ロビンス博士講演会 | エネルギーから経済を考える経営者ネットワーク会議

エネルギーから経済を考える経営者ネットワーク会議

思いと知恵を共有するプラットフォームとして

去る10月17日にエネルギー問題の世界的権威であるエイモリー・ロビンス博士をお招きして講演会と鈴木代表との対談を東京にて行いました。サブタイトルは「ロビンス博士、原発がなくても経済は廻るのでしょうか?」でした。



ロビンス博士講演から

ドイツと日本の政策の違いと生じた結果

ロビンス博士が最初に指摘したのは「日本は再生可能エネルギーは豊富で主要産業国中第1位である。ただ化石燃料資源には乏しい」という事実でした。

ところがその再生エネルギー資源の活用となると、ドイツと比べると9倍もあるが、発電に使われているのはドイツの1/9である。

2010年には日独とも30%の電力を原子力発電から得ていました。ドイツは日本の原発事故を見て脱原発に舵を切り、41%の原発をシャットダウンし23%の電力を失いましたが、同年には失ったほぼ全量を再生可能エネルギーで補いました。一方日本は2013年に再生可能エネルギーからの電力量は1.5%だけです。

日本は化石燃料に頼り、ドイツは再生可能エネルギーへと転換しました。日本のゴールは以前からのエネルギーシステムを守ること、ドイツのゴールは新しいエネルギーシステムへと舵を切ることでした。日本の戦略はより多くの輸入化石燃料を燃やすというもの、ドイツは再生可能エネルギーの活用というものでした。

つまり真逆の政策によりこのような違いが出てきているということなのです。

決定的に重要な問題として、日本では競合電力は系統への接続が理由があろうとなかろうと拒否されるということがあります。対して、ドイツでは全ての再生可能エネルギーは自動的に系統に接続され全国へと供給されます。

日本のエネルギー効率は遅れている

3か月前、独自に世界の16主要国のエネルギー効率の比較が発表されました。主要16カ国中日本の産業エネルギー使用効率は9位、産業用のコージェネレーションは12位です(日本では電気の3%がコージェネにより創られますが、ドイツでは13%です)。個人住宅のエネルギー効率は7位、商業ビルの効率は14位です(これは平方メートル当たりドイツの2倍のエネルギー使用量となります)。自動車とトラックの効率では7位となっています。日本は車以外の全てのカテゴリーでアメリカの後塵をはいしています。

どのように改善すれば良いのか?-アメリカで見出し実践してきた事例からのヒントー

第1点
再生可能エネルギーを10%から74%にすることにより、現在価格で5兆ドルのコスト削減となります。この安いエネルギーコストで158%増の経済を支えることが出来ます。石油、石炭、原子力なしで82-86%二酸化炭素排出を減らすことが出来ます。このことは新たな発明や議会の法律なしでも、ビジネス利益主導で出来ることです。この政策変更は国ではなくリソースやリーダーシップに富む地方、アメリカでは州、日本で言えば県や市レベルで行えます。

第2点
電力需要が減れば電力を創る方法を変えることはより容易くなります。今日では日米両国で使用される電力の多くは無駄になっています。そして効率化技術はそれを実装する以上のスピードで進んでいます。しかし、建物や産業は成長するより速いスピードでキャッチアップを始め効率的になってきています。アメリカのエネルギー使用は年率1%増加の予想でしたが、電気自動車の需要にも拘わらず1%の割合で減少し始めました。実際、過去6年のうち4年間は経済成長していたにも拘わらず、6年のうち5年間は電力需要は既に減少しました。アメリカの総電力需要のピークは2007年でした。2012年だけをみると気候をアジャストしたGDP$1当たりの需要は3.4%減りました。

つまり、創エネと省エネの二つで改革が必要である。

再生可能エネルギーは高くつく?

再生可能電力は多くの世界で競争力のあるものになっています。光電変換素子、陸上風力発電がコストを下げ続けている様子が見て取れます。補助金なしのアメリカでの市場価格は太陽光が7-8円/kWh,陸上風力発電が4円/kWh以下となっています。しかしドイツでの屋上太陽光コストは同じ装置をより効率的に実装することによりアメリカの半分以下です。今日アメリカ約20の州では、私企業が電話一本でやってきて、頭金なしで、そしてしばしば設置前の電気料金支払いと比べてもトータルで支払が安くなることをすることを保証する形で太陽光モジュールを家庭の屋根に設置してくれます。このような規制なしの製品により、最終的には有線電話が携帯電話会社にとって代わられたように、電力会社を経ないで電力を得るようになっていくでしょう。
これと同じことは日本でも大変早いスピードで起こると思います。数年内に日本でもグリッドパリティ※が起こることでしょう。

