(2020/09/15 記)

 

https://ameblo.jp/enigmind/entry-12623318960.html

 

先の記事でこのところのNexStar架台の急な追尾精度低下に関しての原因を

突き止めたので、対策により改善ができているかを早々に試したく、

2020/09/08(火)の夜、雲が消長して来たのを確認して撮影準備に入りました。

 

今回も設置の水平には慎重を期しました。

加えて、設置後の設定初期化の時に、日付が「01/21/01」に戻っていたのを

手動で訂正しました。

 

  

うお座フォマルハウトなど、実際に空に見えている恒星が基準星候補にきちんと

表示されました。ただこの時期の22時頃、東向きベランダからは目立った明るい

恒星が無く、フォマルハウトに続く2つ目の基準星がどれも実際にはベランダから

見えなかったので、こぐま座ポラリス(北極星)を選んで、おおよそ設定初期に

北を検出していた方向を向くので、それでOKにしました。

 

「Planet」ボタンを押すと「Mars」が候補に正しく出て、それを指定すると完全では

ありませんでしたが、ほぼ近くにC8の向きが導入されました。

ほぼ実際の空と架台が計算する空が合致していて、性能通りの追尾ができる期待

がありました。

 

内蔵電池切れだけでなく、想定している予報データが賞味期限切れを起こしている

(2020年まで想定したデータを内蔵していない)懸念も僅かにありましたが、それは

杞憂に終わってよかったです。

 

写野に火星を5分ほどは留められることが出来ました。

先日までの追尾精度の復活です。安堵しました。

 

20000コマ前後から50000コマ近くの動画データ取得が出来ましたので、今後の

ためにいろいろな時間の長さでデータ取得を心がけました。

最後は1TBの外付けSSDが満杯になり、去年の木星データなどを削除して

撮影を進めました。

 

  

ただ台風10号の影響が残っているのか、ピントの脈動は大きく、先日改善した

合焦スクリューの工夫をもってしても、きちんとその脈動の中心に置けているか

確信はなかなか持てませんでした。

 

今回、全部で32本の動画データを取得しました。

それに対して、AS!3で95%データ採用と60%データ採用の多数枚重ね処理後

出力されるノーマルTIFF静止画と、エンハンス付TIFF静止画の出力の4通り、

全128のTIFFデータを Registax6 で Wavelet処理して、そのTIFF出力を

DeNoiseAI にかけて優劣を比較しました。

 

追尾精度低下の改善確認もあって、仰角が不充分な時間帯から撮影を開始した

こともあるものの、撮影が終わっていわゆる「黄金位相」(ヘラス盆地、大シュルチス、

子午線湾が揃った小望遠鏡でも見映えのある模様の位相を勝手に私が名付けた

ものです)に近かった早めの時間帯の画像から後処理を始めたのでしたが、

その結果はモヤモヤで非常にがっかりしました。

 

これでも24914コマからの95%採用分の仕上がりです。データ量としては充分あるか

と考えます。撮影環境を含めた気流のせいなのか、C8の光学性能が落ちたのか...。

  

 

そのうち、見映えのある仕上がりも出て来ました。18468コマからの95%採用処理分です。

 

  

過去の成果と比べてこれでも最高水準と言えたかもしれません。

しかしそれでは一年前にASI385MCを導入しなくても、QHY-5LIIやToUCamProIIの

ままでもよかったのでした。

 

ようやく最後のデータになって、目を見張る成果に至りました。

17612コマからの60%採用での仕上がりです。

 

火星の自転で既に黄金位相ではなくなってしまっているものの、先鋭度、質感、

全てが私の過去から通して最高水準の出来です。

   

  

地名を書き入れました。

 

  

大口径での素晴らしい成果を収められている「人工天体からの近接画像レベル」の

質感には届きませんが、8インチ口径機でここまで撮れれば満足で、撮影に頑張った

甲斐があります。

 

またこのことで、C8の光学性能が劣化したのではないことを確認できました。

 

同じピント位置、同じ撮影場所、同じ夜、同じ雲のからみ、同じ後処理で、これだけの

仕上がりの差が出るのでした。

結論として言えることは、撮影場所が悪いということなのでした。

調理など生活排熱やエアコンの室外機による上昇気流がマンションを立ち昇って

来る影響が酷いのでしょう。下にあるバスロータリーにバスが来て、また出て行く

だけでその排気の影響も8階にある自宅ベランダに影響します。

 

