日英の人称について | 英語の世界観

英語の世界観

私達はことばを通して世界を見ている。そして使うことばによって、見えてくる世界が異なることがある。英語の世界観とはどのような世界であろうか。普段意識しないことばから、その世界観を探りたい。現在ときどきロンドン記事アップ中♪

今日は人称について見てみたいと思います。

英語では一人称単数を表すのは基本的に"I"だけです。
それに対して日本語は多くあります。
「私」「僕」「俺」「自分」「我輩」「我」「わし」「拙者」などなど。

二人称単数は英語では"you"が基本です。"thou"という古い言い方もありますが、詩などに出てくるだけで、日常使いません。
日本語は「あなた」「君」「お前」「おたく」「おぬし」など多くあります。

日本語は時代によって言い方が変わっているようです。
現在では自分のことを「我輩」というのはデーモン小暮閣下?ぐらいしかいなく、一般人は日常では使いません。でも意味は分かります。

でも英語は基本的に"I"と"you"だけです。

この日英の数の違いでもって、言語の優越はつけてはいけません。そもそも言語に優越などないのです。得意不得意などはあるかもしれませんが...。

先日東京都知事が「フランス語は数が数えられない」という発言で裁判になりました。結果は、訴えは退かれましたが、言語学的に見て言語に優越はつけられないでしょう。

話を戻すと、"I"は必ずしも「私」にはならないということです。
文脈でもって一人称単数の日本語訳を選ばなければならないのです。小さな男の子がいっているなら「僕」とすればいいし、学識のある老人がいっているなら「わし」などにすれば、日本語として雰囲気が出てくるでしょう。また、"you"も同じで、必ずしも「あなた」にはならないのです。場合によっては訳さない方が日本語として自然な時もあります。

ということなので、"I"=「私」、"you"=「あなた」と決めつけないで読むと、もう少し自然に文が読めるようになるでしょう。

もう一つ付け加えると、生徒に"They are~."という文を訳してもらうと、大体「彼らは~」となります。でも"they"は男性女性どちらも表すので、いつも「彼らは」と訳すのはよくないかもしれません。文脈があれば分かりますが、もし文脈がない時でも、男女両方の可能性があるということを頭にいれておいて、「彼ら」「彼女ら」のどちらかで訳すといいでしょう。

この日英の人称の違いは面白いので、また取り上げたいと思います。