※グリッドパリティ:再生可能エネルギーによる発電コストが既存の電力 のコスト(電力料金、発電コスト等)と同等かそれより安価になる点(コスト)

アメリカでの太陽光と風力発電による市場価格を示してみると、それぞれ日本のFIT価格の1/5、1/10となっています。日本の気前の良いFIT価格は再生可能エネルギーを押し上げ、2兆円の太陽光産業と28万人の雇用を創出します。FIT価格は太陽光システムコストは家庭用で1/3、大規模なもので40%下がったのに合わせ数年下落しています。しかし日本の再生可能エネルギーコストは世界のものよりはるかに高いのです、どうしてでしょう。電力会社が競合するどんな電力でも系統への接続を拒否できるし、しているからです。

新しい電力供給システムとは?

我々はかって巨大な大聖堂の様な発電所を建設してきました。認可に数年かかり、更に建設に数年かかります。これに対し、毎年太陽光パネルを造る工場を作り、続いて太陽光モジュールを生産できます。その後巨大発電所と同じだけの電力を創ることができます。それゆえ、この例では最初の十年で従来の巨大発電所15か所分以上の電力を太陽光発電所から創りだすことが出来ます。正にこのことを最近の日本工業界では実証してきたことになります。11ギガワットを2年間で追加しました。明らかに開発業者が認可されれば毎年7-9ギガワットが追加されていくキャパがあります。再生可能エネルギーのモジュールは大量生産により毎年安くなります、安くなればなるほど多く売れます。2008年来新しくできた発電容量の半分は再生可能エネルギーで、多くは開発途上国においてです。今日世界の電力の1/5は再生可能エネルギーです。中国では過去5年風力発電が毎年ほぼ2倍づつとなっています。この2年風力発電からの発電量は原発からの発電量を上回っています。昨年だけで中国はアメリカが太陽光発電の発明以来60年かけて実装してきた以上の発電量を追加しました。今年に限っても、7%経済成長にも拘わらず中国では石炭発電は減っています。世界的に過去3年間、毎年80ギガワットの再生可能エネルギーが追加されています。そして毎年2500億ドルの私的投資を得ています。これと対照的なのが原発で福島原発事故以前でも0以下の追加量です。なぜならばビジネス的に割に合わないからです。建設コストが高すぎ、財政リスクが多いからという単純な理由から世界では原発の注文はなくなってきています。アメリカでは新しい原発導入に100%以上の補助金を付けるといってもどこも私的には投資をしません。

最も権威ある予測によると、今日から2030年にかけて再生可能エネルギーからの全世界での追加発電容量が2倍となっています。一方、化石燃料、原子力の追加はなしで半分になっています。おかしなことに主要国中日本だけが真逆のことをやっています。再生可能エネルギーを抑圧して、原発再稼働、石炭火力発電所建設をしようとしています。


再生可能エネルギーは不安定だからベースロード電源として大型火力発電、原子力発電が要る?

日本の電力会社は灯りを灯し続けるためには、大型火力発電所や原子力発電所が要ると主張しています。なぜならば風が吹かないとき、日が照らない時のために電気をためておく低価格の大容量蓄電池なしでは太陽光や風力では変動性が大きすぎて信頼性に欠けるからだと言っています。アメリカの電力規制庁長官が5年前に言ったようにそんなことは神話であります。何故彼の言うことが正しいか理由を説明しましょう。
先ず第一に変動するということは予測できない事を意味するのではないということです。太陽光発電や風力発電を電力需要の予測と同程度に正確に予測することが出来ます。風の吹く冬のひと月の全フランスでの系統運用者による風力発電の1日前の予測値を見ると、1日後の発電量とほぼ正確に一致しています。

第2に系統電力網を造った理由はどんな発電所も1週間24時間稼働しっぱなしということはなく、停止する時もあるからです。それら巨大発電所は時間にして10-12%停止しています。一瞬にして10億ワットが失われることもあり、それはしばしば1週間、一月も続くことがあります。警告なしということもしばしばです。電力系統網によって、停止した発電所の分を稼働している発電所の分でバックアップすることによりこの中断を管理しているわけです。全く同じように、しばしば安いコストで、系統網は予測可能な太陽光発電や風力発電の変動を、他所のあるいは異なったタイプの再生可能エネルギーを結び合わせることにより管理できます。

単なる理屈の上の話ではないのか?

