(2020/09/27 記)

 

https://ameblo.jp/enigmind/entry-12625604758.html

 

 

この記事の末尾で残念な仕上がりのまま終わった木星像について、ご常連様のKENさん

から、フリーツールで有効なものをお勧めいただきました。

 

先鋭度では他の画像が圧倒的でしたが、この画像の元データはコマ数も多く、大赤班

の色合いも良く出ていて、木星像が画面の左上端から出て行ってしまったために

生じた、スタック処理後のキズ(画面左上端の形状の積み重ね)が惜しまれます。

  

 

PIPP(Planetary Image PreProcessor)というもので、取得した惑星動画データから

不要なコマを自動選別で排除するものです。不要なコマだけを動画として残すこと

もできるようです。(それで排除の判断を確認できるということでしょうか。)

 

日本語解説ページからのプログラムダウンロードは、なぜかGoogleがアクセス拒否

(OSやウイルス駆除ソフトでなく、Chromeがそのような挙動をするのは初めて

見ました)するので驚かされましたが、オリジナルサイトからの入手が可能でした。

 

http://docs.sakuraweb.com/PIPPmanual_JP-web/manual

 

 

https://sites.google.com/site/astropipp/downloads

 

  

(ん...やっぱりこのBOX、邪魔だなー...。↑)

 

早速使ってみましたが、想定していた通常の動画編集ソフトウエアのようなイメージ

(動画表示ウインドウを見ながら取捨選択の範囲指定をする)と違って戸惑います。

 

 

日本語マニュアルを見ても、オリジナルサイトの説明ページを日本語訳しただけの

ようで、個々の機能説明が主体でつかみにくかったですが、他の動画プレイヤーで

一旦木星が写野の上に消えるところまでの時間を計って、おおよそ210lコマ/秒で

取得したデータであることから、先頭から6000コマを切り出してみました。

 

 

出力結果として得た新しい動画データは、Registax6でも入力できる動画サイズとなり、

スタックからの処理を試しました。しかしAS!3での処理のほうが、色相や明度の最適化

が良かったので、いつも通り、AS!3でのスタック→Registax6でのWavelet処理→

DeNoiseAIでのノイズ除去とシャープネス増強の上、Photoshop Elementsで階調と

色相を整える仕上がりにしました。

 

で、いよいよDeNoiseAIのお試し期間が終わったので、購入しないとなあ、と

立ち上げてみると、確かにその旨の表示が出たのですが、ログインボタンが

あり、お試し版入手の際に登録したメールアドレスと、その時に来たメールに

あるパスワードを入れると、なんと「残り1日(0日まで使えたので2日間有効?)」

に戻り、再び使えました。この日はとりあえずそのモードで使うことにしました。

 

ファインダーで木星を粗く導入(そうしないとNexStar架台ガタのために木星が

ファインダー中心に全然戻って来ません)した後、この動画の取得時に、

微動レートを、写野からせめて「↓」「→」「←」方向への逸脱を防ぐために、

小さい値(微細に動く)に変更しなかったようです。

それで水平方向に一気に木星が飛び出してしまったのを追いかけた経過から、

真ん中の長い時間、何も写っていない部分が元の動画データにはありました。

 

その無効部分を排除出来ると、有効な部分を残した小さい動画データを利用・保存

できることになります。

  

先頭6000コマのうち、更に木星が写野から欠けた4コマが自動排除されていました。

 

Wavelet処理の強弱とDeNoiseAIのパラメタの組合せをいろいろ調整して、ベストは

このようになりました。5996コマからの仕上がりです。

 

 

木星が画面左上端にかかった不良コマ由来のキズは消えて、強調処理と階調調整を

何度も追い込めたこともあり、色相や解像感は上がりました。良かったです。

が、輪郭のユルさを見ると、もう少しコマ数があったなら、とは思ってしまいます。

  

そこで動画中心部の不要箇所を排除して両端の有効コマを活かした動画をPIPPで

生成しました。

そうすれば、先頭5996コマに加えて、無効部分の後に再び木星像を写野に捉えた

区間のコマを処理できるようになる筈です。

 

  

 

元のデータが40388コマ、そこから木星の全く無いコマ26731コマ、部分的に木星が

外れたコマ2988コマを自動判別・除去されて残った短縮動画10669コマからの

仕上がりです。

不要部がない筈なので、処理後のデータを100%採用でAS!3処理して仕上げました。

 

しかし、今度は木星の自転のせいでしょうか。無効時間の前後で模様が僅かに動いた

ためか、5996コマからの仕上がりより詳細が流れた感じに不鮮明になったようです。

 

 

AS!3で同時に生成した輪郭強調処理した方のザラザラなTIFFを使って、DeNoiseAIの

ノイズ処理でそのザラザラを強めに消してみると、雰囲気は変わり、大赤班周辺の

詳細感と色相は良く出ましたが、どこか手書きスケッチのように不自然です。

今シーズンより前ならこれでも間違いなく史上最高レベルと感じたでしょうけれど...。

 

  

そこでまた再スタック可能状態で残っていたAS!3で80%採用の処理をして、

Wavelet処理とDeNoiseAIの案配をいろいろ工夫してみました。

自動判別での処理結果、新しい動画データが近似した降順にコマが整理されている

なら、そこから20%を捨てることで、自転での模様ズレの大きいコマを排除できるか、

と期待したのでした。

 

主にRegistax6のWavelet処理の加減による差ですが、2通りの仕上がりを得ました。

 

 

  

強調処理が緩いほうが自然な仕上がりですが、強いほうの詳細感も捨てきれません。

100%採用の結果より、幾分、自転による流れが減ったのか、良くなったように

思えます。

 

95%採用でも同様に試行錯誤して処理してみました。僅かに80%採用より微細な白斑が

解像しているようです。大赤班の周囲に沿って曲がった白溝の構造などもしっかり

出ていて、今回の復旧の意義はあったかと思います。

 

 

しかしやはりコマ数不足なのでしょう。大口径での人工天体近接画像クラス

のビビッドな写実的仕上がりには遠いです。

 

本来、撮影時に充分なコマ数を安定した気流環境で取得することがベストでは

ありますが、今回のようなアクシデントの動画データも諦めることなく、有効に

使えることが確認できて、有意義でした。

 

KENさん、いつもありがとうございます。

 

PIPPは複数の動画データを結合もできるようで、短時間で自転により模様ズレが

目立ってしまう木星と違って、火星や土星では短い動画データしか得られない状況

を補ってくれるでしょう。AS!3がRegistax6のように複数の動画を纏めて処理できない

(バッチ処理のようにそれぞれ独立して処理されてしまいます)ので、このPIPPの

仕様は私のような不満足な追尾撮影環境には絶妙の補強になります。

 

....赤道儀化の判断は不要だったか??

 

まあ赤道儀化に関しては、いずれはカックン問題と肝心な瞬間の追尾精度不良が

ストレス蓄積になるのを、現時点の追加投資で済むなら、きっと悪いことではない

と考えます。(....と思うしかありません。)

 

 

 

ご覧いただきありがとうございます。