元連合赤軍の植垣氏が直々に俺にビールを注いでくれて、なんか感動してしまった…。
他にも高級日本酒の越乃寒梅などを注文。
本当にバロンはその名の通り不思議な酒場だ。植垣氏本人と直々に会話したけど本当に今の彼はただの爺さんにしか見えない。
まず話した事は、酒やワインの銘柄や好きな服や腕時計のブランド、参院選や野球観戦などの普通に世間話。 流石に初対面でいきなりあの事には触れられない…。
ツマミとなるお通しは完全にランダムらしく、枝豆や柿の種、ハムチーズや蒲鉾などの王道から…手羽先煮込み、牛タン塩、ホッケの炙りまで多種多様。
特に牛タンは美味かったな…他のはまあまあ普通レベル。
でも、ここは料理よりも主役は植垣氏であろう…。
既に刑期を終えた身とはいえ、殺人犯というレッテルは絶対に消えることはない。 彼ほど重たい十字架を背負っている居酒屋店主は日本全国探してもいないであろう…。
そして俺は、酒の力を借り…意を決して
核心に触れる話をしたが、意外にも植垣氏本人はケロッとした様子。 植垣は饒舌な口調でまるで武勇伝を語るように持論を展開。革命戦士としての徹底した共産思想…昭和の高度経済成長期当時、団塊世代の若者には日本を変えてやろうという気概に満ちていた。
だが結果的に暴走し、山岳ベース事件や浅間山荘事件を起こしたのが、彼らの成れの果て…。
どうやら以前から俺みたいな興味本位で来る客も多く、何度も例の事で質問されまくったとか…。 メンタルの強さは常人とは思えない。彼ほど数奇な運命を辿った人はそうはいない。
41年前、あの山岳ベースの総括から生き延び…吹雪の妙義山を越えて軽井沢駅で警察に逮捕されるが…もし、ここで捕まらなかった場合、坂口や坂東、吉野らと共に浅間山荘に籠城し、銃撃戦に加わっていたであろう。
そうなれば懲役20年では済まされず、坂口のように死刑か、最低でも吉野同様に無期懲役になっていた。
となれば、娑婆に出て居酒屋のマスターなんかやってないし、俺と直接会うことも叶わなかった…。 本当に色んな偶然が重なり、俺は連合赤軍の植垣康博氏とコンタクトが取れた!
植垣氏は居酒屋経営しながら著書も出版。 また、浅間山荘事件から40周年となった去年はテレビにゲスト出演している。 それは、植垣氏は新撰組における永倉新八的な存在で数少ない歴史の生き証人であるからだ。
現在も獄中の吉野雅邦とは手紙で文通したり、バロンの客にはダッカハイジャック事件時の乗客が来店したことも。
植垣氏が殺人を犯した事は事実であり、殺人は決して許されるものでない。
だが、歴史を紐解くと…幕末明治維新の頃、正義のための殺人や暗殺があった。
例えば水戸の天狗党は維新に先駆けて決起したが、幕府に鎮圧されて処刑された。全ては歴史が審判するのだ…。
一体、正義とは何なのか大いに考えさせられた…。
植垣氏は数少ない事件の生き証人であり、現在もなお贖罪の日々を送りながらバロンを通して我々にメッセージを発信している…。
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