(どこへ・・・!)

「白亜、後ろぉ!」

物陰から真白がアレイスターの位置を俺に教えてくれる。

『 障 害 に な り か ね な い と い っ た の は 君 だ け だ 』

位置はわかった。俺の視界にいることもわかった。しかし、なぜだかこいつの発する言葉が解からなかった。
言霊っていうのはこういうことなのだろうか。
あいつの言う言葉、単語一つ一つに殺意がこめられており、ソレに俺はおびえそうになる。

「彼女には手をださない―――」

「うぉおおおおお!」

裏拳をしゃべっていたアレイスターに叩き込む。
真白は標的ではないという。
ならば遠慮はいらない。
だが。
何もない空間に俺の拳はさえぎられた。

「っ!?」

俺の拳に魔術は通じない。魔術や魔法の壁ならば俺の白色の性質「染色」が発動するはずなのだが。

「ククッ・・・何を驚いている・・・まさか、色を制することができるのが君だけだとおもっていないだろうね?」

「なん・・・だと?」

まさかこいつの色も・・・

「まさか・・・お前の色も白・・・なのか?」

「不正解だよ、白色の魔術などないだろ、少年。私の色は『黒』のみだ」

「黒色・・・だと!?」

何かの本で読んだことがある。
黒色の性質、それは。

「『侵蝕』・・・!」

侵蝕とは、白色の染色となんら変わりはない。
だが、侵蝕は、白色と違い、制御ができない。
白色と他の色は、一人の人間の魔力の色として共存できる。
しかし黒色は無差別に色を黒色に『侵蝕』してしまうため、他色と同時に一人の魔力の色としては共存できない。それだけなら『俺』みたいな例外はいるかもしれない。だが侵蝕には他の色にはない性質なのだ。
色にだけ働きかけるのではなく、命そのものに働きかける。
文字通り、命を侵蝕する

(クソ・・・!ふざけやがって!)





次へ
LostColorに向かって歩いていると、突然さっきまで俺たちがいた辺りのビルが炎に包まれて倒れた。
おそらく、あの威力、あの範囲、あの魔力の質は。

「鮮華・・・さん?」

おそらく鮮華さんの『魔術』でまちがいないだろう。
しかしあの人が無闇に魔術を放つとは思えない。
なにかあったのか?
真白も同じことを考えていたらしい。

「白亜・・・あれって鮮華さんの魔術だよね・・・?なにかあったのかな?」

「・・・いってみよう」

足に力をこめ、走り出そうとした瞬間、先ほどの寒気にまた襲われて後ろを振り返る。

『御機嫌よう』

振り返ると、そこには口があり、そこに人がいた。
咄嗟に殴りかかった。
右腕が口に触れると口は音を立てて消えていく。

「空間系魔術・・・!」

「おいおい、いきなり何をするんだい」
男は口が消える瞬間、口の中から飛びのいた。

「挨拶ぐらいさせてくれよ」

夜闇のようなマントの埃をはらい、男は体を90度に曲げ、右腕を腹に、左腕を後ろにやり、礼をした。

「はじめまして、我等が邪魔者。ワタシの名前はアレイスター・クロウリー。または魔法(神秘)ともいう」
「アレイスター・・・クロウリー!?」

「白亜、アレイスターって・・・藤井先生がいっていた物語の・・・!」

「嘘だろ!?物語の中の話じゃなかったのかよ!」

アレイスターは溜息をつくと解かってないなというように首をふり、俺たちに向き直る。

「物語など、人の空想。人が空想しゆることは怒りうることなのだよ」

クツクツとアレイスターが嗤う。

「先ほどもいったが私は魔法。魔法とは人の願いをかなえるためのもの。そして君はその願いの障害になりかねない。だから」

ゾクリと鳥肌がたった。
これだ。先ほどの不可解な寒気の原因。

「 死 ん で く れ な い か 」

魔術師でも魔法使いでもない、俺の触れたことのない存在。
それから発せられる本当に純粋な殺意。

「真白!逃げろ!!!」

「でも・・・!」

「逃げろ!!!」

嫌がる真白を言葉の圧力で後ろに下がらせる。
こいつはシキなんかと違う。
本当に恐ろしい。
真白をかばいながら戦える自信なんてない。

「何を勘違いしているんだい?」

「・・・は?」

拳を握り、臨戦態勢にはいった俺に、構えもなく、右手で顎をなぞり、解せないという風にしたアレイスターがポツリといった。

「私はいったはずだよ?障害になりかねないといったのは」

アレイスターの黒い衣服が一瞬ぼやけた気がした。
次の瞬間。
消えた。

「!?」

俺の視界から消えた。










次へ
そのときの私の顔は酷いものだったとおもう。私の心を支配していたのは怒り、悲しみ、殺意。
どれも負の感情。
それを魔術にのせて放とうとする。
おもえば馬鹿だったと思う。赤色一色ではなくて、七色全色つかっていれば、あるいは倒せたかもしれないのに。

『罪を断罪する炎よ、我が名に従い、かの愚者を無へと還せ!灰は灰に、塵は塵に!神をも焼き殺す地獄の業火!』

赤い球が周りの酸素を食らい、大きく膨れ上がる。

『断罪の業火(フレイム=ヘイズ)!!!!』

そう。落ち着いて、本気で始末していれば、ここで終わっていたかもしれないのだ。
だけど私は怒りに心を支配され、冷静さを失い、本気を出せなかった。
球から炎が放出される。
その炎は一直線にアレイスターへとむかっていく。
そしてアレイスターは・・・避けない。
アレイスターを貫通しても炎はなおも勢いを弱めない。
そのまま向かいのビル、そのまた向かいのビルを直撃、そして全壊させる。おそらく5つのビルを貫通、全壊させたあたりで炎は消える。

「・・・やったか?」

炎のあまりの高温に、周りのアスファルトなどは溶け、湯気をはなち、その湯気で周りは白くなっていた。

「まさか」

人を馬鹿にするような声が湯気の中から聞こえた。

「私がこの程度で死ぬわけないじゃないか。ただ・・・七色全部使っていたら、私も殺せたんじゃないかな?怒りに支配されて冷静さを失うなど・・・やはり人間の域をでていないな・・・『欠落した虹』よ」

「貴様ァ・・・!」

もう一度魔術を発動させようとした瞬間、強い風がふき、湯気が掻き消された。そこに見えた顔は楽しくてたまらないという顔をしたアレイスターだった。

「ほら・・・それが人間の域をでていない証さ・・・。ククッ。今日の実験も済んだ、それに、面白いものを見せてもらった。楽しかったよ。大満足さ。それでは」

アレイスターがお辞儀をすると後ろに大口が現れた。
3メートルぐらいの大きさはあった。そこにアレイスターが飲み込まれていく。

「御機嫌よう・・・『欠落した虹』」

最後に私を侮辱する言葉を放ち、口の中にアレイスターは消えていく。口は完璧に閉じると、その空間から消えた。



一人残された私は、自分を責めた。
何一つ守れない・・・なにが魔法使いだ。

「・・・・・・クソッ!」









次へ