ご当地エネルギー・ご当地電力ってな〜に? | 全国ご当地エネルギーリポート!

全国ご当地エネルギーリポート!

-エネ経会議・特派員:ノンフィクションライター高橋真樹が行くー

なんと、ぼくもビックリですが「ご当地電力」というワードが2013年の流行語大賞候補50に選ばれたそうです!

それもあってにわかに注目を集めているこの取り組みですが、改めて「ご当地エネルギー・ご当地電力」って何だろうということについて述べてみましょう。

「ご当地電力」は、地域でエネルギーをつくって、地域の自立につなげていこうとする活動全般だと言っていいでしょう。そういう意味では、「電力」とは名乗っていますが、必ずしも電気でなくても、「太陽熱」とか「薪ストーブ」とかを利用する熱エネルギーを生み出す活動にもあてはまります。だから「ご当地エネルギー」というのもほぼ同じ意味ですね。当サイトは2013年9月に「ご当地電力リポート」の名称ではじまり、2014年9月から「ご当地エネルギーリポート」に変更しています。

もうひとつ、従来の大きな地域独占型の電力会社に対して、各地域がそれぞれ独立を掲げて小さな電力会社をあちこちに立ち上げるという意味も持っています。

活動には、事業化をして本格的に電力を仕事にしていこうとしているもの、組織を作っている段階のもの、地域で手作りでエネルギーのことを手がけようとしているグループなどさまざまなものがあります。

いままでは、電気を含めたエネルギーがどうやって家庭に送られてきていたのでしょうか?地方に作られた巨大な発電所から長い長い送電線を伝って、遠くの消費地に運ばれてきていました。原発がその象徴と言えますね。

例えば福島原発などは、福島でつくった電気を250キロ以上離れた東京に送っていました。その構造は原発にかぎらず、火力でも水力でも同じです。その構造だと、利益のほとんどは東京の電力会社が持って行ってしまいますし、一般の人たちは単に決められた値段でエネルギーを買わされるだけで、自分たちでエネルギーをつくったり、ビジネスに加わることはできません。

しかし、福島第一原発事故を機に各地で自分たちのエネルギーを自分たちがつくって、所有しようという動きが出てきました。地域で小さな発電所をつくる動きに、もっとも適しているエネルギー源が、サイズもコンパクトで、それぞれの地域にあった導入の仕方ができる自然エネルギーなのです。

太陽や風力は資源がタダです。水力や木質バイオマスは昔から人々が利用していたエネルギーでした。「ご当地電力」というのは、こうした地域のエネルギーを活かして、東京のような大消費地に奪われる一方だったエネルギーの主導権を、少しづつ地域のものにしていこうという動きなんですね。逆に都会では、これまで消費するだけだった暮らしをしていたけれど、少しでもできることをやって発電したい、と考えて行動を起こしている人たちもいます。

とはいえ、これまでエネルギーに関わったことのない人たちがいきなりエネルギー事業をやるというのも難しいことです。また、国のエネルギーシステムもまだまだ10の電力会社による地域独占を前提としていて、課題が山のようにあります。だから今は、はじめに小さな発電設備から設置していこうという状態なのです。

皆さんも御存知だと思いますが、各地で「ご当地エネルギー・ご当地電力」が動き出したからといっても、すぐには日本のエネルギーの何%という数字をまかなえるようにはなりません。しかし、これまで「エネルギーのことなど自分の問題ではない」と考えていた人たちが本気で動き出したということの価値は、とても大きいのです。

それまでの仕事をやめてまで、新しい取り組みに全力をかけている人がたくさんいます。ぼくは、その情熱と思いの深さを含めて、全国の取り組みをできるだけ客観的に伝えていきたいと思っています。

$全国ご当地電力リポート!
山梨県都留市の小水力発電所、元気くん1号

ちなみに、発電設備はいまのところ小さいと言いましたが、小さいからダメだとはぼくは思っていないんです。大多数の日本人は3・11までは、原発型の発想あるいは20世紀型の発想といったらいいんでしょうか、とにかくたくさんの発電をして、たくさん消費するというのが当たりまえの社会に慣れてしまいました。

これだけ地震の多い国にあれほどの原発が作られてしまった理由の一つには、電力が足りないから原発をつくるというのではなく(電力会社はそう説明してきましたが)、原発を作って電気をどんどん送るから、無駄に消費する方法を考え出すという発想でやって来たという面があるのです。

よく見わたせば、皆さんの回りにも電気ではなくてもいい商品がいっぱいありますよね?電気ポットとか、電気ストーブとか、IHとか・・・オール電化住宅なんて、そのために考えだされたアイデアなんですよね!熱は熱から作ったほうが効率がいいのに、わざわざいったん電気に変えてから熱利用も全部まかなおうなんて発想は、エネルギー効率から考えたら本末転倒なので・・・そういう発想でいく限り、原発を何基作っても電気は足りなくなってしまいます。

現在では電力の約3割を自然エネルギーでまかなっているドイツや北欧では、単に原発から自然エネルギーへとシフトしたのではなく、そうした巨大な発電設備優先の社会からの転換を成し遂げました。つまり、各地に小さな発電所が無数にできて、それが有機的につながって国のエネルギーをまかなうようになったのです。

だから、ひとつひとつの取り組みは小さくても、地域の人が地域のためのエネルギーをどうしていくことかに取り組みことは、いずれ国を動かす力になるはずだと僕は思っています。そういう視点から、ぜひこの「ご当地エネルギーリポート!」を応援していただけると嬉しいです。

$全国ご当地電力リポート!2013年6月に開催されたコミュニティ・パワー・イニシアチブのイベントより

最後に、今日述べたあたりのことがよくわかる本を3冊ほど紹介します。

ひとつは手前味噌ですが、ぼくの本です(笑)
『自然エネルギー革命をはじめよう~地域でつくるみんなの電力』(大月書店)
全国30ヶ所以上、100人以上に取材しました!(いまはそれぞれその3倍くらいでしょうか!)


こちらから動画も見ることができます

本の紹介という体裁にはなっていますが、ここで述べたようなことをまとめているので、参考になるはずです。

2つ目は出版されたばかりのエネ経会議の代表である鈴木悌介さんの本です。
『エネルギーから経済を考える』(合同出版) 対談形式なので読みやすいですね。

最後にはぼくもたいへんお世話になっているISEP(環境エネルギー政策研究所)研究員の古屋将太さんが出したゆる~い感じの本です。
『コミュニティ発電所 原発なくてもいいかもよ?』(ポプラ新書)
地域の取り組みを現場でアドバイスしている人が書いた本なので、ご当地エネルギーの仕組みのつくり方などがよくわかります。