孤独な道標 【第十四章】~末路①~
【第十四章】
≪末路①≫
お盆休みを挟み、しばらく淳介には会わなくてもよい日々が続いた。それは私にとって束の間の幸せだった。
休み明け、私はどうしても気分が優れず2日間余分に休みをもらった。
淳介に会えば、必ず写真をチラつかせ脅迫してくるだろう。何もかもを失ってしまう恐怖に怯えた。淳介も、そんな恐怖を味わったんだろうか。
警察に何度も事情を聞かれ、いろんな人を巻き添えにして利用し、裏切り、左遷、転職、公安の監視、並大抵の人が冷静でいられるほどのことではないはずだ。
それなのに、淳介のこの原動力はいったいどこからくるのか私には理解できなかった。それでも、何日も仕事を休む訳にもいかず次の日から仕事に復帰した。
会社に置いてあった携帯には淳介からメールが入っていた。さすがにメールの内容は差し障りの内容だったが、今後、変なメールを送って来た時は転送し保存して、公安に対しての証拠を集めようとしていた。
そして、運よく公安から経過を聞きに電話が入った。
「最近はどうですか?大丈夫そうですか?」
「大丈夫じゃないです。まだ復縁を迫ってくるし・・・」私は以前の悪夢を公安に打ち明けられなかった。男性だったこともあるし、証拠は?と言われたときに、携帯で撮られた写真が頭を過り、見られたくないほうが優先した。
「そうですか、こちらもそんなに以前のように尾行はできないのでね、しっかりと自分の身は自分で守るよう心がけてください。もし、どうしてもとおっしゃるなら、強制的に取り調べることはできますが・・・。」
「取り調べじゃなくて、逮捕ではないのですか?」私は、問いただす。
「刑法上の理由で、捜査機関と裁判官の発する逮捕状がないと逮捕できないのです。特別として現行犯は逮捕状なしに誰でも逮捕できるのですが・・・。」
「証拠を捜査機関に提出すれば、裁判官が逮捕状を出してくれて引致できるのですか?」
「そうですね、ただストーカー法規制の場合は決定的な証拠や、現行犯、執拗な嫌がらせや中傷が主な逮捕の理由になります。」
「言葉だけでは無理ですか・・・。」
「ええ・・・何かありましたか?」
「い、いえ・・・そうですか。」私は、やはり言いだせなかった。淳介に対しての同情ではなく、ただ自分自身を守りたかった。
卑怯で汚い自分に嫌気が差し始めていた。
一方で淳介は毎日、自分の道を笑顔で進み、どんなことにも屈することなく過去には振り返らず、前をいつも見ていた。
そんな淳介を毎日見ていると、私はなぜ淳介と別れたのか、私たちはなぜお互いにここまで苦しめ合わなければいけないのか・・・。
淳介の度重なる浮気が原因で別れた私だったが、いま現実はどうだろう・・・。みるきーに内緒で淳介に2度も抱かれた。私は、淳介の浮気を責めることができるのだろうか。
私の頭の中で淳介とみるきーが天秤にかけられていた。何度も、何度も・・・淳介はその天秤から落ちそうになるけれど、ギリギリのところで這い上がり耐えていた。
反対にみるきーはいつも、安定していてバランスを崩しそうになかった。
私は、淳介に抱かれ、愛情を注いでもらえることで、過去の度重なる浮気を許していたのかもしれない。心ではみるきーを慕い、必要としているけれど、身体や頭の片隅にいつも淳介がいる。
淳介の直向きな姿が私の心も身体も大きく動揺させていた。私は、しばらく悩んだ・・・このままではいけないと思っていた矢先、仕事で書類を届けに行った帰りに淳介から携帯にメールの着信があった。
「○○シティホテルにいる。みるくがそんなにこの写真をデータフォルダから削除しろっていうなら削除してやってもいい。Eさんに聞いたが、今から少し時間があるんだろ?とりあえず来いよ。」
私は、写真を削除してもらえるならと思い○○シティホテルに向かった。
最近は毎日顔を合わせていたせいか淳介に対し、なんの不信感も抱かなかった。