では、本日は増税は本当に問題なのかについて考えてみたい。
まず、この議論の際に出てくるのが「リカードの中立命題」である。すなわち、現在の政府による借り入れを伴った支出は人々に将来その債務の返済のための増税を想起させて人々の消費活動にマイナスの影響を与える。よって国債発行を伴った財政出動は長期的に見れば意味がない。というものである。
考えれば至極当たり前だし今の日本の状況に当てはまっている面もあるだろう。おそらく資産に余裕のある人ほど将来の増税に備えて貯蓄に励んでいるのではないだろうか?あるいは、残念なことに資産のある人ほど海外に脱出している(あるいは資産を海外に移している)のも事実だ。。。。
いずれにしてもリカードの中立命題が働くのであれば、国債を発行し赤字を先送りすることに何の意味もないのである。
また、一部の人は日本の「実質金利」は高すぎるとして、さらなる金融緩和を主張する。そう思うのならば、お金でジャブジャブにするのではなく、増税によって国債の返済を前倒しにし財政を健全化すればよい。そうすれば、日本国債の利回りは低下する可能性がある。そうすれば、実質金利が低下するので国債に投資されていたマネーがリスクアセットに投資されたり、借り入れ金利の低下や預金金利の低下が企業による投資行動を活発にする可能性がある。
また、将来の財政に対する見通しを早い段階でクリアーにすることは多くの人の将来にわたった貯蓄や消費の計画をクリアーにする。そうすれば、不透明感が払拭されることで消費が活発化する可能性もあるだろう。将来の予見性を高めることは成長率のアップに少なからず貢献する。
また、もちろん増税はただの増税であってはならない。大胆な予算の組み替えとその前のムダ削減を伴う必要がある。政府によるムダな支出は削減されれば、政府活動によってクラウディング・アウトされていた民間の活動が活発になる可能性は高い。
また、おそらく野田首相の頭の中にもあるだろうが、絶対に必要なのは税の簡素化である。今の税制は複雑すぎる。そして、その結果、節税や脱税行為はもちろんのこと、いろいろな面で人間のインセンティブをゆがめて社会に非効率をもたらしている。
節税対策をウリにして儲けている会社や人は多いだろう。しかし、それはまずもって貴重な経済資源の無駄遣いである。それらの人々がもっと本当の意味で生産性の高い仕事についてくれればもっと社会はよくなるだろう。またクライアント企業(個人でもよい)に無駄な時間とお金をとらせているのも間違いない。
もちろん、繰り返すが僕が支持するのはとりあえず収入が足りないからの増税ではない。そんなことをしていたら本当にこの国の財政は歯止めが利かなくなって破綻するだろう。(赤字国債発行も同じである)しかし、麻生元首相が嘲笑したようにムダ削減で20兆円以上にも及ぶプライマリーバランスの赤字をなくすることは不可能である。また、いかに社会福祉の予算を削ればいいといっても残念ながら政治は妥協の産物だからゼロにするわけにもいかない。(それができるのは国家財政が本当に破綻の淵に瀕したときだけだろう。)
また、経済成長をすればいいのだ!という主張もあるが欧米の様子を見るにもう一発世界的な不景気が来てもおかしくない。また、当ブログではいつも書いているが先進国は残念ながら長い低成長のトンネルの中に入ったようにも見える。いかに規制緩和などでサプライサイドを改革しようとも成長率を劇的に押し上げることは難しいだろう。増税は諸刃の刃であることは間違いないが、上記のような状況を考え楽観論を排するならば現実的に財政を再建するには「どこかの時点での」増税しかない。
そして、少なくとも鳩山や菅直人よりは野田首相はそのことをわかっているはずだ。また、経済の苦境が続けばどこかでおかしな財政拡大派・赤字国債発行万歳の人間が首相になるかもしれない。そのまえに財政再建の道をつけておくことが必要である。だから、このタイミングがちょうどよいと僕は考えるのである。
ビジョンを示した上で大胆な予算の組み替えと税の簡素化を組み合わせて消費税中心の増税が必要だしそれは、日本経済にとって大きなプラスになる可能性は高い。少なくともマイナスにはならないだろう。だから、民主党は好きではないが、僕は野田首相には少しは期待しているし少し長く仕事をするチャンスを与えたいと思っているのである。本当に財政再建のための増税となるのか?今後の議論を見極めたい。
Twitterブログパーツ
にほんブログ村
&
株式会社オートウェイ