『ご当地電力はじめました!』全国ご当地電力マップ&「はじめに」を公開! | 全国ご当地エネルギーリポート!

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-エネ経会議・特派員:ノンフィクションライター高橋真樹が行くー

先日出版した新刊の『ご当地電力はじめました』(岩波ジュニア新書)ですが、今回はその本の中から、ぼくと出版社で作成した「全国ご当地電力マップ」をご紹介します。このマップに掲載しているのは、ぼくが取材して記事として掲載したご当地電力が中心です。中には、連絡だけ撮っているけれどまだ記事にできていないものも入っていますが。逆に取材したけれどこのマップに入れられなかった活動はこの3倍ほどあると思います。もちろんぼくが連絡を取っていない活動もまだまだたくさんあるので、あくまで全国にこんなにあるんだという理解のための参考になれば、ということで作成させていただきました。半年ごとに更新できれば良いなと思っています。


●は本書の中で取り上げたご当地電力
○は筆者が取材したご当地電力の一部
■はご当地電力ではないが、本書で取り上げたエネルギーについての活動


本の「はじめに」では、ご当地電力の成り立ちとその意義について取り上げています。以下、『ご当地電力はじめました!』から転載いたします。

◆はじめに ご当地電力が動きはじめた!

あなたは、自分が使う電気がどこから送られてきているかを知っているでしょうか?電気は、コンセントにつなぐだけでいろいろな電化製品を動かすことのできる便利なエネルギーです。でも、誰かを犠牲にしてその便利さを手に入れていたのだとしたら、仕組みを考え直す必要があるのかもしれません。

多くの人にコンセントの先に何がつながっているかを突きつけた出来事が、2011年3月11日におきた東日本大震災と、福島第一原発事故でした。これによって、東京など首都圏に住む人たちは、自分たちが使っていた電気の多くが、東北地方の福島県から送られてきていたことを知ることになるのです。

事故で放出された放射能の影響により、福島の沿岸部では15万人以上がふるさとを離れ、避難生活を送ることになりました。また、政府が指定した避難地域でなくても、放射能の影響を心配して家族がバラバラになる事態もおきました。そんな被害をもたらした原発に頼りたくないと、日本各地で脱原発を求めるデモがおこり、それまでエネルギーのことに無関心だった一般の人たちも大勢参加しました。

しかし事故から数年がたち、デモに参加する人たちは日に日に数を減らしていきました。そして日本政府は原発をまた活用しようと、積極的に動き出しています。事故直後に盛り上がった人々の原発やエネルギーへの関心は失われてしまったのでしょうか?

ぼくは、全国を回って「自然エネルギー」について取材しているジャーナリストです。今まで、原発事故をきっかけにエネルギーに関わるようになった大勢の人たちから話を聞いてきました。その経験から言えば、人々の関心は決して失われていません。むしろ、具体的な形になってきています。

なぜなら、原発事故を受けて「自分の人生をかけてエネルギー問題に取り組みたい」と考えた人たちが、次々とチャレンジをはじめているからです。新たにエネルギーを仕事に選んだ人たちのほとんどは、あの3・11の前まで、エネルギーなんて「どこかで誰かがつくる」自分とは関係のないこと、と考えていました。気にしていたのは、車にガソリンを入れたり、電気料金の請求書をチェックするときに、価格が高いか安いかということくらいだったのです。

この本に登場するエネルギープロジェクトのリーダーたちは、農家や新聞配達員、寿司チェーンのパートさん、居酒屋の店長、かまぼこ屋さんなど、特にエネルギーと関わりが深いとは言えない職業についていました。でも本当は、エネルギーと関係のない職業なんて一つもありません。

パソコンや携帯電話、照明はどの仕事の人でも使っていますし、お店をやっていたら冷蔵庫や車の燃料も欠かせません。誰もが、電気やガスやガソリンを使って仕事をしているのです。だからこそ、電力会社やガス会社の社員じゃなくても、ちゃんとエネルギーのことを考えるのは大事なことだし、誰もがもっとエネルギーを賢く使うためにできることはあるのです。実際に、彼らのその後の行動は、エネルギーの素人であっても、りっぱにエネルギーを仕事にすることができると証明しています。

エネルギーについて何かやってみたいと思ったときに、強力な味方になってくれるのが、それぞれの地域にある「自然エネルギー」です。「自然エネルギー」はまたの名を「再生可能エネルギー」とも呼び、自然の中からとりだし、くりかえし使えるエネルギーのことをさしています。太陽光発電や風力発電は最近あちこちに増えてきましたよね?他にも、川の流れを利用する「水力」や、木材や家畜のふんなどを燃やす「バイオマス」、地中のマグマの熱を使う「地熱」など、たくさんの種類があります。

一方で、これまでぼくたちが使ってきた電気やガスといったエネルギーのほとんどを生み出しているのは、土の中から掘り出した石油や天然ガス、ウランといった化石燃料です。こうしたエネルギーは、使ったぶんだけなくなってしまうので、「枯渇生エネルギー」と呼ばれています。

この本でみなさんに伝えたいことを一言で言えば、「みんなが使うエネルギーを、化石燃料から自然エネルギーに変えていこう」ということになります。でも、単にエネルギー源を変えるだけではありません。もうひとつ大事な点として、「国や大きな組織に頼りきりにするのではなくて、自分たち一人ひとりでエネルギーに取り組もう」という話もしています。

「自分たちで発電所をつくろうと言われても、そんなことできるの?」と疑問に思う人もいるでしょう。これまではエネルギーは国や電力会社が独占してきたので、そう考えるのが当然です。例えば火力発電所や原子力発電所のような巨大な施設は、自分の町で運営しようと思っても、まずつくることはできません。

でも、太陽光発電や風力発電なら、さまざまなサイズがあって自分の町に合った形で実現することは十分にできるのです。それが、自然エネルギーの面白いところです。もちろん簡単ではありませんが、国や電力会社に依存するのではなく、エネルギーを自分たち自身で選び取る世の中をめざして、すでに行動している人たちがたくさん出てきています。そこには、高校生や大学生といった若い人たちも参加しているのです。

そろそろ、大多数の人たちの便利さのために、誰かが犠牲になるというシステムから卒業する時がきたようです。みんながエネルギーをつくり、自分で選んだ電力会社と契約して、自然エネルギーを使いこなすことのできる社会はまもなくやってきます。そのカギをにぎる存在が、この本で紹介する「ご当地電力」です。いままでぼくたちの暮らしにはなかった、「みんながエネルギーをつくり、賢く使いこなす社会」とは、いったいどんなものでしょうか?それでは、「ご当地電力」とエネルギーをめぐる旅に、出かけてみましょう。


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