欧米投資銀行が日本化?に見る誤解 | ロンドンで怠惰な生活を送りながら日本を思ふ 「東京編」

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ロンドン・東京そしてNYといつの間にかいろんなところを転々とそしてまた東京に。海外なんて全く興味なかったし今もないという予想外の人生でした。今は東京に戻りしばらくお休みしていましたが少しずつ再開してみようかと思ってます。よろしくお願いします


ブロゴスを見ていてこんな記事を発見した。

日本化した外資系投資銀行

まあ、業界ではよく言われている話だ。ただ、藤沢氏の解説になんだか、個人的には違和感があるようなないような感じでもある。

経済学者や監督当局は、金融危機を引き起こしたひとつの理由はトレーダーのインセンティブ構造にあったと考えた。上手く儲ければ多額のボーナスを受け取り(概ね利益の5~10%程度がかつての相場であった)、失敗しても最悪の場合でも首になるだけというトレーダーの報酬体系はコール・オプションそのものである。ボラティリティを上げれば上げるほどオプションの価値は高まる ので、リスクは取れば取るほどいいことになる。これが過剰なリスクテイクを誘発したといわれた。

藤沢氏によると経済学者や監督当局が一丸となってこのことを問題視しているというが、実際には報酬体系はリーマンショックの原因ではないという考え方や研究も結構出ている。だから、経済学者が・・・というよりは人気を取りたい政治家が金融機関への公的資金注入とのバーターでこのような動きをはじめたと考えるほうが正しいとぼくは思う。(ちなみに早い時期に個人的にも報酬体系がリーマンショックを招いたというのは疑わしいという記事を書いた→金融機関の職員や経営者の報酬を規制しろだって?

たしかに報酬に関する規制を行うという政策は間違いであると僕も考えている。それでは規制があるからという面だけで欧米の投資銀行が基本給部分を増やしボーナスの支払いの分割をより強めているのだろうか?

たとえば、リーマンショックの前からボーナスの一部(もしくは多くの部分)を株式で支払い取り崩しができるのは数年後からという契約も多かったはずだ。経営側には常に従業員をより自社で働かせ、自社の業績を上げるために業務を行うようにさせるインセンティブが存在する。

そして、今回のリーマンショックを受けて、僕が聞くところではより適切なインセンティブを従業員に与えるために経営幹部もまたそのような報酬制度のあり方を支持している面もあるというのである。そして、業界内の労働市場の流動性があまりに高まり簡単に人が動く状況よりも、自分の会社に長く居てもらうことで愛社精神のようなものを少しは持たさなければならないと思っているようである。何億円も払って人を外から取るよりは新卒で雇ったやつをいかにやめさせずに育てていくかにフォーカスが移っているという話をちらほら聞く。

だから、基本給部分を増やしボーナスは分割+株式に連動させるという報酬制度に変更していくことは、経営者のインセンティブにも実はマッチしている可能性はある。皮肉にも彼自身がトレーダーはとにかく会社に残ろうとするし(未払いのボーナスを取り返さなければいけない)と書いているように見事に同じ会社に長くとどまらせるインセンティブを与えることに成功しているようである。また、業界自体の不景気が労働者サイドの価格交渉力を弱め、経営者が望ましいと考える報酬体系を受け入れざるを得ない状況にしているのだろう。

基本給の引き上げと、過去のボーナスのスライスが毎年毎年重なりあって支払われる状況は、伝統的な日本企業と同様の年功賃金そのものになった。また、これは会社から見れば契約上必ず支払わなければいけないもので、以前の薄い基本給と変動幅の大きいボーナスという組み合わせの時と比べて、人件費を会社の業績に合わせて変動させる自由を大幅に奪い取り、経営を非常に不安定なものとした。

藤沢氏が非常に残念なのはいつも日本対欧米だとかアメリカという紋切り型の物事の見方しかしないところである。日本の会社でもより基本給が高いところもあれば、よりボーナスにボラティリティがあるところもある。たとえば、保険のセールスのおばちゃん(失礼!)のように徹底した成果報酬の契約もある。また、実際には日本の会社はボーナスの変動幅が普通の欧米の事業会社に比べて大きいともされる。日本企業の多くはボーナスの額を大胆に調整することで業績にあわせて人件費を調整し、そのことでリストラをさけてきたというのはよく知られた話である。

こうした過去に約束した報酬の支払いのために、新人の報酬水準は低いまま据え置かれることになった。これはまさに伝統的な日本の会社と全く同じ構造である。そして現在のように外資系投資銀行を取り巻く経済環境がますます厳しくなる中、耐え切れなくなり苦し紛れのリストラを断行せざるを得なくなったのだ。高名な経済学者が導入する規制というのは、多くの場合、思いがけない副作用をもたらし、往々にして本来の目的をかき消してしまう。「トレーダーのインセンティブを銀行の長期的な利益と一致させる」という高尚な理念が、このような結果になったことは大変興味深い。今や、外資系投資銀行業界は、市場の失敗と政府の失敗の宝庫となっているのだ。

藤沢氏は規制によって賃金の調整が行いにくくなったから、リストラを断行していると考えているらしいが、これは報酬制度とあまり関係はないはずだ。過去においても投資銀行は業績が悪くなればリストラを大胆に行ってきた。より重要なのは投資銀行業界も欧米の低成長長期化への懸念が強まる中で将来の収益見通しが立てづらくなっている点だ。それに加えて各種の規制が特に米国では議論されている。規制と低成長長期化の両面が投資銀行を苦しめていて、最早構造不況業種とすら言える有様だ。報酬規制がどう転ぼうとも、大胆なリストラが断行されるのは目に見えていた話である。

藤沢氏同様に金融機関への規制を強化すればよいという考え方には僕は反対だ。事前の規制は失敗に終わることが多いだろう。常に規制の逃れ道を規制をかけられる側は考えるので却って物事を不透明にし問題の所在が分からなくなる可能性は高いからだ。


しかし、金融機関が公共財であり、too big to failの名の下に公的資金注入の対象となりうるのであれば高額の報酬を抑制せよとの議論は成り立ちうる。(当の藤沢氏自身がなぜかこの考えを認めてしまっている。)個人的には銀行の果たす金融仲介機能というのはあまりに大げさに語られすぎているのではないか?と思っている。今や多くの企業は多様な資金調達手段を持っている時代である。金融機関の一つや二つくらいつぶしてしまってもいいのかもしれない。

いずれにしても、投資銀行業界が市場の失敗と政府の失敗の宝庫になっているとは思えない。そもそも、業界自体が構造不況業種とでも言うべき状態になっているというほうが適切な状態だろう。同じ業界に生きる人間としては残念だけど、そう認めざるを得ないだろう。

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