【始まるから終わるから始まるから終わる】 | Endless-less

Endless-less

終焉は何処だろう ?

玉座に座する僕の足下に頭を垂れた、彼の長い長い髪を一房、手にとって口付けた。
鮮やかに蒼の色を纏った鴉色の其れは、指から零れそうに滑らかでいて、然ししっとりと確かな感触を手に与えた。

「綺麗だね」
「…」
「そして終わらないんじゃあないかとまごう程に、長い」
「…陛下が、伸ばせと命じたから」

そうだったね、そういえば、と小さく笑みを落して、未だ頭を垂れた儘の彼の、ゆるやかに腰元まで伸ばされ、床に波を描く其れを伏せ目で見つめる。一体、そう彼に命じたのは、どれくらい前だったのだろうか、思い出せなかった。

「でも、初めて会ったときから少し、否結構、長くなかったっけ?」

そんなことは、覚えているというのに。

「…さァ…良く覚えて、いませんね」

今度は彼の記憶の方が曖昧であった。
要するにお互い、記憶せんとするものの対象が少々異なるのであろう。
彼は僕の言葉を、私は彼の存在を、より多く記憶しているようであった。

「その羽と、同じくらいの長さで風に靡いていたから、覚えてる」
「…然様ですか」

淡々と、一定の間隔を置いて続けられる会話。それに何だか、違和感を感じる。
いぶかしんで、俯く彼の目を見遣れば、其の眼窩に、幾分か涙が湛えられていることに気がついた。

「おやおや…」

もう駄目なの?と、靴の爪先で顎を持ち上げ面を上げさせると、彼は小さく、いいえ、未だ…と吐息を吐いた。嗚呼、可愛らしい。床についたその両手が震えているのを、僕は見逃さしはしない。

「ふぅん、ギリギリまで耐えた方が、好きなんだ?」
「、…」

前髪に覆われていない方で僕を見上げ睨む、その眼球をフォークで抉り出したくて仕方がなかった。

「良い眼だね…もっと、反抗してくれたら其の分、痛めつけてあげるのに」
「…そんなことされたら身が、持ちません」
「ああ、悦過ぎて?」
「…」

然しどちらにせよ、

「未だ、終わりはしないよ。僕が飽きるまで、ね」