本日は「宗教」である。

 

(2020/05/25付ブログを添削)

 

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宗教の中でも最も我々の心に

影響を及ぼしたのは

神道と仏教である。

 

神道は日本古来からのもの

なので中身は知らなくても

何となく認識できるだろう。

 

なので、本日は仏教に

焦点をあてる。

 

日本の仏教は基本的に

大乗仏教である。

 

そして、

その中から真言宗や浄土真宗や

日蓮宗や禅宗が出てきた。

 

もちろん、様々な宗派が夫々

日本人に影響を与えてきた

のは当然である。

 

私の実家は浄土真宗だったので、

「ナンマイダブツ」の念仏を

聞きながら育った。

 

また同時に神社にはなにかと

お参りに行き身近に感じている。

 

それにひきかえ禅宗は

私にとって全く馴染みがない。

けれども日本の歴史を俯瞰し

日本人の心を考えると、

他のどの宗派より禅宗が

大きな影響を与えてきたと

思わざるを得ないのだ。

 

従って、仏教の中で

さらに禅宗に絞って考えよう。

 

禅宗の始祖は

達磨といわれている。

 

(達磨禅師)

 

あのだるまさんが転んだの

ダルマだ。

 

六世紀初頭、インドから中国に

禅宗を広めた。

 

もっぱら座禅を修行し、

内観・自省によって心性の

本源を悟ろうとする宗門である。

 

七転び八起きのダルマに

足がないのは、座禅し過ぎて

足が腐ってしまったからだ

といわれている。

 

日本では鎌倉時代に

栄西(臨済宗)や

道元(曹洞宗)によって

全国に広められた。

 

ここでは、この二つの宗派を

禅宗と一括りにして考える

ものとする。

 

この禅宗が全国に広まる

きっかけになったのは、

時の最大の権力組織である

鎌倉幕府がバックアップした

ことである。

 

朝廷や平安貴族から権力を

奪ったばかりの新支配層である

ほとんどの武士達が幕府の

意向に従い禅宗に帰依したのである。

(貴族も禅宗ではあるが…)

 

この影響はとてつもなく大きい。

 

鎌倉から室町及び戦国時代を通じ、

現代の我々にも馴染みのある

日本独自の文化が芽吹くのだが、

それらはみな禅宗色抜きには

考えられないものばかりである。

 

華道、書道、絵画、造園、武芸、

建築(書院造等)、茶道等々、

いわゆる日本文化だといって

現代人が胸を張り誇りに思っている

であろう様々なものに影響を

与えていることは明々白々である。

 

さらに禅宗には

良いところがある。

 

それは現場主義ということだ。

 

日本の禅宗には老荘思想が

溶けているのかもしれないが、

自分のことは自分でする的考えが

禅宗には浸透している。

 

これは日本人の長所といって

よいところではなかろうか。

 

企業でも戦場でも

現場が強いのもこの影響。

 

また、工場に大学卒の優秀な

エンジニアがいたとする。

 

彼は大学卒であるにもかかわらず、

高卒の工員と現場で一緒に

汗水たらすことを厭わない。

彼は、工員からも慕われ徳を積み

情け深い工場長に出世する。

 

映画やドラマでもそういう場面が

多々出てくるし、そういう人に

観客は拍手する。

日本人の観客は前述の大卒エンジニア

の行動は日本人として当たり前だと

思っているし、理想とも思っている。

 

しかし、これは世界的には

当たり前ではなく異質なのだ。

 

ピューリタンの多い米国は

日本に多少近い感覚かもしれないが、

欧州や中東、アフリカ、中国、

韓国などではありえないことなのだ。

 

エンジニアは頭の中でアイデアを

出せばよいのであり、

工員と一緒に現場で汗を

流すなんてナンセンスだと、

多くの人は考えているのである。

 

仕事上、私はこのギャップを

何度も感じてきたので間違いない。

 

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このように、

禅宗そのものの教えもさることながら、

その禅宗に若々しく力強い支配層である

武士が帰依したからこそ、

「質実剛健が善である」と

「現場が大切」

という認識が日本人の心に

深くインプットされたと

私は思っている。