既にヨーロッパの国では広く行われていることなのです。
ヨーロッパの5か国では、水力に富んでいるわけではありませんが、大きな蓄電設備なしでアメリカよりもずっと信頼性高く電力消費の25-58%を再生可能エネルギーから既に配電しています。これらの国では再生可能エネルギーの信頼性は想定される信頼性の限界をはるかに超えたものとなっています。昨年の電力売上高を比較すると、北海道電力は(発電量の)50%が再生可能エネルギーであるデンマークより売り上げが大きいですし、46%が再生可能エネルギーであるスコットランドとはほぼ同じです。一方、東北電力や九州電力は58%が再生可能エネルギーであるポルトガルより67%程売り上げが大きく、45%が再生可能エネルギーであるスペインよりは33%ほど売り上げが小さい規模です。しかしながらこれら日本の電力会社は比較的少ない再生可能エネルギーでも彼らの系統の信頼性を損ねると主張しています。日本では物理の法則が異なっているのでしょうか、あるいは単に電力会社を競争から守ろうとしているのでしょうか。

アメリカ国立自然エネルギー研究所では既に80-90%の再生可能エネルギーは信頼性があり無理なく買える価格であることを示しています。いくつかの州では既に電力の1/4を風力から賄っています。まとめると、系統を柔軟にするための方策として大きな蓄電設備を持つこと、化石燃料によってバックアップすることは最もコストのかかるものとなるということです。ですから、そうすることは最後の手段であって最初にすることではありません。安い大型蓄電設備へのブレークスルーは役には立つでしょうが肝要なことではありません。私たちは待つ必要はありません、そして市場は待ってはくれません。(出力が)変動する太陽光、風力による再生可能エネルギーは系統を不安定にさせるという神話によって私達は阻止されているだけなのです。系統が適切に運用されればそんなことはないのです。ヨーロッパが実証しています。
電力をどんなスケールで生産するかということも非常に大事な観点です。デンマークでは集中した少数の大型発電所から、ちりぢりに分散した86%が地域で所有される風力発電と熱供給ラインを持つ農業廃棄物焼却発電、への移行を既にほぼやり遂げています。デンマークはヨーロッパで最も安定した電力を持ち、ドイツよりも少し進んでいます。アメリカの10倍の信頼性となっています。デンマークでは系統の再構築も進みつつあります。災害に強いセル型のアーキテクチャーにして、次から次へと停電が起こらないようにしています。

何をしなければならないのか

古くてきたない安全性に欠ける発電システムは置き換えなければなりません。
今のものを原子力だろうと、所謂クリーンな石炭だろうと、集中した再生可能エネルギーだろうと、分散された再生可能エネルギーだろうと、何で置き換えてもコストは同じなのです。では一体何が根本的に違うのでしょうか。7倍も危険度が違うのです。その危険度とは、燃料、水、財政、技術、気候、健康といった国家の安全保証です。これは危機管理だということです。アメリカでも日本と同じく集中化され過ぎた系統となっていて、運用による問題、太陽嵐、台風、地震、テロ、サイバーテロにより、どんどん停電が広がり経済が停まってしまうという可能性にさらされています。しかしこの停電の危険は分散された再生可能エネルギー導入によりなくなり、他の6つの危険性もうまく管理されることになります。この分散された再生可能エネルギーは普通地域の小さな系統に接続されているのですが、必要によっては単独でも良いし、同じものが別々に分かれている状態でも良いのですが、再度結合されても良いのです。このことは国防総省の電力供給戦略なのですが、一般の家庭にも適用できます。通常のビジネスの場合と同様ほぼ同じコストで、この災害に対して抵抗力がある、弾力的な系統アーキテクチャは国家の安全、顧客の選択肢、起業の機会、技術革新を最大にしてくれるでしょう。
私たちのエネルギーの将来というものは宿命的なものではなく選択なのです。そしてその選択も大変柔軟なものです。私達は、中国中央政府との仕事をするなかで、この種の先進性は中国ではもっと大きいことを見出しつつあります。

日本では何をすべきか

ただエネルギー市場が働くようにするだけで、人々の勤勉性、産業技術でうまくいきます。
それなので効率性と再生可能エネルギーが十分に、かつ公平に、競争できるようにしましょう。再生エネルギーの系統接続を妨げている細かい規制を取り除きましょう。来年4月から実施されるであろう電力会社から独立して運用される全国統合系統運用が始まることに対する準備を今からしましょう。透明性にこだわって下さい。
電力を沢山売るのではなく、顧客の電気料金を下げる電力会社をひいきにしましょう。そう選択すれば、電力会社に顧客側や起業家サイドにたった投資をうながすことになります。そうすれば電力会社の利益も変わります。
障壁を除去しましょう。革新を受け入れましょう。エネルギーのタイプ、技術、サイズ、設置場所、誰が所有しているかに関係なく、常に省エネ、創エネが公平に競争できるようにしましょう。そのような選択が日本の繁栄、影響力、安全性を後押しすることになります。日本は火の創造で世界をリード出来ます。
日本を大変苦しめてきたエネルギー源から日本国旗の聖なる太陽へとシフトすることは正に皆さんの選択が必要なだけなのです。