きっと武庫川河川敷や山の中など生活排熱が無いところに少し出向けば、多くの

身近な乱気流は排除できるのでしょう。その上で手の届かない上空気流の乱れに

悩まされるというのはあるでしょうが、手を打てるところを打ってない、との側面は

否めません。

が、なかなか物騒な世相に自宅を離れての撮影にはなかなか足が向きません。

 

数多く撮影するしかないのでしょう。撮影時に「明らかに気流が落ち着いた」とか

動画モニタで分かればよいのですが、それを識別できる感じでもないのでした。

今回のように沢山撮って、まぐれ当たりで気流の良い瞬間を捉えているかどうか

に賭けるしかないのかもしれません。

 

追尾が安定したことで、ようやく初めて接眼鏡 LV8-24mmZoom の拡大倍率を

上げての撮影をしました。ピントの脈動もあり、24mmから18mmの間に上げた

程度でしたが。露出もやや遅めに調整しましたが、時間当たりの取得コマ数に

影響は出ませんでした。

 

  

DeNoiseAIに救われたところがありますが、詳細はよく出ています。

しかし、輪郭線のダブリでも分かるように、先鋭度は落ちています。

倍率を上げ像が大きくなった分、800×600pixelsのROIで、火星が写野から出て行く

時間が早くなり、取得コマ数が落ちるのでした。

これは12966コマ取得の95%採用のものです。60%採用のものもあまり変わりません

でした。

  

  

LV8-24mmZoom の倍率を18mm位置まで上げて再び露出を調整しました。

取得コマ数はやはり222コマ程度で影響はなかったようです。

 

   

 

やはりこの気流状態では過剰倍率だったようです。

黄金位相がまだ見えていることでも分かる通り、仰角が小さい試運転時間帯での

撮影で、追尾精度の復活もあって、25695コマも何とか写野に収めたものでしたが、

そこからの60%採用でこの仕上がりでした。

 

時間帯が早いうちのテスト撮影がてらのものは、安定して長時間追尾が出来て

いたものの、撮影時刻が24時に近くなり、火星の仰角が充分大きくなるにつれ、

また写野に火星を留めておくのが1分少しに減って来ました。

ファインダーを使って慎重に写野の底辺に火星を誘導したら、もう追尾の加減速は

せず、自然に火星が写野に入って来るのを待つ工夫もしましたが、火星はふらふらと

写野上辺の上に逃げて行きます。

 

これは再び架台の追尾精度に問題が出たのではなく、ASI385MCの重量が重い

ため、C8が架台の意図する追尾に加え、鏡筒の接眼鏡側を想定以上に徐々に

上げてしまい、鏡筒の先の空間が上がって行くのと相対的に火星は下に逃げて

行き、結果、倒立像では火星が写野の上方に逃げてしまうのだ、と理解しました。

 

火星の仰角が大きくなった分、鏡筒が斜めになって行き、その傾向が加速する

のだと考えます。

追尾していない時、例えば日中に重量バランスをテストするなどしている時には

架台は動いてませんので、あまりその重量の影響は受けません。指で鏡筒を

押しても引いても勝手に動くことはありません。

しかし、なまじっか微動で架台が追尾している時には、その重量が追尾加速に

作用するようでした。

 

追尾性能が低下した原因はこの2つが混ざり合っていたのが、内蔵時計の

故障に対処できたことで、仰角による重量バランスの影響も初めて確認できた

ということでした。

 

C8の光学性能に問題は無かったと分かったので、追尾性能もどうにか復活した

とは言え、撮影好機に入った仰角での撮影で充分なコマ数を得られないなら、

やはりここはC8をNexStar架台から別の赤道儀に換装を考えたほうが良い

のでしょうか...。

 

時間帯が遅くなっての生活排熱の減少という要素もあるのでしょうが、仰角が

充分大きくなった最後の動画データから最優秀の画像を得た、時間帯が進む

ごとに撮像コマ数が減っても画質がどんどん良くなって来たという当夜の結果は

軽視できないと考えているのでした。

 

先日、アリガタプレートに関して足踏み状態になったので、一旦、その検討を

棚上げにしたところでしたが、検討を再開させます。

 

 

 

ご覧いただきありがとうございます。