「鮮華さぁん!!!」

黒桐の声で鼓膜が破れるかと思った。
さっきの借り、今返すぞアレイスター。

「お前の色の話は聞かせてもらったぞ、アレイスター。
なるほど、私の魔術を食っていたのか」

種がわかれば、なんてことはない。

「それにお前・・・万全じゃないだろ」

「!?」

アレイスターが仮面越しに目を見開く。

「・・・なぜわかった?」

「黒桐の戦いをみていてね気づいたんだ。お前、黒桐に殴られたとき、自分は染められないみたいなこといってただろ」

「・・・・・・」

「あの時怒ったのは、黒桐に殴られてプライドが傷つけられたからじゃない・・・少し、本当に少しだが黒桐の染色に魔力をもっていかれただろう・・・?」

「・・・・・・・・・」

ニィと私は笑う。
黙るということは図星だ。

「やはり『あの時』、お前は大量の魔力を失ったようだな、アレイスター」

「お見通しか・・・『欠落した虹』」

今度はあいつの挑発には乗らない。そこまで私は馬鹿じゃない。

「あぁ・・・私は『虹』。この大空にかかる『虹』さ。なんでもお見通しだよ」

ポケットに手を突っ込み、魔法具を取り出す。
魔法具、ジェムストーン。
術者の変わりに、魔力の反動を受けてくれる、身代わりの石。
それを回りにばら撒く。

「さて、ここでまた大量の無駄な魔力を失ってもらおうか・・・アレイスター?」

「くっ!この欠落した虹ガァアアアアア!!!」

「安い挑発にはもう乗らないよ・・・」

右腕を高いところまであげる。

「無効化(ディスペル)!!!」

術の名をいうと同時に指をならす。
その瞬間、ジェムストーンが砕ける。

「おのれええええええ!!!!」

黒い影はメッキがはがれるように地面から剥がれ落ち、元の地面にもどった。

「ぐ・・・はぁ!はぁ!」

アレイスターが肩でいきをしている。相当の魔力を今ので失ったらしい。
こいつにとっての魔力は生命力と同じだ。

「ふふっ・・・さてアレイスター・・・私も弟子たちをかばって本気でかかってくるお前をなんとかできる気はしない・・・だがお前もこんなところで散るつもりはないのだろ・・・?」

「当然・・・!あの子の願いはまだかなっていなのだから!ハァ・・・ハァ!」

「ならば退け、アレイスター」

ギリッ・・・とアレイスターが歯を食いしばる。

「忘れるなよ・・・!『欠落した虹』!今をどれだけ他者を助けるために生きようと、貴様がしたことは拭えぬのだからなぁ!!」

私の前から消えたとき同様、口に飲み込まれ、消えていく。
・・・解かってるともさ・・・アレイスター。私がしたことは償えやしないんだ・・・。でもな。


「たすかっ・・・た?」

物陰に隠れていた真白がペタンと地面に腰をおろす。腰が抜けたのだろう。
いまさらこの馬鹿弟子ども、置いて自ら死ぬわけにも行かないのさ。

「あぁ、たすかったよ」

・・・久しぶりにみたきがする。
鮮華さんが、笑うところ。
私があの人とであって、数回しかみたことがないその笑顔が、この状況でみれるなんておもってもいなかった。

「・・・・・・」

何も・・・できなかった。
結局俺はなにもでいなかった。
行動はした。だが結果がついてこなければソレは何もしてないに等しい。

クソッ・・・」

ダン!と地面を叩く。

「力が・・・覚悟が足りないって言うのか・・・!」




―――『開幕』終わり。
ボボッ、と音をたてて、球体は燃え上がる。
そして高速回転をしながら俺に襲い掛かってきた。
俺に迫ってくる間にも、炎は空気を吸い込み、大きくふくれあがっていく。
拳を握り締める。
さっきは効かなかった・・・。でもやるしかない。あれをなんとかしなければ後ろの真白にまで被害がいく。

「アァァ!!!」

両手を前に突き出し、構え、燃え上がる球体を抑える体勢になる。
幸いにも球体はバスケットボールぐらいの大きさなので、両手で押さえられるぐらいの大きさだ。
ギャギャギャギャギャギャと音を立てて俺の手と球体がこすれあう。