まとめ

人類文明に一度のビジネス機会というだけでなく、人類史上最大の転換の一つであるということです。なんとなれば、私たちは本当に新しい火を創造したのです。その火は地中から掘り起こしたものではなく、天空から注ぐものです。この新しい火というものは、乏しいどころか大量にあるものです。偏在しているわけではなくどこにでもあります。一過性でなく、永久的なものです。
皆さんと共にこの世界をより健康に、より豊かなものに、より公平なものに、より格好いいものに、より安全にしていこうではありませんか。


鈴木代表との対談から
鈴木代表から大きく分けて二つの質問があり、それにロビンス博士が答える形での対談です。

再生可能エネルギーで日本の膨大なエネルギー需要を賄えるのでしょうか?

鈴木代表:

一つ目は再生可能エネルギーが本当に私たちの国の膨大なエネルギー需要を賄えるのだろうか?ということであります。先程の先生のお話しでは、問題ありませんよということになったわけですが、本当にそうかなということが多分皆さんもまだ腹落ちしないのではないかという風に思います。本当に経済的にあるいは技術的に再生可能エネルギーがどこまでこの日本の膨大なエネルギー需要を賄えるんだろうか。もう一度、繰り返しになるかもしれませんが、その辺のお話を頂ければと思います。

ロビンス博士:

ほとんど日本のどこでも豊富な再生可能エネルギーは少なくとも一つはあります。ほとんどの地域ではいくつもの種類があります、日本全国では全ての種類のものがあります。最初にこのことを70年代初めに認識しました。日本は先進工業国中最も豊富な自然エネルギーポートフォリオを持つ国であることは明白です。しかし重要なことはその各々の資源を組み合わせて使う事がベストだというです。

私の話はほとんど全て電力の話でしたが、ほとんどのエネルギー使用は実際のところ燃料としてです、工業用熱、ビル暖房あるいは輸送用燃料の形で使われているということを思い出さなければなりません。そこにも素晴らしい再生可能エネルギー使用の解があります。特に興味深いものに、太陽プロセス熱があります。
これは既にカリフォルニアからオマーンで競争力のあるものとなっています。それゆえ、例えば石油の代替えとなっています。日本には場所によって違いはありますが素晴らしい太陽光資源があります。

日本でもドイツやアメリカでも最も良い再生可能エネルギーを使うというポリシーを良く聞きます。そこで北海度や九州で風力による発電を行い、巨大な送電線を建設し関西や関東に送るのだという訳です。これは正しくありません、送電線にコストをかけなければなりませんし、送電時の損失もあります。経済的には消費が必要な場所の近くで中程度の品質の発電を行うのと、最も高品質の資源からの発電をはるか遠くで行うのとはほぼ同じことになります。このことは特に弱い風に対して最適化されている新世代風力タービンでは現実のこととなっています。フランスのシャトーではこの風力タービンが使われています。陸上風力発電でのこのアプローチで日本のどこでも7円/Kw以下の発電が出来ます。7円以下でというのは習熟曲線からの話で、今は9.4円/Kwとなります。

鈴木代表:

ロビンス先生、先程エネルギーとは電気だけではないとおっしゃいましたね。私は実は神奈川県のエネルギー計画を創る委員会の委員をやっているんですけれど、神奈川県全体の現状というデータを見た時に、神奈川県全体で使っているエネルギーのうちに、確か、電気は30%しかないのです。70%近くは熱で使っている。エネルギーイコール電気とみてしまうと、例えば原子力発電所が停まってしまったから、じゃあその代わりにどうやって発電するの、という話になってしまって非常に議論が変な方向に行ってしまうんですね。

だからエネルギーが電気だけでなくいろんなエネルギーがあるんだよという風に見れば、正に先生がおっしゃるようにこの日本はエネルギーの宝庫だろうなと。例えば私は蒲鉾屋なんですが、レストランもやっています、この間エアコンを井戸水を使うエアコンに切り替えたんですね。そうしたら、何と電気が3割位スコーンと減っているわけなんですね。それから、厨房でお湯を沢山使うので、太陽熱のヒーターを入れてその太陽熱で温めたお湯で厨房の、例えばお皿を洗う機会などに使っているんですね。そうするとガスが3割くらい減ると。

