資本主義と自由 (日経BPクラシックス)
初めて読んだのはたしか大学生のときであった。一応、経済学部の学生ではあったこともあり、この本の主張にはすべて納得できたが、当時は「ふ~ん」という程度の感想しかなかった。そして、その内容もいつのまにか忘れてしまっていた。
先週末改めて読んでみたが、その内容は改めて素晴らしいと思ったし、普段から自分が主張していることとほぼ一致していた。そういうこともあってか数時間で一気に読み終わってしまった。
1962年に最初に出版された本著だが、多くの人が指摘するようにその提言する内容はあまりにも新しい。金融財政政策・所得再分配や社会福祉政策から教育のおける政府の役割まで、現代にも通用する、いや現代の大きくなりすぎた間違えた恩情主義に基づく政府を改革するために必要な主張が盛り込まれている。
当時はまだ社会主義に対する根拠のない憧憬が日本のみならず欧州・アメリカでも社会を支配した時代であったのだろう。そして、政府の役割が資本主義を信条とする国でも強調されていた時代といえよう。おそらく、それが後のアメリカの高インフレと低成長という状態につながったはずである。そのような誤った方向に向かいそうな時代の中で彼が、「経済的自由」の重要さを説いた本書はその後の多くの国家での政府の規模縮小・市場経済重視への政策の変化を見通したようにも思える。
彼の説く多くの政策は僕がいつも言っているようなことと大して変わらないので、ここではあえて紹介しない。
本書の秀逸は第一章になるといえる。それは、先週の記事で僕も書いたことでもあるが、「経済的自由こそが政治的自由」を保障するということである。国家による経済統制は翻って人間の「政治的自由」をも制限するという彼の主張はまさにそのとおりである。また、昔よく聞かれた言葉かもしれないが、「社会主義は目的は正しいがその手段が間違えている」との主張にも徹底的に批判を加えている。
また、資本主義社会では富の分配が不公平になるとの批判は世の中に多いが、まず資本主義社会ではない社会のほうが統計的に見ても富の分配は不平等であると説く。また、資本主義社会のほうが資本による所得よりも労働による所得が多くなるとの事実を示している。
いずれにしても、本書の主張する政策の内容は現代にも本当に通じるものである。政治を志す人、経済や政治を学んでいる学生の皆さんなどにぜひ読んでもらいたい。いや、必読といえる古典である。
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