ありませんでした。今ではファインダーの調整時と夜景観望にしか

使わない、古い方のLV8-24mmZoomにコリメート法接続で、FinepixF31fdを使い

状態を撮っておきました。古い接眼鏡内のゴミにフォーカスが当たって汚い画像

ながら、焦点を外して同心円リングは完璧に近いバウムクーヘン状態でした。

この状態からピントを絞り込んで行っても、同心円のズレなどは見当たりません。

16年、私のC8の光軸は微動もしなかったのでした。

 

  

なら、画質の差は、山頂や平地より気流の影響を受けると言われる山の中腹で、

集合住宅の生活排熱を避けられない撮影環境にだけ原因があるのでしょうか。

(まあ技術的な何かがまだ欠けているという懸念も皆無ではないですが。)

 

前置きが長くなりました。まあ記念日の前説みたいなもので...。

とにかく回避できることは改めて全て排除しての撮影開始です。

  

 

「Quick Align」で初期設定を抜けるものの、安定稼働までに文字化け表示は多発

しました。既にGPSオプションは外しており、表示不良や動作の問題の根本は

そちらではなく、架台本体にあることは今や明白です。

12月のEQ5赤道儀の到着まで、架台が持ってくれれば良いなあと願うばかりです。

 

前夜の取得コマ数/秒のガタ落ちの再発はありませんでした。

 

追尾は比較的安定していましたが、手放しでFireCapture画面の気流安定を

待機できるほどではなく、写野の端に火星を導入したら、写野を火星が流れて

出て行く間に、コマ数確保優先でただちに撮影開始しないといけませんでした。

 

動画は8本、現場で何本か消去しながら、もうSSDの残量が余裕ありません。

今までの良かった成果の動画を1機会あたり1本は残して来たためです。

この先、だましだましでは使っていけませんので、同じ1TBのSSDを後日発注

しました。(4000円ほど一年前より安くなっていました)

 

気流はかなり荒れていて、南極冠がモニタで確認できるのは一瞬で、それを

頼りにピントを追い込むのも難しかったです。

 

最良の成果はこれでした。

32230コマ取得からの50%選別での仕上がりです。

周囲のみ800×600pixels から 640×480pixelsにトリミングしていますが、像自体は

原画像の大きさのままです。ちょっと締まらないです。

 

  

若干、縮小してみました。このサイズならどうにか鑑賞にたえるでしょうか。

 

   

撮影途中には私が最も好む位相の月が昇って来ましたが、コリメート法撮影のために

ピント位置を変えたり、ETX-90など他システムを持ち出すなどのゆとりはありません

でした。好みの位相の月はまた火星が見えなくなったらでも月1回、戻って来ます。

 

  

しかしピントの状態を確認するためにも撮影の裏で走らせた後処理で出て来た像には

「もうやめよう」とも思いましたが...(^^;)。

 

これでも34884コマも取得しての80%選別での仕上がりです。仰角も決して小さく

無かったのでしたが...。

 

 

しかしその後も続けて良かったです。

撮影している時にはモニタの状態では分からないのですが、徐々に像質は良く

なって来ていたのでした。時系列に並べていますので、自転による模様の動きも

分かります。

 

33190コマ取得からの80%選別での仕上がりです。

 

 

40380コマ取得からの80%選別での仕上がりです。

 

 

次の2画像は、同じ動画データ39072コマからのDeNoiseAI処理とLow-Light処理の

差のようです。一気に処理して、後でPhotoshop画面上で成果をオーディションして

見映えの良いものを残したものを、記事に採用するので、それから撮像時のデータ

を見る流れなので、記事上で画像とデータを照合するのも骨が折れます。

 

 

  

このサイズでは大して差は分かりませんでした(^^;)。

 

最初の縮小画像に地名を添えます。

  

 

最接近日といえど、前後数日くらいは視直径はあまり変わらず、その記念日性は

本来薄いものの、冒頭の記したこれまでを考えると、もう少し締まった仕上がりに

なったら良かったのに、という残念も否めません。

 

解決できる諸問題は全て解決して臨んだ筈でした。

全ては気流次第ということです。悪天よりはましでしょうが、残念感は残りました。 

 

 

 

ご覧いただきありがとうございます。