ぽたっ……と、赤い雫が地に落ちた。
血が滴るナイフを持つのは小鳥遊宥香という少女。路地に追い詰めた獲物を見て、うっとりとしながらナイフを舐めた。
獲物のようなのは宥香の彼氏だった。腰が抜け、背中は壁に付きそうだ。
それでもなお、歩み寄る宥香から逃げるため、後ろへと這いずる。
「あはっ♪」
宥香は楽しげに笑い、足下に倒れる原形のなくなった女性の生首を蹴った。
血飛沫が少年の頬に散る。
「ひぃっ……!」
悲鳴があがると、宥香はしゃがんだ。じっと目を合わせる。
「あなたは私だけのモノなんだから……ね?」
真っ赤な水溜まりの上に二人きりという、異様な空間が出来上がっていた。
いや、正確には少年が宥香にナイショで付き合っていた女性の死体もある。
「あなたがすぐに浮気するから、ゴミ掃除が大変なんだぞっ!」
宥香は少年の上に乗り、鼻をつんっとつついた。
少年としてはこの瞬間に気絶でもしたいと願っただろう。だが、足を切り落とされた痛みでそれも叶わない。
宥香の声音はとても冷たく、そして心に響いた。
「あなたは誰にも渡さない……ずっとずっと私だけの……」
刹那に、銀のナイフが光った。
「…………夢?」
ベッドの上で目を開けたのは、太刀川礼という少年だった。
白で統一された保健室は、清潔感と安心でいっぱいだった。
ボーッとしたまま礼は虚空を掴む。すると、その手を両手で優しく包まれる。
「礼くん、やっと起きたんだぁ……っ」
隣を見ると、ベッドの脇で宥香が椅子に座っていた。
礼は思わず、夢を思い出した。迷わず手を払いのける。
血が滴るナイフを持つのは小鳥遊宥香という少女。路地に追い詰めた獲物を見て、うっとりとしながらナイフを舐めた。
獲物のようなのは宥香の彼氏だった。腰が抜け、背中は壁に付きそうだ。
それでもなお、歩み寄る宥香から逃げるため、後ろへと這いずる。
「あはっ♪」
宥香は楽しげに笑い、足下に倒れる原形のなくなった女性の生首を蹴った。
血飛沫が少年の頬に散る。
「ひぃっ……!」
悲鳴があがると、宥香はしゃがんだ。じっと目を合わせる。
「あなたは私だけのモノなんだから……ね?」
真っ赤な水溜まりの上に二人きりという、異様な空間が出来上がっていた。
いや、正確には少年が宥香にナイショで付き合っていた女性の死体もある。
「あなたがすぐに浮気するから、ゴミ掃除が大変なんだぞっ!」
宥香は少年の上に乗り、鼻をつんっとつついた。
少年としてはこの瞬間に気絶でもしたいと願っただろう。だが、足を切り落とされた痛みでそれも叶わない。
宥香の声音はとても冷たく、そして心に響いた。
「あなたは誰にも渡さない……ずっとずっと私だけの……」
刹那に、銀のナイフが光った。
「…………夢?」
ベッドの上で目を開けたのは、太刀川礼という少年だった。
白で統一された保健室は、清潔感と安心でいっぱいだった。
ボーッとしたまま礼は虚空を掴む。すると、その手を両手で優しく包まれる。
「礼くん、やっと起きたんだぁ……っ」
隣を見ると、ベッドの脇で宥香が椅子に座っていた。
礼は思わず、夢を思い出した。迷わず手を払いのける。
「なにを怖がってるの?」
宥香はたいして気にしていないかのように首を傾げた。
思わず礼はそっぽを向く。
「別に、なんでもないよ……」
意味深に思ったのか宥香は礼に顔を寄せた。
「誰かが君を困らせるの?殺していい?」
心底心配そうな表情ではあるものの、明らかに宥香は狂っていた。
礼は慌てて起き上がると、首を横に振った。
「ほら、もう教室に戻ろう」
礼が宥香の手をとると、宥香は頬を真っ赤に染め、満面の笑みになった。
礼の腕には出血するほどの傷跡ができたのか、大量の包帯が巻きついていた。
保健室には血のついたナイフと、包帯、そして……腐った足のようなものが残された。
by紫花