だからそういう風に考えていくと、本当にこの日本という国は先生がおっしゃるようにエネルギーの資源がないという考えは間違っているなと思います。そういう見方というのは正しいのでしょうか。

ロビンス博士:

多分私たちは日本はエネルギーに乏しいという代わりに、化石燃料に乏しいという言い方に、言葉を厳密に使う方が良いと思います。もし皆さんが信じられないほどの技術スキル、起業家スキル、商業スキル、そして人が論理的にものの言える規律、これは難しい課題を非常に上手く、早く成し遂げる際に日本の社会が集中するものなのですが、を一緒にすれば、このようなものすべてが揃っているのは世界中日本をおいてはありません。

何が阻害しているのでしょうか、それをどう乗り越えれば良いのでしょうか?

鈴木代表:

今回の企画を先生にお願をしてやろうと決めたのは実は2ヶ月くらい前だったのです。この短い時間の中で更に日本では大きなことが起こりました。例の太陽光の発電をしたものの受け入れを電力会社が保留をするという大きな出来事がありました。

こういう意味ではこのイベントはよりタイムリーになってしまったわけでありますけれど、先程先生がおっしゃるように、再生可能エネルギー、日本は大変なチャンスがありますよと、そういうことを受けていろんな人達が、いろんな想いの中で、今どんどん地域で太陽光発電を始めたわけですけれど、それをもう買わないということになってくると、その事業にかかわる方は非常にパニックの状態になっているわけです。なんで、そっちの方に戻ってしまうのかが私の二つ目の質問なのですが。

確かに日本は技術もある、化石燃料は無いけれどエネルギーのネタは沢山ある。私も色々な経営者の方に個別に聞いてみると、原発なんか危ないよね、もう要らないよね、どんどん新しい方に動いて行こうね、という方が多いのですが、ところが国の政策になってしまうと、さっき先生がおっしゃったように、世界の潮流と全く逆の方向にいってしまいます。これは一体何故なのかなという風に思っているんです。

ロビンス博士:

基本的には電力会社と電気設備事業者連合の非常に強い政治力があるからです。しかしまた経団連などの習慣の力のせいもあります。東京電力や関西電力、電事連のコンサルタントもやっていますが、そこでは個人の振る舞いは団体としての振る舞いとは異なっています。これはまさに人間の性質です。多くの政府の人や電力会社役員と30年来話をしてきていますが、いかに彼らだけで話しているか、他の人から学ぶことがほとんどないということにびっくりします。このことは必ずしも私の国が行ったとんでもない間違いをするということではありませんが、皆さんの国では新たな面白い間違いが私の国がやってきたよりずっと速く起こるということです。

皆さんは経産省が自由化に反する新しい規則を考えていることに気づいているかもしれません。その規則とは、2016年の規制(電力買い取り自由化)が実施された後では、市場からはそのコストをリカバーできない原発が、リカバーできるように出来るようになることを保証するものです。その理由はそうしないと原発を経済的に運用できない為停止することになるかもしれないからです。アメリカでは、私たちは多くのちゃんと稼働している原発は、競争がある市場では電力卸価格の競争力がないということを分かってしまいました。それで原発はなくなり始めています。単純に原発運転が経済的に合わないからです。そしてドイツ、スエーデンでも同じことが見て取れます。

しかしながらこのことは今まで知られていなかった興味深い機会を明らかにすることになります。もし原発運用を停止すれば、日本の場合はただずっとクローズし続ければ、運転コストを節約できます。そしてもしそれをもう一度エネルギー効率化に投資するなら、何倍も安いのですが、原発を再稼働する場合より何倍もパー円当たりの炭素を減らすことができます。

お話ししたい数字が他にもあります。今日飛行機の中で日本エネルギー経済研究所のデータ、7月の予測ですが、を使って調べてみました。鈴木さん、一番最初にお話ししたことを思い出して下さい。ドイツでは2016年までに3.11以降の原発からのエネルギーを完全に再生可能エネルギーだけで置き換えることができるといいました。もし日本でも開発者が今と同じ割合で続けることが許されるなら同じことができるということが分かりました。

