「見つけた・・・!」
シキたちはビルにしがみついている。
おそらくエサ・・・、人間を探しているのだ。
しかしビルは半壊していて、もう人はいないようだ。
次にシキが目をつけたのが道路の逃げ惑う人。
中には崩れてきたビルの破片で怪我をした人が多数。
「っち・・・!真白!」
「うん!」
真白はうなずくと両手を合わせる。
『生命の樹よ、大地に根を張りその生命を分け与えよ』
真白の色は緑と白。緑色は生命や風を操る性質、『生命の営み(ライフワーク)』がある。真白は風と生命、どちらも操る。
真白が立っていた一歩後ろに葉がついていない、枝がバラのトゲのようになっている樹が生える。
『生命の樹(セフィロト)!』
あたり一面が緑の光りに包まれる。地面に流れる生命力を、この樹を介してあたりにいる人に生命力を与える魔術だ。
「ギィイイ!!」
異変に気づいたシキは、のそりのそりとした移動から、ダッシュしてきた。
「真白!サンクチュアリを張るんだ!」
「間に合わない!」
真白があせる。
しかし俺は顔色を変えない。
前を見据える。
シキと目が合った。ような気がした。
このシキは目がなく、全身が白く、背中に羽が生えている。体格は俺の3倍はあるだろう。
その3倍の体格の腕を俺に振るってきた。
常人ならそれをうけとめるだけで骨が折れるだろう。
しかし。
拳を構える。
俺の身長ぐらいはあるであろう腕は容赦なく俺を襲う。
それを拳ひとつでおさえようとする。
傍から見たら俺はおかしい奴だと思われるだろう。
不可能に近いのだから。
―――しかし・・・それは魔術師(一般人)の考えだ。
呪文の詠唱が完了していて、強化系の魔術師ならそんなこともできよう。しかし俺の白色に、今(歴史上)のところ、使える魔術はない。
そう、俺が使うのは魔術じゃない。
俺はただの一般人(異能者)。
白色だけが人の生命力(性質)だなんて前代未聞の、異能者。人に裏や表があるように、色も一面性だけではない。つまり俺は表しないのだ。
白色の性質は『染色』。他の色を抑えるときに使われる色。染色は色を薄める、つまりは白色に近づけて、威力を抑えることが出来る。
しかしそれは他の色があった場合。
ならば一色しかない俺の白色の使い道は?
簡単だ。自分の生命の性質(他の色)を完璧に塗りつぶしてしまう恐れがないのなら。
相手の性質を染色し、己が生命の性質(色)と変えてしまえ。
腕に巻かれた包帯、『具現布』は、色を通して、それを具現化するもの。
高等魔術師なら具現化なんてたやすいものだが、俺はただの一般人(異能者)そこまでの技術はない。
シキの拳と俺の拳がぶつかる。ゴツリと鈍い音がする。
これだけでは染色は起きない。
染色する上で大切なのは精神。
己が内のものを変えるのは簡単だ。しかし己が外を変えるのは何事も難しい。
へたをすれば逆に飲み込まれてしまう。
だから心(精神)が大切なのだ。
―――飲み込まれないという覚悟。そして・・・その毒皿(色)を飲み込んでやるという、覚悟。
俺が飲み込まれてしまえば真白に被害が及ぶ。
だから俺は負けられない。
いつか願いをかなえてやると約束したのだ。
死なせられない。死なせられないのなら、守る!
「死なせるわけにはいかねぇんだよぉおおおお!」
色の残りカスでできたシキ。これを染色できないわけがない。理屈はそろった。覚悟は、守る覚悟は十分!
「があああああああああ!!!」
シキの拳が俺の拳に触れたところから消えていく。
「ギィイイアアアアアアアア!!!」
シキの断末魔。
バン!という音とともにシキとその断末魔は消えうせる。