湘南藤沢徳洲会病院 内視鏡内科の医師、永田充です。

 

ピロリ菌というと、

  •  胃がんの原因
  •  除菌した方がよい菌

というイメージを持っている方が多いと思います。

 

実際、現在は胃がん予防の観点から、
ピロリ菌の除菌が広く行われています。

 

一方で、

「ピロリ菌は食道がんを減らしている可能性がある」

という、少し意外な研究結果も報告されています。

 

今回は、
ピロリ菌と「食道がん」の関係について、
できるだけ分かりやすく整理します。

 

 

食道がんには2つのタイプがあります

実は、「食道がん」と一言でいっても、
大きく2種類に分けられます。

  1. 食道腺がん…欧米で増えているタイプ
  2. 食道扁平上皮がん…日本で多いタイプ

です。

 

この2つは、
発生の仕組みや危険因子が少し異なります。

 

ピロリ菌は「食道腺がん」を減らす可能性?

近年の複数の研究では、

ピロリ菌感染者では、食道腺がん(欧米で増えているタイプ)が少ない傾向

が報告されています。

 

理由として考えられているのは、

ピロリ菌によって胃酸の分泌が減る

ことです。

 

胃酸が減ると、

胃酸の逆流(逆流性食道炎)が減る

バレット食道(胃酸の逆流で食道の粘膜が変化した状態)が減る


食道腺がんのリスクが下がる可能性がある

 

と考えられています。

 

では、「食道扁平上皮がん」は?

日本で多いタイプの「食道扁平上皮がん」については、

 

多くの研究で、ピロリ菌とのはっきりした関連は認められませんでした。

 

重要な注意点

ここで誤解してはいけないのは、

 

「ピロリ菌感染者では、食道腺がん(欧米で増えているタイプ)が少ない傾向」

→「ピロリ菌は除菌しない方がいい」

 

という意味ではないことです。

 

ピロリ菌は、

  • 胃がん
  • 胃潰瘍
  • 十二指腸潰瘍
  • 胃炎

などと強く関連しています。

 

現在は、

 

胃がん予防の観点からピロリ菌除菌のメリットは大きい

 

と考えられています。

 

また、今回紹介した研究の多くは、
欧米のデータを含んでいます。

 

日本と欧米では、 食道がんのタイプ自体が異なる

という背景があります。

 

そのため、

研究結果をそのまま日本人に当てはめる際には注意が必要です。

 

まとめ

・ピロリ菌は食道腺がん(欧米で増えているタイプ)を減らす可能性が示唆されている


・一方、食道扁平上皮がん(日本で多いタイプ)との関係ははっきりしない
 

・ただし、ピロリ菌は胃がんの重要な原因であり、除菌のメリットは大きい

 

ピロリ菌と食道がんの関係は、
まだ完全には解明されていません。

 

今後さらに研究が進むことで、
より詳しいことが分かってくるかもしれませんね。

 

参考文献:
Liu X, et al. J Transl Gastroenterol. 2023

 

※この記事は、病気や検査について一般的な情報を分かりやすくお伝えする目的で書いています。症状や検査の必要性は、年齢や体質、既往歴などによって異なりますので、気になる症状がある場合は、早めに医療機関へご相談ください。

 

この記事を書いた人

永田充(消化器内視鏡専門医/湘南藤沢徳洲会病院 内視鏡内科 部長)  

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