今日本は非常におかしな状況にあります。全ての電力会社は、うまく通常同じくらいの規模がありもっと安い風力発電を抑圧することに成功したのですが、太陽光発電も半数の電力会社は抑圧しています。なぜならば、いくつかの日本の会社が競争力のある再生可能エネルギーを従来型の発電所より素早く建設できることを示したからです。また同時に実用的な変電システムが統合しても、独立してでも運転されるので、旧い発電施設に競争力のないことを隠しておくことができなくなりました。コストをリカバーすることを保証もしないで競争から降りてしまいました。
多くの電力会社は人々が実際に節電しているよりもずっと少ない量を節電すると思っていたので、関西電力だけでも1.1ギガワットも夏季に余計に節電したことに驚いています。同時に東電や関電は新しい、私はその需要はないと予測しているのですが、石炭火力発電所を建設しようとしています。そしてそのコストを取り戻そうと計画しているのです。止めにするのでは十分でなく、それを置き換えようとしています。私には理解ができないのですが、一つのシステムが死にかかっているのに同じような他のシステムを何とかして生まれさせようとしています。

鈴木代表:

今ロビンスさんがおっしゃったようなことが日本で起こっているわけですけれど、何故かなということを私なりに観察してみたのですが、例えばですね、原発を止めてしまうというふうに決めるとですね、多くの電力会社のバランスシートが困ったことになります。要するに、原発という膨大な資産をゼロにしなければいけない、なおかつ使用済み核燃料というのはバランスシートを見ると資産なのですね、使えるということになっていますから。それがゼロになってしまう。そうするとほとんどの電力会社のバランスシートが債務超過に近い、まあ、債務超過になってしまう。そうすると、日本の政府系の銀行も含めて全部の銀行を集めると電力会社に、原発のみではありませんけれど、25兆円位お金を貸しこんでいる。考えてみれば、貸している側からすれば貸している先が経営破綻したら困るわけです、だから当然銀行は待ってくれと、止めさせることだけは勘弁してくれという訳ですし、それからそういう電力会社もそうであるかもしれないし、その関連の大手の企業さんは全部上場大企業でありますから、語弊があったら御免なさい、所謂、サラリーマン社長さんな訳です。当然そういう株式会社という仕組みの中では株主の利益が最優先されるというのは当たり前なので、株主の利益と言ったら何かというと株価、株価をちゃんとする、それも自分が社長の間はちゃんとしておくということになりますから、当然良いかなと思っていてもここの今期、あるいは来期、自分の会社の株価が下がるような意思決定は一切できないというのがこの仕組みの中の性みたいなものかと思う訳です。そうい言う意味でなかなかやはり、個人的には違うかもしれませんが、会社の組織の中に入ってしまうとそういう判断しかできないということになるのかなと最近思うのですが、ロビンスさんはどう思われますか。

ロビンス博士:

株主は選んだ役員と戦略に注目します。競争がやってくることを察知したら、実務と誰が出口戦略を素早く実行するかということです。RMIが今年の初めに出した系統の経済的ゆがみという白書からちょっとした例をあげてみます。太陽光発電と安さを増していく蓄電池の組み合わせによって人々は系統から完全に離れていく。これは社会にとって最適なものではありませんが、地域の建設資材小売店で買うことができます。規制のない製品なのです。ハワイでは多くの人々が今既にこうしています。電力会社の請求書よりも安いのです。電気メーターを取り去ると伝統的な祝福を行っています。

太陽光パネルと蓄電池の組み合わせによる価格転換があれば、後2年経てば日本でも経済事象となってくるものです。アメリカの電力会社の資産に起こっていることは経済事象なのです。旧いビジネスモデルを隠しておくことはできません。バークリー投資会社がこれを読んだ時に彼らは電力会社、全てのアメリカ電力会社セクターのレイティングを下げました。なぜならば、既存の電力会社はこの競争への備えとなるビジネスモデルが出来ていないからと言っています。日本ではもっとこのことは当てはまります。
 
そこで私が株主なら、数年内に電力会社は再生可能エネルギーと競争しなければならなくなります、この膨大な資産のバランスシートのコストを取り戻す保証はないのでは、と聞いてみたいと思います。

もう一つ電力会社が競争しなければならない事は効率性のことです。もし最適になされるとすると、アメリカでの第3四半期の電気はキロワット時当たり円コストで2/3となります。それから日本の建物や工場はアメリカと比べ効率的でないということを思い出して下さい。もっと安いシェールガスにも勝った再生可能エネルギーとも競争しないといけません。役員に石炭、LNG、原発だけの発電所をもっと作らせるのでしょうか?違う役員が必要だと思いますよ。さもなければお金をなくすことになります。

鈴木代表:

