次の危機が近づきつつあるー8 新興国の減速が鮮明になりつつある | ロンドンで怠惰な生活を送りながら日本を思ふ 「東京編」

ロンドンで怠惰な生活を送りながら日本を思ふ 「東京編」

ロンドン・東京そしてNYといつの間にかいろんなところを転々とそしてまた東京に。海外なんて全く興味なかったし今もないという予想外の人生でした。今は東京に戻りしばらくお休みしていましたが少しずつ再開してみようかと思ってます。よろしくお願いします

このシリーズを始めてからもいろいろときな臭い動きが続いている。前回 は資源関連の企業ならびに資源国が次の危機の源泉になる可能性を書いた。 そうこうしているうちに中国が人民元の切り下げを行いこれが世界市場を揺るがす事態が起きた。

人民元はアメリカのドルにほぼ連動する形で動いてきたが今後は独自の動きになるだろう。いや、そもそも多くの新興国や資源国通貨(いや日本やユーロなどの先進国もだが)は米ドルに対して大きく売られている(価値が減少しているので)ドルに連動している人民元は大幅に割高に設定されてきたのである。その結果中国の輸出は伸び悩んできた。市場では今後10%以上の人民元の下落を予測する声もあり、そうすれば今まで過大評価された人民元で恩恵を受けてきた輸出国、ならびに過大評価された人民元で観光をしてその消費にあてこんでいた観光国の経済に大きな影響を及ぼすことは間違いないだろう。

株価急落と必死の株価対策。人民元の急激な切り下げと中国経済が相当うまくいってないことが矢継ぎ早の対応からよくわかる。

人民元下落は同時に中国の購買力を低下させるからオーストラリアやブラジルといった資源輸出国にとっては大きなマイナスであることは言うまでもない。

問題は中国だけに限らない。円安のせいか韓国経済はまるで駄目だ。トルコも南アフリカもいまいち。ロシアもオイル安で火の車。ブラジルも景気後退局面に入っている。前回までに書いた通り世界経済の成長ドライバーになるはずであった新興国はほぼ軒並み惨憺たる状態に落ちいりつつあるのである。

それだけであればまあそこまで問題ともいえないかもしれない。

だが、日本企業のみならず先進国の多くの企業が次の成長先は新興国だと決め打って大きな投資を行ってきたことを忘れてはならないだろう。アメリカの経済成長が緩やかでも、日本の経済成長が緩やかでも株が上昇してきた側面には企業の海外進出の活発化があったことも一因である。

そう考えるとここまでうまくやってきた先進国企業の業績にも赤信号がともることは誰でもわかることだ。

さらに、新興国も各国中銀が金融緩和によって作り出したバブル相場に乗じて借り入れを増やしてきた。
下の図にある通り新興国の企業部門の借入額は過去最高の水準に達している。




IIF より)

赤が非金融企業の借入額である。また自国通貨ではなく米ドル建ての債務もかなり多い。

経済の想定以上の低迷、コモデティ価格低下や景気低迷によるインフレ率の低下、ドル高などが今後多くの新興国企業ならびに新興国に重くのしかかるだろう。

もちろん、合理的な範囲での過剰投資であれば調整は軽微なものにとどまるだろう。だが、おそらく金融緩和によって作られたバブルと新興国成長の幻想によってかなりの過剰投資が行われたと推測される。

投資する側からすれば、日本人の多くがトルコリアやブラジルレアルに投資していると思うが、ただ利回りが高ければいいのだという安易な投資が相当多かったことが想像される。それだけ考えてもどれだか無謀な投資が行われてきたかがわかるだろう。

おそらく行きつく先はアジア通貨危機以上の新興国危機である可能性が高いと僕は思っているし、場合によって数か月以内にその危機が到来する可能性も十分にあるだろう。