「うぉおおおおおお!」

その摩擦でまた炎が勢いをます。
ありったけの魔力を具現布へこめる。

「あぁああああああ!」

バスケットボールほどの大きさがあった球体は、野球ボールぐらいの大きさに縮み、やがて俺の手の中で消えた。

「はぁ・・・はぁ・・・!」

「・・・詠唱を省いたとはいえ・・・よもや消されるとは・・・屈辱・・・ならば」

バン!と両手をアレイスターが合わせると、アレイスターの足元から黒い影が伸びる。
しかしその影は普通の影とは違い、その影には口がついていた。

「失礼した、邪魔者。手を抜いてすまなかった。わびといってはなんだが・・・少し本気を見せるとしよう!!!」

黒い影は俺の足元まで伸び、そして真白の足元まで伸びた。だが影の伸びる勢いは止まらず、アレイスターを中心に半径50メートルのびたぐらいでやっと止まった。

『人の心に巣食いし『暴食』よ、我が命に従いて、その姿を顕現せよ!』

影についた口は大口をひらき、各々に醜い声をあげる。

「な・・・なにこれ!」

真白が悲鳴をあげる。

「なんだ・・・これ!」

「魔術だよ・・・少年」

「こんなふざけた現象がまだ魔術だって言うのか・・・!?」

さっき言った、本気を少し見せるとは、魔法ではなく魔術という意味だったのか。

「くっそおおお!」

跪いて両手を影で覆われた地面に置く。
しかし染色はできない。

「クック・・・覚悟が足りないんじゃないのか?少年」

ニィとアレイスターが嗤う。

「クソッ!クソッ!クソォオ!」

俺程度の覚悟じゃ・・・真白を・・・何も守れないって言うのか?
クソ!クソォ!

「終わりだよ、少年」

クツクツと喉をならして嗤う。

『顕現せし暴食よ、汝が欲を満たす生贄、今ここに!』

詠唱を終わらせた。

「さぁ!食らい尽くせ!!!」

グァァ!と口がさけるかというぐらいに、影の口は大きく開く。

『EatingHe―――』

「させんぞ、アレイスター」

「!?」

俺とアレイスターは同時に声のした方向、上を見る。色神鮮華が空から降ってきた。

「鮮華さぁん!!!」

喉が裂けるぐらい、俺は叫んでいた。








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白色と黒色の戦いならばどちらが上かと聞かれれば解からないとしか答えられない。
黒色だけ、などきいたことがないからだ。
なぜなら黒色は命をも侵蝕する。それはその性質を持つ本人すら例外ではない。
だから黒色の魔術師は短命で、魔術師として完成するまえに死んでしまう。

「なんで黒色なんて色で・・・根源までたどり着けた?」

バックステップで後ろに下がり、体勢をたてなおしつつ、問う。

「簡単なことさ・・・黒色の性質は『侵蝕』・・・白色となんらかわりないが命にも働きかける。だから」

「だから・・・?」

「 他 者 の 命 を 食 ら っ て や れ ば い い だ け の こ と じ ゃ な い か 」

正気か・・・こいつ・・・。
自分の命のためだけに、他者の命をくらうなんて・・・。

「君の白色の場合、色だけだからね・・・そんな芸当はできないだろ」

先ほどの『白色と黒色の戦いならばどちらが上かと聞かれれば解からないとしか答えられない。』という問いの回答がでた。
黒のほうが上だ。
相手は問答無用で俺の白色を食らう。
だが俺の白色は覚悟が必要だ。
―――でもな・・・。
つま先で地面をトントンとける。
指を鳴らし、拳を固める。
―――負けられないんだよ!
さっきコイツは真白は標的じゃないといった。
だけど、他人の命をなんともおもわない奴がいう言葉なんて信じられない。
失いたくないのなら・・・

「自分で守るしかないだろ!!!」

不利かもしれない。でも自分で守るしかないのだ。
さっきのシキのときより、覚悟は固まった。
あとは試してみるのみだ・・・。

ジリジリと距離をつめる。
さっきのように一瞬で背後にまわられないように、アレイスターから目を離さないようにして。
一瞬のスキを、見逃さないようにして。
あいつは言った。自分は魔法であると。
ならば俺の白色で倒せるはずだ。
一瞬のスキをついて、一瞬で倒す。
それ以外俺に勝ち目はない。

「・・・・・・」

「!」

アレイスターが俺から今視線をはずした。
今しかない。
勢いをつけて数メートル離れたところにいるアレイスターにむかって一気に距離をつめた。

「これで!!!」

振りかぶり、殴りかかる。
鈍い音を立てて、アレイスターの胸に俺の右拳がめり込む。
しかし。
何も起きない。

「なん・・・だと!?」

「ふ・・・君程度が私を染められるとおもったか」

仮面から覗き込む目。
その目に見つめられただけで体が動かなくなりそうだった。
だが本能が逃げろと体につげ、体は本能に従い、バックステップでまた後ろに下がる。

「私の黒色に侵蝕されなかったことは褒めてやろう・・・しかし」

アレイスターの周りの空気ががらりとかわる。
重力がましたような、そんな重い空気がそこに漂っていた。

『 人 間 風 情 ガ 我(ワタシ) ヲ 染 色デ キ ル ト 思 ウ ナ ヨ 』

先ほどの殺意とは比べようもない殺意が言葉にこめられる。
プライドを傷つけてしまったことで、殺意がましてしまったようだった。
決めるなら今の一撃しかなかったというのに。

『ソノ考エガ如何ニ愚カ身ヲモッテ知ルガイイ』

そういうとアレイスターが足で地面を蹴りつける。
するとけりつけられた地面から黒い水のようなものが浮かび上がってきた。
黒い水が球体になり、球体は高速で回転している。

『死沼へ誘う鬼火(ウェル・オ・ウェスプ)!!!』






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