茨城県鉾田市の太陽光規制条例の問題点 | おやまだやまと公式ブログ『推譲(すいじょう)』

他の地域の条例なので全然知らない動きだったのですが、先般、茨城県鉾田市という行政体で

 

鉾田市の豊かな自然環境の保全と太陽光発電設備の適正な設置及び管理に関する条例を制定しました。 | 鉾田市公式ホームページ (hokota.lg.jp)

 

こんな条例が施工されました。

 

日本農業新聞にも記事が掲載され、私はその記事は直接は読んでいませんが、


関係者からそうした条例の制定のことをきかされて、調べて、鉾田市の生活環境課だったかな?所管に電話し確認しました。

 

所謂再生可能エネルギー条例というのは


①理念型

②促進型

③規制型


と分類されます。

 

例えば、神奈川県の再エネ条例は①、小田原市のそれは②、今回の条例は③に分類されます。

 

私が神奈川県松田町で制定しました松田町再エネ条例

 

松田町地域の持続的発展に資する再生可能エネルギー利用の促進に関する条例 (town.matsuda.kanagawa.jp)

 

これは、どちらかと言えば①ですが、②の要素がない、とは言えません。

 

最近は、太陽光発電の乱開発が問題視されており、専ら条例も③を制定する自治体が多くなってきているように思います。

 

しかし、法律家の端くれ(行政書士)でもあり、憲法ゼミで法律の勉強もした人間からすると

 

この規制型条例は、憲法との整合性の中で、やや問題があるのではないか?と考えています。

 

ご案内の通り、憲法ではその22条と29条で経済的自由権の規定を設けています。


この中では、経済活動の自由という事も含まれていると解されており、権利主張として野放図ではないものの、基本的には自由である旨、規程されています。

 

何か、規制をかける時に、その規制は合理的な範疇に入るのか?どうかが厳しく判断されます。

 

有名な判例としては、薬事法だったかと思いますが、薬局距離制限は憲法に違反するか?が争われ、


規制に合理的な理由が認められない、とされて、それがあってドラッグストアがこれだけ氾濫するようになりました。

 

今回の鉾田市の規制は憲法に違反する可能性を秘めている

 

私はそう思っています。

 

鉾田市に例えば農地に太陽光発電を設置することを抑制することについて合理的な理由があるかないか?


これは個別具体的な案件が出てきて、鉾田市が例えばこの条例を盾にして民間事業者の開発を実質的に止めようとした時には、


民間事業者によって、この条例は憲法違反だから効力を有しない、というような理屈で「違憲無効訴訟」のようなものを提起される蓋然性は十分にある、と思います。

 

もちろん、憲法はある訴訟(トラブル)がある時に、これを直接適用しないで間接適用するのが常道ですが、話がこじれれば憲法判断をさてしまう可能性がある、と私は思います。

 

条例の関係で想起されるのは、石原慎太郎都政の時に国に喧嘩を売って作りました外形標準課税を定めた条例が憲法に違反するとされて、


地方自治の条例制定権との兼ね合いの中で、結局は独自に課税の根拠を条例で作った東京都が敗訴して、


その条例に基づいて徴収された税金の返還請求は企業側の勝利となった、という事案です。

 

条例が議会の承認を経て作られればそれは有効ではありますが、それが本当に憲法との整合性など問題があるかないか?は司法の場で判断される事でもあります。

 

私は近代・現代憲法の理念に照らせば、私的な経済活動の自由が広く認められている自由経済社会の中で、


公権力が、その活動を規制する条例(法律も含めて)を鶴という事は、つまり私権の制限と受け取られかねない条例を作るという事については

 

慎重の上にも慎重に

 

行うべきである

 

そう思います。

 

その点、この鉾田市の条例については、有識者に諮問したわけでも、


市民委員を入れて条例を検討したわけでもなく、


ただ、行政当局が一方的につくったものである、とのことで、


その条例制定過程から見ても疑義を感じざるを得ません。

 

先ほど、私どもが作りました松田町の再生可能エネルギー条例は、


有識者として東京都の職員だった学識経験者や東京農工大学や早稲田大学の先生を学識経験者として入れました。


町民にも委員に入ってもらい町長の諮問に対して答申する、という形をとりました。


まあ、ちょっと変に書き換えられてすったもんだはありましたが、


しかし町民の意見や有識者の意見も反映させるというプロセスを踏むことで、恣意的な制定ではないことを担保しました。

 

そういう仕掛け、工夫もなく、ただ、一方的に、この条例がない地域ならば自由にできる経済活動を規制する条例を作ったことは

 

大いに疑問点が残りますし民主的でない

 

行政当局の権利の濫用

 

そういう考えを持っています。

 

規制型条例については、真に住民の権利利益の擁護に資するのか?という観点から

 

この私権の制限は合理的な根拠や理由があるのか?

 

そういう観点から、市民や国民のチェックが入らなければならないと思います。

 

そういう意味で、この鉾田市の条例は問題がある。と言わざるを得ないと、条例を作ったことがある経験を持つものとして考えています。