ロビンス先生、先程の株主の話しに戻るんですけれど、日本の株主さんが皆先生のおっしゃるような方ばかりだったらもっと物事も進むんだろうなという風に思うんですが、多分日本の場合は特に上場会社の場合は株の持ち合いとかがありますから一般の本当の株主さんというのが少ないと思います。で、やっぱりどう考えても目先の会社の業績というのが優先されてしまう日本の国の中で先生おっしゃるようにそこに対し何かこう・・・・・。

ロビンス博士:

しかし沢山の発電所を資産として持っていても、もし運転しない方が運転するより安いなら運転しない方が良いでしょう。単にビジネスデシジョンの問題です。

鈴木代表:

当たり前と思っているんですが、当たり前のことが当たり前に起こらないのがこの国ですね。それは何故かなと思うとやはり・・・・。

ロビンス博士:

Eラボ(RMIにある次世代電気産業の検討を行っている組織)が大きくかかわっているうちの一つであるサンディエゴのガス会社を対比させてみましょう。社長が2年前に言いました、2年のうちに、今なんですが、サンディエゴでは日の照る午後にはいつも太陽光発電が取って替わるので化石燃料を燃やす発電所は運転を止めると。彼らはそれを受け入れて別の戦略を取りました、そしてうまくいっています。

鈴木代表:

そういうことだと思うんですね。ただそれはどこが始めるかという問題であって、多分いま私が実感しているのは上からは変わらないなと思っています。ですからやっぱりいくら小さくても現場の草の根の部分から現実を変えていかないと、いくらこちら側からああでもない、こうでもないと文句ばかり言っても全く変わらないので、それは矢張り我々が、自分が、私達エネ経会議は多くが中小企業の経営者ですから自分の企業という現場を持っています。それから地域でずっと商売をしていますから所謂顔の見える仲間がいる地域があります。そういう所で、小さくともいいから自分が出来ることに取り組んで行くということ、そしてその仲間をどんどん増やしていくということしか多分この国の大きなシステムを変えていくことは難しいのではないかなと思っていて、正にエネ経会議はそこのところをやっていこうと思っています。


ロビンス博士:

もちろん、それはあなたが自分自身の地元でで多くの企業と一緒に太陽光発電所建設をやっていることですね。そして、日本には協力するやり方、法的構成(共同会社)があると思っていますから、電力会社をう回してそのサービスを仲間に提供することが出来ますね。どんどんやって下さい。

これに関しては、私たちがコロラド州フォートコリンズの電力会社と取り組んでいる面白い話があります。その市ではアメリカでももっとも積極的に炭素をなくそうと取り組んでいます。そこで15%のサービスエリアでは私たちの新しいオフィスビルと同様な使用電力を太陽光から賄うゼロエネルギービルが広まっているので電力会社は少し問題を抱えています。というのはそのことはその電力会社は売り上げがなくなってしまうことを意味しているのですから。そこで私たちは一緒に双方向性の料金システムを創りだしました。電力会社とユーザーがお互いに公平な価値あるお互い同士交換できるサービスに対してお金を払います。そのモデルとは、雷の時メーターを壊さないようにするやり方です。それは電力会社が生き残り、新しい世界に入っていくための新しい種類のビジネスモデルかつ収益モデルの一例です。

鈴木さん一つ質問があります。アメリカにはIBMという死に直面したことのあるかってベストのメインフレームコンピュータ会社がありましたが、マイクロコンピュータにとって替わられました。この国では孫さんのソフトバンクはNTTの電話独占を壊してしまいました。多くの実例が、特にITや電話領域にはあります。そこでは旧い有線電話が携帯電話によってバイパスされました。多くの小さなものが少数の大きなものを置き換えたのです。日本ではこういったことは特に企業経営者には分かってはないのでしょうか?電力に関してこれと同じことが起こりませんか?結局太陽光ビジネスは今日では2兆円産業になっています。そして多くの人が儲けています。

鈴木代表:

先程ロビンス先生が話してくれたのですが、私の地元で、小さい中小企業ばかりが出資をしてエネルギーの会社を創りました。ほうとくエネルギー株式会社、今日多分志澤さん、あっ、彼副社長なんですけれど、彼は今役員をやってくれていますけれど、メガソーラーと行政の屋根貸しソーラーをやっていますけれど、そういう同じような取り組みが日本中にどんどん広まりつつあります。ですから大切なことは、小さなオペレーションがちゃんとお互いのノウハウなどの情報を交換してネットワーキングしていくことだと思ううんです。ですから、小さいということは決してマイナス、ネガティブではなくて小さいからこそできることが沢山ある。というのは私たちは小さいところだから、孫さんのような大きな事はできないのだけれど、小さいことなら自分のところでできる、そういった仲間を無数に増やしていく、それがうまくネットワーキングすることによって大きな力になると信じてやっています。

