視界が・・・暗い。
―――俺がお前の願い、叶えてやるよ!
幼いころ、真白にした、約束。
大きくなればいずれは立派な魔術師になれると思っていた。そうすれば真白の願いもかなえてやれると思っていた。
しかし現実は残酷である。そんなもの幻想でしかなかったと思い知らされるのだから。
約束したのは7歳の時。
嗚呼、あの日から10年もたったのか。あの日の約束ははたせていない。努力はしてきた。しかし報われない。
本当に、現実は残酷だ。
だんだんと視界が明るくなってきた。
「・・・眠ィ」
寝覚めの悪い夢をみた。夢のせいもあるだろう、そしてはっきりと記憶がある辺り、まったく眠れていなかったようだ。
しかし、本当に10年なんて早いものだ。
昔の俺が今の俺を見たらどう思うんだろう。
多分・・・がっかりする。
そんなことをおもいベッドから身を起す。
そして窓の外を見ると、世界は俺の小さな悩みなど無視して、輝いている。
(ま・・・真白も俺とした約束なんて覚えてはいないだろうけどな・・・)
ふと視線を窓の外から中の時計へと移す。
8時・・・?
「寝過ごした・・・!」
ベッドから飛び起きて着替える。
手早く制服に着替え、身支度をする。階段を飛ぶように降り、歯ブラシを口に銜えたとたん、思い出した。
「真白ー!起きろ!遅刻するぞ!」
夢に出てきた幼馴染、真白。あいつが幼い時に両親は他界。親戚は居らず。親同士で仲の良かったうちに真白は預けられることになったのだ。
ちなみにうちの両親は俺等が高校にあがると同時に世界旅行(行き先不明)へ出てしまった。
「一時限目、藤井の対黒魔術だぞ!遅刻すると殺されるぞ!マジデ!」
魔術。生命力を魔力(マナ)へと変換させ、発動させる現象。
魔力には生命力の性質が反映される。つまりは人次第で性質が変わってしまうという一面があり、それは色で区別されている。例えるのなら赤色の性質は炎。
通常の人なら3~4色もっていて、5色なら優秀、6色なら天才、7色なら化け物といったランクの縦型魔法社会。
そして俺こと黒桐白亜は1色。そして性質は魔術という魔術が使えないという、他の色の制御につかわれるというオマケともいえる、白色。
もちろんオチコボレ。
真白は2色もっていて、1色は俺と同じ白。もう1色が緑。生命力、風などを操る性質がある。
俺より色はもっているがやはりオチコボレ。
オチコボレはたいてい集められて同じクラスに入る。
幸か不幸か俺と真白は同じクラス。つまりは時間割も同じである。
そして一時限目の藤井の授業は・・・というより藤井が問題なのである。何を考えているかわからないやつで、腹黒い。
遅刻でもしてみろ、何をされるか。
「マーシーロオォオ!起きろってえええ!」
階段を駆け上り、真白の部屋のドアを叩く。しかし反応はなし。
「オッマ!あいつに居残りでもさせられてみろ!鮮華さんのところもいけなくてゲッツー(2回死亡)ですよ!?」
ドアを叩いていると真白の声がかすかに聞こえてきた。
(起きたか!)
叩くのをやめて耳をすます。
「・・・むにゃ・・・あと・・・50分・・・」
「ちょっ!50分とかなんだよ!普通5分でしょ!え!マジで起きてくださいよ真白さぁぁぁぁん!」
「わかったよぉ・・・起きるよぉ・・・」
「早くな!?手早くだぞ!?」
・・・5分後。
「遅いわぁぁ!」
待ちきれなくなりドアを開ける。
すると・・・。
着替えている途中に寝てしまったのだろう。
パジャマを上半分ぬぎきったところで真白は寝ていた。
「おまっ!?」
最初に言っておこう。不幸な事故であると。
そして不幸とは、事故とは続くものである。
「おーう、コクトー!遅刻するぜー?」
「白亜・・・遅れるぞ」
友人二人が家に向かえに来たのである。
(ッアー!!!どうしろってんだよこの状況!)
二人は迷いなく二階に上がってくる。多分まだ寝てると思ってるんだろう。
「まーた真白ちゃんねてるん?」
ニコニコしながらおしゃべりな金髪、土門がドアを開けてくる。
「・・・・・・」
もう一人の友人、無口な悠李は固まっている。
「ワーオ悠李君、銀髪不良こと、我等が親友の黒桐君が黒髪の学園のアイドルこと、真白ちゃんを襲っとるでー?」
「白亜・・・犯罪よくない」
「誤解だあああああ!」
一日の初めの朝から、不幸は始まった。