"pie in the sky" | 英語の世界観

英語の世界観

私達はことばを通して世界を見ている。そして使うことばによって、見えてくる世界が異なることがある。英語の世界観とはどのような世界であろうか。普段意識しないことばから、その世界観を探りたい。現在ときどきロンドン記事アップ中♪

今回は"pie in the sky"という表現を取り上げたいと思います。

どのような意味か想像できますか?

直訳だと「空の(中の)パイ」。

これじゃあ意味が分かりません。
だいたいこのような時は、表現が一つの熟語であることが多いです。今回の"pie in the sky"も熟語です。どのような意味かいつものようにロングマン英英辞典(LDCE)で確認したいと思います。

something good that someone is promising or suggesting, but which you do not think will happen

大体の意味は、「誰かが約束したり示した何かよいことで、でも起こるとは思わないこと」といった内容です。日本語訳だと「空約束」や「絵に描いた餅」などとなります。

ではなんで"pie in the sky"という表現なのでしょうか?

"pie"は、"magpie"(カササギ)を省略したものでもあります。カササギは小さなものを何でも集めてくる習性を持っています。このことから"magpie"には「カササギ」の他に、「何でも集めたがる人」という意味があります。そして「関係のないものまで集める」から「起こらなそうなことも約束する」というつながりから、"magpie"には「おしゃべりな人」という意味もあります。こういったつながりから、「空約束」のことを"pie in the sky"と表現するようになったのではないでしょうか。一つの説としてこういったことが考えられます。
また、パイにはもともといろいろなものをつめる習慣があったことと、カササギの習性をあわせたものが由来とする説もあります。

一応ロングマン英英辞典(LDCE)から例文をあげておきます。

The idea of full employment is just pie in the sky.

この例文は、「完全雇用という考えは、ただの空約束だ」という意味になります。


今回は"pie in the sky"という表現を見ましたが、こういった何気ない表現からカササギの習性も分かるのは面白いことです。表現の面白さ、ことばの奥深さを感じました。熟語、イディオムには、そのことばの文化が背後にあるので、英語的な考え方を知る上で興味深いものだと思います。