ロビンス博士:

ITや電話業界では沢山の企業がそれぞれ毎の、ミニチュアライズされた改革を実践しています、もちろん日本でも。皆さんは以前は読み物の世界だった只中にいるのです。大企業だけでなく、今は小さな身軽な会社にとって大変興奮させられるような時代です。儲けることのできる揺れ動く時代です。

鈴木代表:

ほうとくエネルギーの志澤さんにマイクを渡してその理念を語ってもらいたいのですが。今たままた目があったのですが、私の地元で私たちと一緒にエネルギー会社を創り、今役員をやっている志澤さんにコメントを貰いたいと思います。

志澤さん:

小田原でまさに10月15日に1メガの太陽光発電所を、1口10万円の市民出資で1億円集まりまして、やっと発電を開始できました。地域で再生可能エネルギーを進めていくということがとても重要かなと思うんですけれど、地域と再生可能エネルギーの拘わり方みたいなもの、これが何か、先程協同組合というお話もあったんですけれど、どういった拘わり方をしていくのがベストなのかということにもしアドバイスがあればぜひ頂きたいと思います。


ロビンス博士:

日本の状況はアメリカよりずっといいのですが、日本には意思決定の遅い旧いモノポリーがあります。起業家にとってはそんなおいしい目標があるのです。そしてうらやましいことに、先程はお話はしませんでしたが土屋先生が創り、導いた学校があります。そこでは屋根に実装するポータブルパネルのやり方を教えています。生徒はそこで学び、誰かの家の屋根にパネルを実装するのです。コントロールセンターでモニターされ集められた需要に応じて系統を通して電力を配分するわけです。私の住んでいる近くの古い小さな町にも似たようなオペレーションがあり、そこで学んだ人がで太陽パネルを実装してきました。この小さな学校は日本のものほどは洗練されてはいません。しかしながらそのやり方は広く普及してきました。

あなた達は財務調達改革も見つけ出さないとならないでしょう。
財務調達の必要な例の一つとして、住宅の太陽光発電市場は非常に大きいことに気がつきました。プロジェクトでポートフォリオが拡がると安い資本を安全に集めてくる必要があるからです。もう一つの流れとして、5メガワット以上のプロジェクトでは大規模でありますので太陽光電力会社としてのデューデリジェンスの過程での正当性が要るということもあります。皆さんが持つ太陽光屋根発電でも、3日間ほどのデューデリジェンスが必要でこれは負荷が大きすぎます。それなので90%のプロジェクトではこのコストは高すぎるのでこの過程を経ていません。そこで私たちは財務のチームも太陽光発電チームに入れて真の太陽光プロジェクトを作りどうなるか見ています。それは住宅ローンに対する個々の信用度合いのようなものです。その度合いはオンラインにて15分ほどで得ることが出来ます。これは太陽光屋根発電の全リスクを表すものとなります。デューデリジェンスはこれで3日間ではなく2時間となります。

鈴木代表:

ここでお詫びをしなければなりません。大変時間が押していて9時半までにここを出なければならないという状況があるようです。最後に一言だけロビンス先生にアドバイス頂きたいことがあります。実は私は今去年から地元小田原と箱根の商工会議所の会頭を務めております。ですから私の親団体は日本商工会議所なんですけれど、日本商工会議所は残念ながら早く原発を動かせと言っちゃっている人達なのでなかなか難しいのですけれど、なかなか大きなところに期待をし、何かを変えてくれと言ってもなかなか変わらない現実、これが現実だと思います。ですから先生もおっしゃるように自分が出来るところから小さくともいいから始める。でその仲間をどんどん増やしていくことかなと思っています。そういう中で私たちエネ経会議は申し上げたような活動しているわけですけれど、中小企業の、地域でそういうことを意識を持ってやっている私たちに対して最後1分位で何かアドバイス、応援メッセージを頂ければと思います。

ロビンス博士:

これは生物的進化と似ているんですが、哺乳類と恐竜との競争だと分かります。デュポン会長エドガー・ウーランドさんが言ったこと“古い考えに取りつかれている会社は問題にはならない、なぜならば長期的にはなくなるのですから”に勇気づけられて下さい。

鈴木代表:

どうもありがとうございました。


録音をベースにできるだけ忠実に講演と会話の内容を記述するように努めましたが、一部録音がよく聞き取れない、英語の意味が分からないところがありましたので飛ばした部分があります。また通訳の方の翻訳ではなく、録音から全て起こした文章ですので一部正確でない訳の部分もあるかもしれません。

                           文責 事務局 山口